女の戦い⑤
「三人とも私と風呂に入ることなんてどうだっていいだろう。とりあえず喧嘩をやめろ」
ロウマが口を挟んだ途端、三人が一斉に振り向いた。
「師匠、何を言っているのですか!師匠と風呂に入るというこんなおいしい状況……いや、なんでもありません。弟子が師匠の世話をするのは当然ではありませんか」
力説しているが、シャリ―の口から涎が垂れているのをロウマは見逃していなかった。
今度はシャリ―を押しのけて、アリスが前に出た。
「ロウマ様、使用人が主人を気遣うのは当たり前のことです。私はあなたを心配しているのです」
「そうか。ありがとう、アリス」
「いえいえ。そんなことよりロウマ様、また私を抱いてください。あの時のように激しくお願いします」
アリスの頬は熟れたりんごのように染まっていた。
嫌な予感がしたのでロウマはナナーの顔に、ちらりと目を向けた。案の定の光景がそこにあった。ナナーは震えながらロウマをにらみつけていた。
「うすうす勘付いていたけど、やっぱりただの使用人じゃなかったわね。まさかそんな関係まであったなんてね……」
「ナナー、長いが話せば分かってくれるはずだ」
「はっきり言いなさいよ。抱きたいから抱いたのでしょう。違う?」
当たっていた。確かにあの時は、本能が動くままにアリスを抱いた。言い逃れする術はどこにもなかった。
「すまん……」
「謝っても許さないから」
どうやら拗ねてしまったみたいである。その瞬間、ロウマはチャンスだと思った。この一瞬は手の力が緩んでいるはずだ。この隙を狙って脱出しよう。
「また逃げるつもり?」
ナナーがさっきより鋭い目付きでにらみつけた。また気付かれた。どうして、気付かれるのだろうか、とロウマは疑問に思った。彼女はまさか、特殊能力者ではないだろうかとロウマは身震いした。
「湯船につかるとさっき言ったわよね。約束は守ってもらうわよ」
「また逃げる素振りを見せたらどうなるんだ?」
「三度目はそっちの二人に協力してもらおうかしら?ねえアリス、シャリ―」
「そうね。ロウマ様も往生際が悪いみたいだから、ここは休戦して取り押さえたほうがよさそうね」
「今回の師匠は女々しいです。ここは男らしく大人しく湯船に入ってもらいます」
どうやら自分に選択肢は無いようだった。ロウマは観念することにした。