女の戦い④
アリスとシャリーはロウマに近寄ると、わざとらしく嘆いた。
「聞いてください、師匠。私が師匠とお風呂であんな事や、こんな事をして楽しもうと……いえ、間違えました。師匠の入浴の手伝いをしようと思っていたところ、この二人組が私をつかまえて、縄で縛った挙句の果てに物置に閉じ込めたのですよ!」
「ロウマ様、聞いてください。私とナナーは、やましいことを企んでいるその女を退治したのですけど、それが終わった途端、今度はナナーが私を縄で縛って一人でどこかに行ってしまったのです」
胡散臭い話だが、とりあえずナナーに尋ねてみることにした。
「本当か、ナナー?」
「本当よ」
「なんだって?どうしてそんな事をしたんだ?」
「二人きりで話がしたかったからよ」
「だけど、シャリーはともかくアリスまで縛る必要はなかっただろう」
「師匠、なんで私はいいのですか?」
しかし、ロウマはシャリーの顔すら見ようとしなかった。
「ロウマ様の言う通りです。ナナー、なんであんな事をしたの?」
「アリス、あなたも同じ事を考えていたのじゃないの?」
突っ込まれた瞬間アリスは一歩後ずさった。顔に冷や汗をかいているところから、どうやら図星だったようだ。
場に気まずい空気が流れた。
早くここから逃げた方がいいかもしれなかった。危険を悟ったロウマは立ち上がったが、右手をナナーにつかまれた。
「ロウマ、湯船にもつからないで帰ると体が冷えるわよ。あんな二人は放っておいて、一緒に湯船につかりましょう」
「あんな二人」と言われたアリスとシャリーの中で、何かが音を立てて爆ぜた。
「言ってくれるわね、ナナー。どうやら、あなたとの同盟もここまでね。これからはロウマ様をめぐって、熾烈な争いを始めることになりそうね」
「あんた達二人は、このシャリー=ハルバートンを完全に怒らせたみたいだから、覚悟はできているでしょうね」
「どこからでもかかって来なさい。ロウマは絶対に渡さないからね」
風呂から出たいどころか、このまま裸で国に帰りたくなった。こうなったら強行突破して逃げるまでだった。ロウマは急いで逃げようとした。
『逃げるな』
「はい……」
三人からの冷たい一言だった。委縮してしまい、ロウマは逃げるのを諦めた。