客人④
「セイウン、エレンと結婚したらしいな。さっきセングン殿から聞いた」
「ええ、十日前ですけど」
「死んだクリスト殿もミリアン殿も、喜んでおられるだろう」
クリストはセイウンの父の名。ミリアンは母の名だった。母の名は、残されていた大きな肖像画に記載されていたので知った。
「ところでお前達、先ほど窓から見ていたが、相変わらず痴話げんかをしていたな」
「見ていたのですか、院長……」
エレンが頬を赤く染めていた。
あきれた顔をしているゴートだったが、やがてにこりと笑った。
「まあ、それがあってこそ、お前達かな。本当に仲がいいものだ。昔からどうしてそんなに気が合うのだろうか不思議に思っていたが、これも運命というやつかな」
「だったらいいですね」
「本当にそっくりだ。お前達は」
「誰にですか、院長?」
エレンが尋ねた。
「クリスト殿とミリアン殿だよ。さっきのスカートめくりなんて、まさに同じだった」
「つまり、俺の父さんも母さんにやっていたのですか?」
「その通りだ。もう分かっているだろうが、クリスト殿はこの城を拠点に反乱を行った。彼のもとには、様々な人が集まった。兵士、医者、料理人……数えたらきりがないほどの人材だった。当然女性も来た。クリスト殿は性別を問わず、仲間にしていた」
「優しかったのですね、お義父様は」
「だが、難点がある。クリスト殿は常日頃、悪いくせがあった」
「それがスカートめくりですか?」
笑いをこらえながらセングンが尋ねた。時折、セイウンに目を移しながら、血は争えないなと訴えていた。
「困ったことに、毎日十回はやらないと気が済まないみたいで、場内にはよく悲鳴がこだましたものだ」
「よくそれで人が離れませんね……」
「お前の言う通りだ、エレン。しかし、誰一人離れなかった。それどころか、ますます集まった。そこにはクリスト殿が放つ魅力と愛嬌があったからだろう。だから、女達もクリスト殿のことを悪く言わなかった」
信じられなかった。そんなことばかりしていれば、変態の烙印を押されても不思議ではないはずだ。セイウンは父がうらやましかった。