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不審な傷口②

「そろそろ包帯……」


 ロビンズが、おそるおそるハシュクに向かって進言した。


「うん?そうだったな。飽きたことだし、包帯を巻くとするか。おやセイウン、どうしたんだ?寝てないで、起きたまえ」


「先生、気絶しているんですよ」


 治療が終わった後、医務室にはセイウンとエレンの二人だけになった。エレンに皮をむいてもらったりんごをかじりながら、セイウンは悪態をついていた。


「ハシュクの野郎、人をなんだと思っているんだ!」


「もういいかげん許してあげたら?怒っていたら、傷口が開くわよ」


「……分かったよ。しかし、本当に腹が立つ。エレンの胸を大きくする薬を作ってもらう協定を結んでなかったら、ただではすまさなかったぞ!」


 自分が反乱よりも大切にしている野望を口にした瞬間だった。


 突然、頭をつかまれた。


 セイウンはつかんだのが横にいるエレンだと、すぐに気付いた。


「学習能力を身に付けろ」


 冷たい一言だった。


 エレンが医務室を出て行く時には、セイウンはベッドで横になって安らかに眠っていた。



     ***


 パクトさんに要塞を作る計画は順調だった。責任者はセングンだが、工事の監督者にはヴィドーが任命された。彼は残党の村から男達を引っ張って来て、工事をさせていた。残党の村の連中は、少しずつだが城に移住してきた。


 しかしこの城は戦場になりかねないので、女子供を住まわせるには危険だった。だからこそ、避難させるための要塞が必要だった。要塞が完成すれば、そこに住まわせればよい。せっかくだから、子供達の遊び場や学校でも作ってやるかとセングンは思案していた。


 地図とにらみ合っていると、突然ハシュクが入って来た。


「ノックぐらいしたらどうだ」


「固いな、セングン。セイウンの治療は終わったぞ」


「どうだった?」


「命に別状無し。右肩を負傷しただけだ。傷もそんなに深くない。ただ……」


「どうした?」


「気になることがあった。ちょっといいかな」


「ああ」


 頷いたセングンは、机上に広げている地図や設計図を引き出しにしまった。

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