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苦しき日々⑧

 しかし政事の実権は、すっかり貴族達の手に移っていた。ブランカは昇進して右宰相補佐になっていた。補佐といっても、右宰相と権力は変わらないのでブランカがロウマの後釜あとがまに収まったようなものである。


「大丈夫ですか?」


 副官が深刻な表情をしているシャニスを見かねてか、声をかけてきた。


「どうした?」


「お顔の色が優れませんので」


「僕の顔色は、元々こんなのだよ。気分が悪いわけじゃない」


「右宰相のことが気になっているのですか?」


 どうやら心を見透みすかされているみたいだった。さすがに二年も付き合いがあると、考えていることまで読まれてしまうようだ。シャニスは、ぼりぼりと頭をかいた。かくたびに頭のふけが、ほこりのように落ちてきた。


 副官が眉をひそめた。


「右宰相は無事かな?」


「分かりません。我々騎士は、ただ無事なのを祈るだけです」


「祈るのは誰だってできるさ……行くぞ」


 シャニスは立ち上がると、乗馬して辺りを見渡した。


 自分が今いる場所がどこなのか見当もつかなかった。ただ闇雲に走ったのだから、無理もない話である。シャニスはこの時になって、自分がとんでもない調練をしていたことに気付いた。


「ここはどこだ?」


「首都のダラストから東に走った場所です。かつてジュリアス様が鎮圧した反乱軍の城に近い場所です」


「そんなに走ったのか?」


 恥ずかしい話だった。場所もしっかりと把握せずに調練に出るなんて、指揮官として失格だった。ロウマが聞いたら、叱責しっせきしていただろう。


 この近くで反乱軍が活動していたのは、もう十七年も前の話である。反乱軍の頭領は、クリスト=フォスターという男だった。かなり手強かったらしく、レストリウス王国も鎮圧に相当手を焼いた。おかげで、何人もの有能な騎士が命を落とした。一時は、レストリウス王国も滅亡の危機にさらされたほどだった。


 だが、ロウマの父のジュリアスが総指揮を執った途端、形勢が逆転していき、最後は拠点の城を陥落させて勝利に終わった。


 シャニスは、ふと思い出した。最近、城の付近に人が住み始めた。誰が住んでいるのか知らないが、一人や十人ではないらしく何百もいるらしい。


 なんだろうか。嫌な胸騒ぎを覚えてならない。

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