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苦しき日々③

「ナナー、信頼は自分から得ようとするものじゃないな」


 ロウマは、ぽつりと呟いた。


「えっ?」


「信頼は自然に身に付いていくものかもしれない。私はシャニスやキール、ゴルドーといった親友から、かけがえのない信頼をすでに得ていた」


「…………」


「だが、私はせっかく得た信頼が不満だった。もっと欲しい。さらなる信頼が欲しいと願っていた」


 あまりにも欲を張りすぎた。結果、せっかく手に入れた信頼にひびが入り、壊れてしまった。


「今の自分の姿は、信頼を欲しすぎた故の末路だ。かつてお前と幸せな家庭を築きたいと言ったが、考えてみれば青臭い夢物語だったな」


 ロウマは深い溜息をついた。


 吐いた息は雪のように白かった。


「その夢をもう一度頑張ってみる気はない?」


 唐突にナナーが尋ねた。


「なんだと?」


「夢に向かって、もう一度頑張ってみるのよ。そのためには、まずレストリウス王国に帰りましょう」


 ロウマは息を呑んだ。帰国したところで自分に待っているのは、おそらく死しかないだろう。仮に許されたとしても、国に自分の生きる場所は無い。


「あの国には、私の居場所なんて無い。キール達との関係も修復はできない」


「だから、一からやり直すの。もちろん万事うまくいくなんて思ってないわ。きっとあなたを許さないと思う人もいるかもしれないけど、あなたのことを待っている人だっているのも事実よ」


「そんなのどこに……」


「私はあなたが行方をくらました後、あなたについて調べたの。孤児院に寄付金を出していたそうね」


 そんなのも確かにあった。少し前だが、レストリウス王国の首都ダラストには一軒だけ小さな孤児院が存在していた。孤児院には院長と孤児を合わせると二十人近くが暮らしていた。


 ロウマが孤児院の存在に気付いたのは、右宰相就任直後だった。


 当時、孤児院は経営難に苦しんでいた。そこに目をつけた商人や貴族が孤児院の立ち退きを要求していた。

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