客人②
「仕方がないわね」
困ったように笑いながら、エレンはセイウンが指定した場所まで歩いた。
「この辺でいいの?」
「うん。そこに立っていてくれないか。すぐに終わるから」
「一体、何をしようと……」
その瞬間、エレンの体に何かが当たった。
風。間違いなく風だった。
エレンは気付かされた。これがセイウンの持っている特殊能力なのだと。
だが、同時にもう一つ気付いた。
エレンのスカートはめくれ上がっており、中の白い下着が丸見えになっていた。呆然としているエレンをよそに、セイウンは親指を立てて合図を送っていた。
大成功と。
気が付くと、セイウンは地面に倒れていた。自分に何が起こったのかセイウン自身、見当がつかなかった。
顔が痛むところから、何か堅い物が当たったのは間違いない。横に目を向けると、拳ほどもある石が転がっていた。自分に当たったのは、間違いなくこれだろう。
「こんなこともあろうかと、持っていてよかった」
すでにセイウンの側に立っているエレンが、にやりと笑った。
「エレン……いつの間にそんな物を」
「あんたが、向こうに行くように促した際に、とっさに拾ったのよ。スケベなことをしたら、こらしめるためにね。まさか顔面に当たるとは思わなかったけどね」
「馬鹿野郎!俺がしたのはスケベな事ではない。純朴な青少年のやる正直な行為だ」
「あんたのどこが純朴な青少年よ!卑猥なケダモノにしか見えないわよ!」
あとは説明する必要もなく、エレンがセイウンをこらしめた。
セイウンは半死半生で地面に転がされた。
「本当にあんたって奴は、昔はこんなスケベじゃなく、かわいい奴だったのに」
あきれたエレンは溜息をついた。
「おっ、そこにいたか二人とも」
セングンだった。地面に倒れていたセイウンは、助けが来たと思い起き上がった。