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殺戮王⑧

 やはりロウマの傷は深かった。屋敷に運んだ時点で、かなりの出血だったのでレイラ曰く「今夜が勝負だそうだ」。


 居間にはシャリーとレイラを除くハルバートン家の姉妹だけだった。ロバートとピルトンは襲撃者の死体の後始末をしていた。


「ライナ姉さん、これからどうしますか?」


 ディナが深刻な表情で尋ねた。


「…………」


「決められないのですか?姉さんらしくないですね」


「違います。年長者は私ですけど、この屋敷の主はロバートです。全ての決定権は、あの子にあります。私達はあの子の意思に従うまでです」


「そうですね。それがいいかもしれません」


 居間は水を打ったように、静かになった。しかし、ロバートは自分達の予想通りの決断を下すかもしれない。確証は無いが、四人は同じことを考えていた。


 ドアを開ける音がしたので視線を移すとピルトンだった。ロバートはなぜか一緒ではなかった。イメールが尋ねると、調べものをしに書庫に向かったとのことだった。


 集まっている全員が、ただならぬ気を放っているので、ピルトンは委縮いしゅくしてしまった。


「お茶にしましょう」


「ピルトン、あなたに尋ねます。私達はこの後、ロバートと重要な話し合いをすることになります。その結果に対して、あなたはどうしますか?」


「私は使用人です。ロバート様の決断ならば、それに従います。決して間違った生き方とは思っていません」


「分かりました。美味しいお茶をれてください」


「はい」


 ピルトンが立ち去った後、入れ違いにアリスとシャリー、レイラの三人が入って来た。


 ナナーはいなかった。


「どうでした、レイラ?」


 ライナが尋ねた。


「もう大丈夫です。出血も収まったし、脈も正常に戻りました。今はただ寝てもらうだけです。でも……」


 レイラの顔が微かに曇った。何か考えているような仕草である。


「どうかしたの?」


 不思議に思ったディナが尋ねた。


「あの人の傷ですけど、尋常じゃない回復力なのです。私が治療している最中にもうふさがり始めていたのです」


 どうやら自分達が考えている以上にロウマという男は複雑な存在らしい。ライナは深い溜息をついた。ライナはナナーがいない事に気付いたので、レイラに所在を尋ねた。


「ロウマさんの側にいると意地を張るので、部屋に置いてきました。まだ目覚めるはずないのに」


「仕方ないわね」


 ライナは、また溜息をついた。


「ねえ、私は師匠の側にいては駄目なの?」


 シャリーが頬をふくらませながら疑問を投げかけていた。


「どうして?」


 ライナが首をかしげた。


「姉さん、私は師匠と将来を約束した仲ですよ。その私が師匠の側にいるのは当然の事じゃないですか。痛いっ!」


 突然シャリーが悲鳴を上げたので、一同は目を丸くした。シャリーは左足を手でさすっていた。


「痛い、痛い……あんた、何するのよ!」


 シャリーが目を向けたのはアリスだった。


 向けられたアリスは、何の事か分からないという表情をしていた。その行為がシャリーの感情に火に油を注ぐ事になった。


「とぼけるのも大概にしなさいよ!あんたでしょう、私の足を踏みつけたのは!」


「何の話ですか?さっぱり分からないのですけど」


「とぼけんじゃないわよ。師匠の屋敷の使用人だからって調子こいてんじゃないわよ。殴って白状させてやるわ!」


 シャリーが拳を握ったのと同時に、ロバートが居間に入って来た。

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