殺戮王⑤
「こっちに死人が出なかっただけましだな」
ロバートが、ぽつりと呟いた。
だが、襲撃者は何者なのなのだろうか。確かめる必要があった。転がっている死体にロバートは目を向けた。
「うん?」
「どうしたの、ロバート?」
三女のイメールが声をかけた。
けれども、ロバートはイメールを無視すると周囲の死体を一体ずつ確かめていた。
「違う……」
「何が違うの、ロバート?」
次女のディナも声をかけた。
「こいつらの顔には見覚えが無い。こいつらは屋敷の周囲をうろついていた連中じゃないぞ」
「あなたが覚えていないだけじゃないの?」
「違うよ、ディナ姉さん。俺が見たのは、顔の彫りが浅かったし、目も黒かった。こいつらの顔は彫りが深いし、目も青い。この土地の人間だ」
「なんですって?」
ロバートの言う通りだった。どの顔もこの土地の人々が持っている特徴だった。
嫌な汗がロバートの全身の毛穴から噴出した。
「ロウマ、ロウマ!いるか?いるなら、返事をしろ!」
屋敷に向かって叫んでみたが、応答は返って来なかった。
ロバート達は急いで屋敷に駆け戻った。
居間を見渡したが、誰もいなかった。ロウマと一緒にいたはずのシャリーの姿も無い。
「姉貴、ロウマ!どこにいる?返事をしろ!」
複数の足音が聞こえてきた。
ロウマだろうかと思ったが、一歩間違えれば敵かもしれない。油断ができないので、全員武器を身構えた。
勢いよくドアが開けられた。
入って来たのはナナーとアリス、シャリーだった。
「何よ、ロバート?もう片付いたの?」
三人が無事だったので七人はとりあえず胸をなでおろした。しかし、ロウマがいないのに変わりがなかった。
「姉貴、ロウマはどこだ?」
「師匠なら、屋敷の中にいるはずじゃ……」
「何をやってたんだ、姉貴!ロウマを守るのじゃなかったのか?」
シャリーの言動があまりにも無責任に感じたので、ロバートは思わず激昂した。一度怒鳴っても、怒りはなかなか収まらなかった。
「姉貴、あんたって奴は……」
「私はただ……師匠から二人を守るように命じられていたから、二人の部屋にいたのよ。師匠命令だから逆らえなかったのよ」
普段怒るところを見せない弟であるため、気が強いシャリーもさすがにひるんだ。