第十三章 殺戮王①
意外な人物の登場にロウマは、とまどいを隠せなかった。この襲撃に彼が加担していたとは、考えもしなかった。
「片腕を失ったのですね、ロウマ殿」
「かつてお前は私の人相を見た際に五体のうちのどれかを失うと言っていたが、本当になってしまったな」
「そんなことも言いましたね」
「今回の襲撃は、全てお前の仕業か?」
「そうです」
「誰かに命じられてやっているのか?それとも自分の意思か?」
「ご想像にお任せします」
白い歯を見せながら、ハイドンはにやりと笑った。気味の悪い笑みだった。
レストリウス王国で会っていたころとは違った笑みである。おそらく、隠れていた本性が出始めたのだろう。
残忍非道。今のハイドンに似合う言葉は、間違いなくこれだろう。
ロウマはリオン=ルワを鞘から抜いた。白刃が美しく光り輝いていた。剣がロウマを主として認めている証拠だった。
「来い、ハイドン」
「あらかじめ言っておきますが、私は一対一なんて考えは毛頭ありません。あなたを殺すためなら、何人でも何十人でも連れて来ますよ」
「随分と買いかぶられたものだ。お礼が必要か?」
「お礼はあなたの命ですよ。けれども、あなたは変わりましたね。ここに来て何かあったのですか?今のあなたの顔には、剣難の相が出ていません」
「そうか。ならば、死ぬ事は無いだろう。逆に死ぬのはお前だ」
「言ってくれますね」
ハイドンは笑い出した。だが、その笑いは随分と乾いた笑いだった。
ロウマは嫌な感じがした。もしかしたら、自分は触れてはならないものに触れたのかもしれない。とりあえず、一歩だけ後ずさった。
「……だったら、もう一度剣難の相を出させてやりますよ」
どすの利いた声だった。どうやら完全に本性をむき出しにしたみたいである。
ハイドンも佩いている剣を抜いた。ロウマの剣とは違い長剣だった。さらに、彼が口笛を吹くと、隠れていた連中が姿を現した。
全員、剣や弓矢を持っていた。人数は二十人といったところだろう。
冷たい目をしていた。ロバート達が相手をしている連中とは一味違うみたいだ。