和解⑦
ちょっと卑屈になりすぎたようである。苦笑したロウマは自分の頭をかきむしった。
ふと、視線を感じた。誰か来ている。姿は見えないところから、どこかに隠れているのだろう。一人でないのは確かだ。
グレイスではない。彼はレストリウス王国に帰還したので、戻って来るはずがなかった。
「ロウマ殿、雲行きがよろしくないので中へお入りください」
いつの間にか、ピルトンが側にいた。
ロウマは頷くと、ナナーを伴って屋敷に戻った。
戻るとロバート達が集まっていた。どうやら何か重大なことが起きているようである。
ロウマは、ロバートと目で会話した。
ロバートは頷いた。予想は的中したらしい。
「ナナー、部屋に戻れ」
「どうかしたの、ロウマ?」
「いいから部屋で待機していろ。私はロバート達と話がある」
ナナーは場の空気がただ事でないことに気付いたらしく、素直に立ち去った。
「アリスはどうした、ロバート?」
「彼女も部屋に戻した。だから心配はいらないよ」
「そうか……もしかして見張られているのか?」
「まあな。しかも、かなりの人数だ」
「狙いは私のようだな」
「だろうな。誰か知らないが、お前を狙って来たのだろう。心当たりはあるか?」
「いくらでも」
「じゃあ、考えるだけでも無駄だな……ゴフっ!」
「師匠、安心してください。師匠には私がついてますので、大丈夫です。指一本触れさせませんよ」
シャリーがロバートの首筋に手刀をくらわせて割って入っていた。思い切りさっきの仕返しである。
ロバートは床にのびていた。
「シャリー、何をやっているんだ?」
事情が呑み込めないロウマは、頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。
「いえいえ、師匠は気にしないでください。この弟は先ほど粗相をしましたので、姉としてしっかりと、しつけをしているのです」
「なんだかよく分からないが、そういうことにしておくよ」
「はい、そうしてください」
ロウマが納得したのと同時に、ロバートが起き上がった。
「姉貴、冗談じゃなく本気で守ってくれよ。今回は笑っていられる状況ではないのだから」
「うるさいわね、ロバート。弟のくせに逆らうのじゃないわよ。見てなさい。師匠は私が必ず守る」
拳を握って自信満々のシャリーに対して、一同は不安の視線を送っていた。こんなシャリーは調子に乗るため、必ず失敗する。ロウマも一月以上いるので、そのことをすでに熟知していた。