和解⑤
外に出たロウマとナナーは、ある場所に向かった。
ロウマが以前、ライナと茶会をした場所だった。設置されている椅子に座ったロウマは一息ついた。
「大丈夫、ロウマ?」
「何がだ?」
「きつそうな顔をしていたから」
「大丈夫だ。座ると一息つくのが昔からの癖だ」
「変な癖ね」
「そうだな」
二人はお互い笑い合った。レストリウス王国にいたころは、まったく無かったことだった。
座ってただ時間が過ぎるのを待つのみだった。これも全てロバートと決闘をしたおかげだろう。
あの決闘でロウマの左腕は斬り落とされた。不思議と痛みは、あまり無かった。腕はハルバートン家の屋敷にある大木の下に埋めた。一種の供養というものである。
腕の供養なんて妙であるが、とにかくそうせずにはおれなかった。
「ロウマ、少し変わったわね」
「変わった?」
「うん。優しくなった。口数が少ないのは変わりないけど、優しさが多くなった」
「口数が少なくてすまない」
ナナーは、しまったと思ったのか自分の口を押えていた。
その姿を見たロウマは、軽く笑った。
「気にするな。私はこれぐらいが、ちょうどいいと自分でも思っている」
「そう?」
「ああ、本当だ」
前は好かれたいという欲のため、無理にしゃべっていた。それがナナーにとって苦痛だったのかもしれない。
「ロウマ、その……」
急にナナーがロウマの服の袖を引っ張った。というより、強くつかんでいる。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「実はあなたに会ったら言おうと思っていたの」
「何をだ?」
「今までの事……本当にごめんなさい」
ナナーはロウマに抱きついてむせび泣き始めた。