和解③
「シャリー様、私はこれでもハルバートン家に仕えて二十年になります。自慢じゃないですが、家事全般でその辺の女に負けるとは思っていません」
「黙りなさい、ピルトン!使用人のくせに主人に口答えをする気なの?とにかくあんたは、とろいの!」
「すまないな、ピルトン。姉貴は悪気があって罵倒しているわけじゃないから、気を悪くしないでくれ。ただの癇癪持ちなんだよ」
「いえいえ、ロバート様。シャリー様に罵倒されるのは、もう慣れました」
シャリーを除く全員が大笑いだった。一人シャリーだけが、その光景を憎々しげに見ていた。
「私はまだ負けるつもりはないわ。見てなさい。家事なんかあっという間に上達してやるから」
「本当に分かってないようだね、姉貴は。かわいそうだけど、とどめの一撃でもさすか」
「何よ、とどめって?」
「ピルトン、悪いけど大きな鏡を持って来てくれないかな?」
頷いたピルトンは、近くの部屋から全身が映るほどの鏡を持って来た。
「こんなもので何が分かるのよ?」
「姉貴、とりあえず鏡の前に立ってくれないか?」
ロバートの意図は読めなかったが、シャリーは言われた通りに鏡の前に立ってみせた。
ついでにポーズも決めてみた。
「さすが私だわ。自分でもうっとりするぐらいの容姿ね。師匠も私の美貌の前には秒殺ね」
「ないない。今までそんなこと無かったじゃない」
「うるさいわね、ロバート!」
「姉貴、本当に気付いてないのだね。すまないけど、他の姉さん達も鏡の前に立ってくれないか」
ロバートの指示通りにライナ、ディナ、イメール、ルミネと続いた。
レイラも部屋に籠っているのをロバートが無理やり引きずり出して、鏡の前に立たせた。
「姉貴、今ので気付いたか?」
「気付くか!意味不明な実験をしているようにしか見えないわよ!なんでこれが、とどめの一撃なのよ」
「これだけ現実を突き付けられても分からないとは、愚かな姉貴だ。ならば言おう。それが本人のためだからな」
いつも思っているが、いまいましい弟である。シャリーは拳を握りしめた。
「姉貴はな……胸が小さいのだよ!」