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語り馬⑫

「セイウン、お前って奴は本当に……」


「セングン……」


 二人はお互い純粋無垢な目で見つめ合った。まるで離れ離れになった恋人同士が再会したような状況に似ていた。


 エレン達は、気持ち悪いと軽蔑の眼差まなざしで、その様子を眺めていた。


「本当に大馬鹿野郎だ!」


 突如怒りの形相に変わったセングンが、セイウンの顔面に鉄拳をくらわせた。


 セイウンは、あっという間に床に転がってしまった。


「な、何をするんだ、セングン?」


「この野郎。話を聞いたのが二週間前だって?だったら、なぜそれを手紙に書いて寄こさなかった?僕はお前が残党の村に行って間もないころから、要塞づくりのことで悩んでいたのだぞ」


「でも……お前だって手紙とか寄こさなかったじゃないか」


「黙りやがれ!いいか、これからは重大なことがあったらすぐに僕に知らせろ。次に同じことをしたら、ただではすまさないぞ」


「ごめん……本当に悪かった。許して」


 何度も頭を下げているセイウンだった。


 まだ怒りが収まらないセングンだったが、ふと何かを思い出したようであり、表情を元に戻した。


「バルザック、お前はレストリウス王国と戦いたいようだな」


「ああ」


「僕はお前の意見には反対だが、頭領のセイウンの許可が下りている以上やむを得ない。好きに暴れてこい。僕も仲間だからやれるところまで協力する」


「そうか……分かった。ところで、さっきはすまなかった。俺が言い過ぎた。謝らせてくれ」


 バルザックは謝罪して頭を下げた。


 それを見たセングンも同じことをした。


 これでまた一致団結できたと一同は、ほっとした。


「エレン、お前の横のちびっ子を今日は厩舎きゅうしゃに放り込め。僕に重要な報告をしなかった罰だ」


 鼻息を荒くしながらセングンは、セイウンを指差した。


 ちびっ子とは自分のことか、とセイウンはセングンをにらみつけた。だが、すぐににらみ返されたので、エレンの後ろに引っ込んだ。


「あの……セイウンを厩舎に入れてしまうと、私が困るのだけど。私が暗闇を怖がっているのを知っているでしょう」


「一緒に入ればいいだろう。僕は仕事があるから、これにて失礼」


 セングンは行ってしまった。


 その夜、セイウンとエレンは厩舎で一夜を明かした。近くには、語り馬のジェトリクスがいた。


 ジェトリクスは食事の時に、エレンにほおずりをしながらえさをねだっていた。その光景をセイウンは、ただうらやましそうに眺めるしかなかった。


 目には殺意の光がともっていた。


 ジェトリクスはセイウンに向けて、にやりと笑った。

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