語り馬⑨
「同盟という手があるぞ、バルザック」
「馬鹿な事を言うな。これから反乱を起こすのに、いきなり同盟を結ぶのか?セングン、お前には本当に失望したぞ!」
「戦だけが全てだと思うな」
「落ち着きなよ、セングン」
エレンがたしなめたが、セングンとバルザックの怒りが収まる気配は無かった。下手をすればお互い、佩いている剣を抜きかねなかった。
「待ちな、二人とも。話は聞かせてもらったぜ」
セイウンがドアを蹴破って颯爽と登場した。一瞬にして場が白けてしまった。
「どうしたの、みんな?俺が何か間違ったことをしたかな?」
「何なの、そのセリフは?」
エレンだった。
「ださくて見られないぜ。いつの時代の主人公の登場シーンだよ」
デュマは床に唾を吐いていた。
「モダンなやり方もできないなんて、お前は情報弱者だな」
セングンがとどめの一撃をさした。
「お前達、言いたい放題言いやがって……どこかに行きたくなったよ」
『じゃあ、行けよ』
全員に言われると、セイウンは逆に残りたくなった。どうして自分がこんな目に遭うのか、さっぱり理解できなかった。
「ロビンズから聞いたけど、けんかの原因は少々複雑だな。二人とも俺に詳しく話してくれないか」
頼りなさそうだったが、セングンは現時点でやるべきことを話した。
バルザックはセイウンを頼りにしているのか、自分の意見を熱烈に述べていた。かなり芝居がかった部分もあったが、セイウンは黙って聞いていた。
説明が終わると、セイウンは口を開いた。
「なるほど、よく分かったぜ。バルザック、お前の意見を採用だ」
バルザックは、セングンに向けてにやりと笑った。見たかと言わんばかりの目付きだった。
一方セングンは激しい怒りを覚えたのか反論しようとしたが、セイウンがそれより早く動いた。
「セングンの意見も採用」
『なんだって?』
一同は、間の抜けた声を上げた。
「セイウン殿、どういうことですか?」
「そうだ、セイウン。いくらなんでも、どっちも採用なんておかしいだろう。どっちか一つにしろ」
二人とも明らかに、不満気な態度だったがセイウンは面白そうに、にやにやしているだけだった。