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語り馬⑧

「大変です、セイウンさん!」


「どうした、ロビンズ?」


「セングンさんとバルザックさんが、すごい剣幕で言い争いをしています。みんなが止めに入っているのですけど、二人とも引き下がる気配がありません」


「……分かった。すぐ行く」


「ほらな。言った通りだろう」


 すぐ側でジェトリクスが、ぽつりと呟いた。



     ***



 室内は水を打ったように、静まり返っていた。集まっているのはバルザックにセングン、エレン、デュマ、ガストーだった。


 バルザックとセングンは、さっきからにらみ合ったままである。やはり意見が合わなかった。


 バルザックは早く戦を仕かけるつもりらしいが、セングンはそれを許さず要塞を作ることに専念しようとしていた。


 デュマはバルザックの意見によっていた。


やっぱりか、とセングンは心中でうなった。


 彼はバルザックとクルアン王国での同僚だし、待つというタイプではない。必ずバルザックの意見に賛成するはずである。ガストーはバルザックの副官だが慎重な性格なので、バルザックの意見に賛成しなかった。だからといって、セングンの意見にも賛成ではない。


 エレンはセングンの意見だった。


「ロウマ=アルバートの側近は決して弱くない。お前がその身で味わったはずだ、バルザック」


「確かにお前の言う通りだ、セングン。あいつらは、ただ者ではない。しかし、もう負けるつもりはない」


「意気込みだけよくても、なんにもならない。お前は大した勝算も無いのに、挑もうとしている。それが分からないのか?」


「ろくに戦も知らないくせに、口を出しやがって」


「言わせてもらうが、知らなくても分かる。世の中はお前が考えているほど、甘いものじゃない。お前はどうしてレストリウス王国と戦うことにこだわる?僕とお前の目標は、悪政を行っているクルアン王国を潰すことだ。レストリウス王国を潰す目標は、セイウンの目標だぞ。それを忘れるな」


 バルザックは言葉に詰まった。


 とりあえず、うるさい口は塞いだ。


 セングンは一息ついた。


 しかし、考えてみた。思い返せば、レストリウス王国とはどうして対立しようとしているのだろうか。


 レストリウス王国は悪政を行っているわけではなかった。現在は少々政事が乱れているようだが、それでも悪政の領域に至っているわけではない。


 また、国王のラジム二世も名君という評判である。うまくいけば、同盟を結んで一緒にクルアン王国に当たることができるかもしれなかった。


 結局対立する理由は、かつての反乱の続きのためではないのか。もしくはセイウンがただ、ロウマを倒したいという理由だから。


 しかし、そのロウマも最近いなくなったと耳にした。もはや自分達がレストリウス王国と戦う意味は無いのかもしれない。セングンの心中を多くの考えが支配した。

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