■Story3■
真美が椅子に腰をかけた時だった。クラス中の視線が一斉に真美に向けられる。
「……?」
ほとんどのクラスメイトが困惑した顔でこちらを見つめている。
何かやっただろうか自分は。
全く状況の掴めない中で居辛くなった真美が席を立とうとすると、一人の女子が涙目で教室を出ようとする真美を止める。
「!?」
「……早まらないで、鈴澤さん!生きてれば人生必ずィィ事ぁるから!!」
ハ?
ちょっと待って。
話が掴めないんですけど。
状況が理解出来ない真美を余所にもう一人の女子が続ける。
「ネット心中なんてダメだょ!!」
………ネット心中…?
そんな事したっけ??
いくら暗い毎日を過ごしてても、さすがに自殺なんかをしようとした事は………
ガラッと教室のドアが空き、ズカズカと担任が入って来た。
単調な口調で中年半ばの担任は教卓の前に立つ。
「席に着きなさい」
尚も単調な口振りで担任は続けた。
「…えー……昨夜我が高校で、ネット心中により命を落した者が隣クラスから出てしまいました…」
隣クラス…
真美の隣からヒソヒソ声が漏れる。
「ちょっとぉ、鈴澤さんぢゃなぃぢゃん」
「だって引きこもっててネット心中だってぃぅから…」
「大体、鈴澤さん生きてんぢゃん。」
そんなに私って死にたそうに見えるのか。
そりゃネットは毎日やるけど。それは妄想を追いかけるだけのものであって。
案外こおいった方が苛めより惨めなモノなんだ…
自分が情けなく思えてきた真美は、今度こそ本当に席を立った。
「おい!鈴澤!どこへ行く!!」
担任が怒鳴るが真美にそんなのは関係なかった。
「…具合が悪いので……帰ります」
ピシャン
冷たくドアの音が乾いた空気の教室に響く。
「なぁんか鈴澤さんってマヂで暗ぃょね」
「実ゎ影であの子も自殺とか測ってんぢゃなぃ?」
「ま〜た明日から引きこもっちゃうんだろぉね〜」
真美なりの全速力で学校から抜けだし、ひたすら街中を走って自分なりに微かにショックだった気持ちを押し殺した。
私馬鹿にされる事や侮辱される事にはいつもの事だから慣れてるけど…
なんだか悔しい。
私が引きこもりだから?
ひたすらひたすら走る。
やがて走るのが辛くなってきたので真美は静かに立ち止まった。
同時に自分なりに頭の中でさっきの状況を納得してしまったらしい。
「まぁいいや。」
私は私。
ここにちゃんといるのだからそれでいい。
案外自分もポジティブ精神持ってるんだな、と自分なりに関心していると、悪趣味な鞄の中から少年漫画のアニメソングの着メロが流れた。
結構長く流れている所をみると、どうやら着信らしい。
ピッ
「…もしもし」