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いくらちゃんカワイイ!(嘘なう)

月華皇国は事実上、統制不能となり箍が弾けたように軍乱・民乱問わず蜂起が相継いだ。

大陸の食糧庫とも言うべき東方平野を治めるkoponは『君側の姦鶏を討つ』を掲げ、独立。

変態からの寄騎であるvavaaは混乱を機に流賊化、2万の変態兵と共に近辺を冦掠し、皇都膝下の諸都市でもスーヌピ率いる盗賊団が倡獗を極めた。


この状況の中でも皇国主力軍が軍の体裁を保てたのは一重にハクスイ@デコピンの統御能力に拠る所が大きい。

だがそれにも限界がある。


殊に兵糧の不足は深刻で、

供給源であるポカポカ平原がkoponに奪われた以上自足は急務だった。


ハクスイはいくらを呼びvavaaを攻め食を奪うように命じ、いくらは勇躍し軍を発した。

vavaaはヌルに軍を授け迎撃したが、いくらの暴風のような驍勇の前にヌルの首は一撃で飛んだ。

更にいくらは三度戦いその都度勝った。

意気喪失した変態軍は降伏を申し出、いくらも諾けた。

が、すぐに気が変わり夜半の内に変態兵を襲い追い立てて遂には15000の変態軍はみな伉殺されてしまった。

謀臣である一般ぴーぽーは必死に諌止したが、いくらが

「奴らを食わせれば我が兵が飢える。穀潰を養い部下に渇えを強いれと申すか」

と形相を変えたので黙らざるを得なかった。


いくらの部下に対する仁強は、時に他者に対する酷薄となり顕われたが是もその一例と言えるだろう。


ともあれ、この一戦により皇国にいくらありと勇名を馳たのは紛れもない事実だった。



いくら軍は更に東進し旧帝都付近サイタマに兵を動かした。


当然ハクスイ@デコピンからは幾度となく制止命令が届いたが、その都度無視した。


その辺りは旧くより殷賑を極めた要衡の地であり商人も多く食を得るに容易い。

もともといくらは補給の概念は薄く「食いたくば殺して奪え」と日々公言し憚らなかった。

しかし、皇軍組織が事実上半壊している以上自前で菱食を賄う必要があった。


参謀の一般ぴーぽーは古枯れた老人ながら世相への感性が敏で『世人を食わせる人間こそ今求められる英雄である』といくらに説き指針を定めた。

いくらは当初頼まれもせずにひょこひょこ訪い彼是と献策するこの老人を煩く思っていたが、その言が次々と当るのに驚き師父と仰ぎ敬するようになった。


「この界隈に勢を張るくさかべェなる男が居りますが」

「悪人か」

一般ぴーぽーはいくらに解説したが、いくらはまず人の善悪を問うのでやり辛かった。

「大悪人と言っても良いでしょうな」


くさかべェは『(いれずみ)のくさかべェ』の通り名で知れたサイタマ地方の名物男で、ある個人伝説を持っている。

若年の折り、人相見の「刑を受け王となる」との預言を彼自身深く信仰し、後に罪を得て黥刑に服した際「これで俺は王になれる」と吹聴し失笑をかったという。

罪人として土木に準じていたがポテト来襲のどさくさに紛れ叛乱を起こし、現在は旧都付近を支配下においている。

その勢威はなかなか大したもので「俺はくさかべェの息のかかった者だ」と言えばサイタマのならず者は誰しも震え上がった。

火の出るような激しい戦は出来なかったが、草莽や沼沢に潜み呼吸を量っては五月蝿為して群がるようなゲリラ戦を得意とした。


「彼を説いて降しましょう」

一般ぴーぽーは護衛として鋼の錬金術師を伴いサイタマに向かった。

正規の背景を持たない事に不安を持っていたくさかべェは二つ返事で諾けいくらの元に馳せ参じたが、いくらは木で鼻をくくったような態度で接し終始冷遇し続けた。

その功の大きさに関わらずいくらがくさかべェを表顕しなかった理由は美意識に依るもので、

(奴の戦い方は醜い。ドブネズミでさえああも卑しい様ではあるまい)

人一倍闘争を重んじるいくらが嫌悪を抱くのも無理からぬ程にくさかべェの戦術は陰湿だった。

この種の人間にありがちな事だがくさかべェは敵に対しては限りなく放怛だったが味方に対しては病的なまでに傷つきやすく、いくらの処遇を根に持った。

後に転向し、らっどに属して撹攬作戦を企てる端はこの性格的な相違に発している。


ともあれ、いくらはサイタマ地方を抑えることにより他の諸候から頭一つ抜きん出る形となった。

当然それを快く思わぬ人間も多数存在する。

一人はハクスイ@デコピンであり、更に深くいくらの台頭を憂いたのは帝都の延臣であるトマポその人であった…


トマポは日々恐懼し夜の目を見ることはない。

もしいくらが軍権を握るとなれば、過去のいきがかりから何くれと無く嫌がらせをしていた自分の首が危ういと思った(最もいくらは過去の錚いどころかトマポの存在自体を忘却していたが…)


窮したトマポは日和見に相談した。

今は身を慎んでいるとは言え、官泳術においては第一人者である。

「幸い、NORTHが大軍を擁して攻め寄せている彼をしていくらを殺さしめるが良かろう」

日和見はまるで料理の味付けを指示するような気軽さで諮差してのけた。



ポテト軍に降ったNORTHの立場は複雑だった。

その美貌によりいもくんは虜になり、爛熟したワインの如く熱く激しい夜に酔い痴れ朝野も稀な有り様となってしまったのだ。

ポテト古参のBやヌルは反発し突き上げるようになり軍の統率は乱れる一方だった。

いもくんは一計を案じNORTHに大軍を与えて皇国攻撃の総大将に任じた。

軍功により愛人の立場を強固にしてやろうと考えたのだ。


「しかしいくらが勝ったらどうなりましょうか」

「勝たせねば良い。きゃつはペ天使の副将に任ずればあとはいかようにも料理出来よう」


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