表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こがねの魚と銀の月  作者: 寄賀あける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/50

6  (ビルセゼルト)

 ビルセゼルトの提案にジゼェーラの瞳が輝いた。


「ただし、夜に出歩いてはいけないよ」

ビルセゼルトが念を押すのに、ジゼェーラは何度も(うなず)いて

「小鳥は夜には寝てしまう。フクロウたちはわたしを馬鹿にして相手にしない――(ナイ)(チン)(ゲール)は歌うのに忙しくって、わたしに気付かない。風は夜には別人みたいで恐ろしいし、光も夜には寝言だけ」

だから、夜に森へ行っても面白くない。部屋で温和(おとな)しく眠ると約束すると言う。


「ジゼェーラは小鳥や風と話すのが好きだと言ったけれど、人と話すのは好きじゃないのかな?」

「人とはあまり話したことがない。でも、校長と話すのは楽しい」


 ビルセゼルトが喜ぶようなことを口にするが、ジゼェーラに相手を喜ばせる意図はないようだ。勿論ビルセゼルトもそれは判っている。


「それでは、ジゼェーラの話し相手ができるような魔女を探してくるよ」

「ううん、欲しいわけではない。人とも話さなくてはだめ?」


「そうだね、少しずつでも人と話せるようにならないといけないね」

わたしたちは皆、人の中で生きていくようにできている。小鳥や風と話すのがいけない訳ではないが、それだけでは不足している。


「人と接することで、人は幸せになれるのだよ」

とビルセゼルトが言うと

「幸せって何?」

ジゼェーラが問う。


 いたって真面目だし、反抗の色も攻撃の色もない。答えるのが難しい質問に、ビルセゼルトの言葉が詰まる。


 何を幸せと感じるかは人によって違うと答えたら、この子は『ならば小鳥たちといるのが幸せ』ときっと思う。それを否定するわけにはいかない。だが、認めたくないし、認めてしまえば道を誤らせてしまう。


「幸せとは……生きていたいと思う原動力なのではないかとわたしは思う」


 ジゼェーラを見詰めながらビルセゼルトがそう答えると、ジゼェーラは真っ直ぐビルセゼルトを見たまま、どうも続きを待っているようだ。


「命ある限り生きていたいと願い、死を恐怖する。けれど時には絶望し、死を願うこともある。そんな時でも『死ねない、死んではいけない、生きていたい』そう思わせてくれる何か、それが幸せではなかろうか」


 言い足りないが、ビルセゼルト自身、何をどう言えばいいのか、よく判らない。言いながら、自分が言っているのは幸せではなく『愛』なのではないかと迷う。


 そのビルセゼルトを見越したようなことをジゼェーラが言う。

「愛を見つける事が幸せ?」

真っ直ぐ自分を見るジゼェーラの瞳をビルセゼルトが(のぞ)きこむ。

(まさか覗心術を使った?)

だが、ジゼェーラの力の封印は変わらず有効だ。


「なぜそう思ったのかい?」

「沼に住む黄金色の大きな魚のお話しの中に、春になった時、金色の魚が『愛こそ幸せ』と気付く、とあった」


 ビルセゼルトの胸が詰まり、涙が(にじ)みそうになる。それを抑え、眼差しを変えることなくジゼェーラに

「あの本を読んだのだね」

と微笑む。

「森の奥に、あの沼は本当にあった」

ジゼェーラが呟く。


 懐かしい物語、やはり手放したわたしの息子、すぐそこにいて、わたしを(さげす)みの目で睨む息子……全て自ら招いた結果。それがこんな、思わぬところで繋がっていようとは。今日は、わたしにとってなんという日なのだろう?


 朝は気になっても会いに行かなかった上の娘の成長した姿を目にし、健やかだと知った。わたしがおまえの父親だとも、おまえに名を授けたのはわたしだとも言えず、母親の名を口にすることでおまえを知っていると伝えようとした。


 それからさして時間も経たないうち、不意に森が揺れ始め胸騒ぎを覚えた。まさかジゼェーラに何かあったかと、五年ぶりにこの屋敷に来た。悪い予感は当たり、ジゼェーラが置かれた状況を知ることになった。


 わたしが来ていなければ、ちょっとした、しかも娘の優しさが起こした脱走に、世話係の魔女たちはどんな制裁を加えていただろう? 今の魔女たちは全て解雇して、今度こそジゼェーラを託すのに相応(ふさわ)しい魔女を選ばなくてはならない。ジゼェーラの真っ直ぐな眼差しを曇らせてはいけない。


 そして、ただ一人の息子に何度も聞かせた物語を、ジゼェーラが思い出させた。魔導士学校の書庫にある本なのだから不思議ないことだ。が、三人の子どもたちが魔導士学校に揃ったこの日……偶然に驚かされる。


「そうだね、深い緑色の沼がある。だが、あそこには何も住んでいないよ。危ないから近づかない方がいい」

「……金色の魚をわたしは見た」

「それはいつ?」

「今日、鹿が角を引掛けたのはあの沼の(ほとり)

「以前、魔導生物の学者が調査をしたときには何もいない、虫さえ生きていけないと言っていたが……」


「嘘ではない。嘘など言わない」

やっと落ち着いて話すようになっていたジゼェーラの瞳に、再び恐怖の色が見え始める。


「嘘だとは思っていないよ」

慌ててビルセゼルトが微笑む。

「ジゼェーラには見えるのだと、不思議に思っただけだ。ほかに何かいたかい?」


 沼の畔には男の子、男の人? 若い男の人だ。が、いたけれど、校長が言っているのは沼の中に何かいたかだから関係ない、とジゼェーラは判断する。


「ううん、金色の魚が目の前を横切って、そして沈んでいっただけ」

「そうか……」


 何かを見間違えたか、心に残っていたイメージを見たと錯覚したか、そんなところなのではないかとビルセゼルトは推測していた。


――まだ森は動揺している。


 あの物語を口にし緑色の沼を見つけたと言っていたが、それが危険に繋がるとも思えない。取り()えず、ビルセゼルトの胸騒ぎは収まった。だが、まだ森は揺れている。森は揺れ続けている。


 欲しい物はないかと尋ねた時、ジゼェーラは物ではなく散歩ができる自由、と答えた。迷った末に昼間だけならと許してしまった。


 遠くまでは行かず、夕食の時刻までには必ず部屋に戻る。それが約束できるならば許可し、この部屋を一階に移して外に出られるようにするとビルセゼルトが言うと、ジゼェーラは瞳を輝かせ、必ず守ると約束した。


 森が揺れているときに外に出すのは不安があったが、森の安全は確認してある。ジゼェーラを預かり守ると、森との約束が反故(ほご)にされるとは思えない。だとしたら森に危険はない。だが別の何かに森が揺れている。ジゼェーラを束縛するよりも、その原因を探す方が賢明だとビルセゼルトは判断した。


 森は揺れているけれど、警報を出しているわけではない。


 その日、ビルセゼルトはジゼェーラと様々な約束をした。食べ物を捨ててはいけない。嫌いな物を残しても罰したりしないから安心して残してよい。だが食べる努力を放棄してはいけない。


 服は毎朝自分で選んで自分で着ること。暫くはきちんと着られているか、世話係に見てもらうこと。髪は朝晩ブラッシングし、編んでもよいし結ってもよい。自分でできなければ、世話係にやってもらってもいい。だが、いずれは自分でできるよう世話係から学ぶこと。面倒だからと垂らしたままにするのは極力避けること。決められた装飾品も面倒がらずにつけること。


 やってみたいことがあるなら遠慮せずに世話係に言うこと。少しぐらいの怪我をしても構わないが、大怪我をするようなことは禁じる。二階の窓から飛び降りようなんて絶対に許さない。もっとも、この建物は平屋に変えてしまうから、木に登ってそこから飛んでみようなどと思わないこと。


 小鳥とは身体の作りが違うのだから、あのように空を飛び回ることは少なくとも今のジゼェーラにはできないと知ること。


「いつか飛べるようになる?」

「それは判らない。適性があれば飛べる可能性もある。適性は今度の誕生日に明らかになる。有るといいね」


 ビルセゼルトの言葉に満面の笑みを浮かべるジゼェーラを見て、どれほどこの子は自由に憧れているのだろうと、思った。小鳥のように気の向くままに、青空を飛び回りたいらしい。


 得物は既に判っている。風、水、光、大地が強く、それに火、稲妻、影が追従している。強力な力が自分を手助けするように他の力を呼び寄せているとビルセゼルトは感じていた。そしてもう一つある。だが、それがなんなのかは判らない。


 オールマイティと言われる力を既得している。なのに、さらに別の力が隠されている。未知の力が何を示すのか、この十二年の間探ったが、いまだ見つからない。その隠された何かこそジゼェーラの本質であり、ジゼェーラの運命なのだとビルセゼルトは感じている。


 真の目覚めまであと四年。それまでにその『何か』を突き止め、対策を練っておきたい。


(隠された力が何を示すか、隠されているのはなぜか?……星は我らに何をさせようというのだ?)


 双子の弟サリオネルトは優秀な星見を呼び寄せ、独自に星を読ませていた。そして自分と妻に待ち受ける試練に備えていた。自らの死後の人々の動きを予測し、巧みに息子を隠した。


 サリオネルトの息子は十八年が過ぎようとする今も、その消息が(つか)めない。同じようにサリオネルトの息子を追っている北のギルドが見つけたとの情報もない。どちらが先に見つけ出すかが、この先の魔導界に大きな影響を与えることは判っている。


 サリオネルトはその遺書に、いくつもの仕掛けをしたと書いていた。自分でも結果が予測できないものもあると書いていた。サリオネルトでさえ判らないのでは、自分に解明できるわけがない。それでもどこかにヒントが隠されていないかと、ビルセゼルトは何度遺書を読み返しただろう。だがやはり、答えを見つけられてはいない。


 サリオネルトの息子に付けた二人の魔導士、一人は従弟のブランシス、もう一人はその妻のモネシアネル……


 モネシネアルは『旅の魔導士』として今も魔導士を続けている。ギルドへの登録もある。が、旅を続けていて所在がはっきりしない。そしてその夫で、ビルセゼルトの従弟ブランシスは既に魔導士を辞めている。魔導士リストに名はあるものの、今の(なり)(わい)も住処も不明となってしまった。


 妻のモネシアネルを探し出し、問い詰めればブランシスの行方も判るのかもしれない。だがブランシスを探すこともモネシアネルを探すことも、ビルセゼルトには愚策に思えた。


 魔導士学校の校長ではあるが南ギルドの長をも兼任するビルセゼルトが、一介の魔導士、あるいは元魔導士、そんな立場の者を探していると北ギルドが知るところとなれば一気に二人が、そしてサリオネルトの息子が危険に(さら)される。


 北ギルドがサリオネルトの息子を探す理由はその命を奪うためだ。それが判っているのだから微々たる危険だろうが回避しなくてはならないと、ビルセゼルトは考えていた。


 ジゼェーラの住処を平屋に建て替え、部屋から森に出られる扉を付けてからビルセゼルトは魔導士学校の己がいるべき場所に戻った。別れ間際、『愛しているよ』とどんなにジゼェーラに告げたくても、ビルセゼルトがそれを口にすることはなかった。


「言いつけを忘れず、健やかでいることだ。言いつけとは助言であり、達成できなくても覚えていれば役に立つ」

ビルセゼルトの言葉をジゼェーラはどれほど理解しただろう?


 立ち去るビルセゼルトを見詰める緑色の瞳は『いかないで』と訴えているように思えた。妻と同じ魅惑の瞳、生まれつきのその能力を己の意思で使うようになるのも間近なことだ。


 ジゼェーラと別れてから、ビルセゼルトは森に再び姿を現している。そして森にこう尋ねている。何を騒いでいるのだ?


 森は答えた。おまえの知るところではない。おまえに教えるわけにはいかない。


「では、我が娘に危険は及ばないと約束して貰おう。おまえに娘を預けた時の約束に(たが)いはしないと誓って貰おう」

「約束は守るとも。おまえの娘の命、この森にいる限り必ず守る。だが、ビルセゼルト」

わたしが守らずともおまえの娘が守られていること、承知であろうが。


「おまえの娘、おまえと妻の間に生を()けた娘、あの子のことは星が守っている。心配するだけ無駄と言うもの。心配してもどうにもならぬ」

「どうにもならぬ、とはなんだ? どういう意味だ?」


「それは星しか知らぬ。知っていても口にできるはずもなし」

ビルセゼルトの問いかけにそれ以上答えず、森は沈黙した。何度か森に呼び掛けたが存在すら感じられなくなる。


 ジゼェーラのために作った時間もすでに使い切り、ギルドや学校ではビルセゼルトを探し始めているだろう。諦めてビルセゼルトは魔導士学校へ戻って行った。


 戻るとすぐにビルセゼルトは火のルート番に南の魔女を呼び出すよう命じた。南の魔女の居城からの応答は『統括魔女は手が離せない』と言うものだった。待っても来ないと判断し自分の執務室に戻ろうとすると、ギルドから呼び出しがあったと引き留められる。予定外だったがギルドに渡り、戻ってから南の魔女の動きをルート番に尋ねるが、動きはないとの答えだった。


 自分の執務室に戻ってうんざりするほどの書類に目を通せば、もう真夜中になっていた。そう言えば夕食を食べていない。知らせに来た者に判ったと答えたが、答えたきりすっかり忘れていた。執務室に不侵入呪文を掛け、教師棟の自室に戻る。南の魔女からの返事はきっと明日なのだろう。


 パンに薄切りのベーコンとレタスを挟んだ夜食を食べた後、本を広げて調べ物の続きをしていると、不意に暖炉の火が揺れた。内心、こんな時間に来て欲しくなかったとビルセゼルトが思う。これでまた、睡眠時間が削られる。


 この暖炉の火のルートは、今や南の魔女の居城とビルセゼルトが領主として居を構える街屋敷の暖炉の二か所しか開いていない。そして街屋敷に住む者はいない。


 別荘とのルートは塞いでしまった。あちらからはもちろん、こちらからも、二度とルートが開かれることはないだろう。


「ずいぶん遅いご訪問だ」

見もせずにビルセゼルトが言う。

「では、帰ったほうがいい?」

現れた魔女がビルセゼルトの手からティーカップを取り上げテーブルに置く。そして空いた空間に滑り込み、ビルセゼルトの首に腕を回して膝に座る。緑色の瞳がビルセゼルトを覗きこんでくる。


「帰すものか。待ちわびていた」

来て欲しくなかったと感じたことを忘れ、ジョゼシラの耳元で囁いた。軽々と抱き上げればジョゼシラがクスリと笑い、寝室に通じるドアがひとりでに開いた――


 森が揺れている……ビルセゼルトの言葉に、ジョゼシラが指遊びを止める。人差し指と中指をビルセゼルトの胸で歩かせる、まだ帰る気がない時のジョゼシラのサインだ。


 甘く熱いひと時、その余韻も消えかける頃、ビルセゼルトがジョゼシラを呼び出した本来の目的を話し始める。


「それはジゼェーラと関係する?」

「なぜ揺れているか、森は何も言わなかった。教えるわけにはいかないと言った。だけど、ジゼェーラの安全については約束すると言った」

「ふーーーん」

再びジョゼシラが指遊びを始める。


「ジゼルが安全ならばそれでいい。森はもともと揺れるもの。強い風でも吹いたのだろう」

「強い風ねぇ」

「ジゼェーラの住処の結界は万全なんでしょ?」

「もちろん」


「あの森は王家の森。王族貴族では入れない。入ることが許されるのは王家の直系のみ。ビリーが作って結界を張り巡らせた住処の中には、誰であろうと火のルートを使えば立ち入れる。森の干渉を回避できるからね。裏を返せば、王家の直系以外は火のルートを使わなければ住処に行けない。ジゼェーラを匿うに最適」


「あぁ……」

「森は王家に忠誠を誓っている。森は裏切らない。それなのに現在の王家の当主ビルセゼルトに答えないのは、王家に関わりのないことだからだと思うぞ」


「……王家、王族、貴族。どれももう、とうに形骸化されている。血筋をどうこう言う者もいない訳ではないが、気にしないどころか知りもしない、それが大半だ」

「だが森は覚えている。だからこそ頼ったのだろう?」

ジョゼシラがクスリと笑う。

(いにしえ)に立てた誓いは今に至っても生きている。そして血に流れ続け、脈々と受け継がれている。それを知っているからこそ、森に助けを求めた。何が気にかかると言うのだ?」


「いや、おまえが心配ないと言うのなら、わたしの思い過ごしだろう」

そう言いながらため息をつくビルセゼルトをジョゼシラがフフフと笑う。


「名を付けただけで、顔も見に行かなかった娘の顔を見て動揺したか?」

「まさか! 今年度入学することは前々から判っている」

「抱いて()()()()やるような(とし)(ごろ)はとうに過ぎていただろう? 一番かわいい時期を見ていない。それを実感し、後悔したのではないのか?」


 きっとジョゼシラは意地悪な笑みを浮かべている……ジョゼシラから同じものを奪っている。乳飲み子のジゼェーラをジョゼシラから奪っている。責められたら何も言い返せないビルセゼルトだ。


 黙ってしまったビルセゼルトにジョゼシラも黙る。責めても時は取り戻せない。夫に責めがあるわけでもない。


「ジゼェーラは健やかだったか? 会ったのだろう?」

責める代わりの言葉は、やはりビルセゼルトにとっては責めになっていないか?


「ふむ……心身ともに健やかだが、人と接するのが苦手になっていた」

世話係の魔女たちに不必要な体罰を受け、対人恐怖の()()()があるなどとは言えなかった。


 それを知ればジョゼシラはきっと、魔女たちに容赦なく罰を下す。魔女の怒りを誘導してはいけない。


「人が苦手……人以外が好き?」

「一番のお気に入りは小鳥だそうだ。雨が降らない限り、一日中小鳥と歌っていると言っていた。ダンスを教わったと言っていたな」


「小鳥のダンスをあの子が踊るのか? 年齢よりも心が幼く感じるが。だが、見てみたいものだ」

ジョゼシラが口元をほころばせたのがビルセゼルトの胸に伝わる。


「あの子に女性の印は?」

「世話係からその報告はない」

「少し遅くはないか? いや、そろそろか」

ビルセゼルトが苦笑する。

「その辺り、男のわたしにはトンと判らない。世話係が頼りだ」

「そうだな、男は頼りにならない……初めは不安だろう。傍にいて安心させてやりたかった」


 すまない、と言いそうになったビルセゼルトだったが、何も言わずにいた。下手に謝れば余計に(つら)くなる。妻も自分も――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ