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銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました【猫恋】  作者: ひろの
第1章 星空の誓い

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第5話 再会と火種

ギルドの扉を押し開けた瞬間、視線が集まった。

厚い木扉が軋み、冒険者たちの視線が一斉に二人へ向く。


「……人が多いね」


リュミナの耳がぴくりと動く。

油と鉄の匂い、汗の匂い、焙煎豆の香り。


「ギルドは酒場と兼ねてるからな。

 腹が減ってる奴も、依頼を探す奴もここに集まる」


アレンが笑いながら言う。


カウンターの端では黒い湯気を立てるカップを見つめる冒険者がいた。

それを見てリュミナがぽつりと呟く。


「……コーヒー?」


アレンが驚いたように目を瞬かせた。


「わかるのか? よく知ってるな」


「ううん。良いものは

 ――どこでも生まれるものなんだね」


そう言って、リュミナは慌てて口をつぐんだ。


「ん? そういえばリュミナはどこの出身なんだ?」


「えっと、その……北方の地図にもない隠れ里。」


とっさに言葉を継いだが、心臓がどきりと跳ねた。


「ふーん。まあ誰にでも、話したくないこともあるさ」


ホッとしたリュミナの猫耳が、ぴくりと揺れた。


(……危なかった。ここの人に“銀河帝国”の話なんて、理解できるはずがない)


その瞬間――


「おい……アレン?」


聞き覚えのある声が背後から飛んできた。


振り向くと、《白銀の風》のメンバー三人が立っていた。

先頭に立つのは、銀髪を撫でつけた男――グレン。

アレンの元仲間、シーフであり、そして裏切りの張本人。


「……グレン」


アレンの口調は静かだった。


「どうやってイグラートから逃げたんだ?

 もうフレッシュゴーレムの素材にされてるかと思ってたぜ。」


グレンの口元には、薄ら笑い。

しかしその目は、値踏みするような目でアレンを見ていた。


「まさか、あの魔将を一人で倒したなんて言うんじゃないだろうな?」


アレンは肩をすくめた。


「ふん、どうやら”屑の俺”は好みじゃなかったって、振られたよ」


軽口。

だが、その声の奥には静かな棘があった。


「はっ、まだ生きてたとはな」


嘲るように笑ったのは、鬼人族の戦士・バルド。

丸太のような腕を組み、鼻を鳴らす。


「荷物持ちの分際で、どのツラ下げてギルドに来てんだ?」


「おいおい、やめなよバルド」


隣の女が猫のように瞳を細めた。

猫顔ビーストの女戦士、メルナ。

アレンの〈ネコテイム〉がまったく効かない。


「そうは言ってもな、メルナ。

 こんな哀れな奴、囮役すらなれねぇ屑だぞ」


リュミナの耳がぴくりと動いた。

彼女は静かに二人を睨む。


その仕草に、メルナが鼻で笑う。


「なに、この女?」


アレンが低い声で言う。


「彼女はヒューマンとビーストのハーフだ」


「ハーフねぇ?」


メルナの口の端が吊り上がった。


「そりゃまた、ずいぶん劣等な――」


バルドが下卑た笑いを漏らす。


「ビーストの身体能力もギフトもねぇ半端者か。

 ……アレン、屑のお前にはお似合いの相棒だな」


「やめろ」


アレンの声が、低く、鋭く響いた。


だがバルドは聞かない。

リュミナの髪を、乱暴にわしづかみにする。


「きゃあっ!」


その瞬間――

アレンがすっと動いた。


腰の短剣が閃き、バルドの手の甲に鋭い痛みが走る。

刃が皮膚を浅く裂き、赤い血が滲んだ。


「……次に触れたら、指を落とす」


ギルド内が静まり返る。

誰もが、かつての“ヘタレな荷物持ち”が見せたその冷徹な目に息を呑んでいた。


バルドが怒声を上げようとしたが、グレンが手を上げた。


「やめろ、バルド。……ここで揉め事は御法度だ」


しかしその声の裏には、明確な敵意と――ほんのわずかな恐怖が混じっていた。


こいつ……変わったな。まるで別人のような目だ。

グレンはそう感じざるを得なかった。


アレンはリュミナの手を取ると、静かに背を向けた。


「行こう。依頼の確認はまた今度にしよう。」


リュミナは一瞬だけアレンの横顔を見た。

その瞳の奥には確かに怒りが宿っていた。


(……アレンとあいつらの間には一体何が……?)


ギルドの扉をくぐる瞬間、リュミナは小さく呟いた。


「……アレン、ありがと…ね。」


アレンが振り向く。

「ん?いや、俺のせいで君にも嫌な思いをさせた。」


「私は……大丈夫。」


そして、二人はギルドを後にした。

その背中を、グレンは険しい目で見送っていた。


「……まずいな。あいつに何があった!?」

ざまぁ要素の蓄積回です。さぁ、憎さ充電!


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