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銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました【猫恋】  作者: ひろの
第2章 追われるもの

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第16話 暁のまどろみ

夜明けの光が洞窟の入り口からゆっくりと差し込んでいた。

青白い岩肌が橙色に染まり、焚火の残り火がわずかに赤く揺れる。


アレンは、その微かな熱を感じながら、ゆっくりと瞼を開いた。

目に映ったのは近すぎる距離にあるリュミナの顔だった。

頬にかかる銀髪が光を受けてきらめき、閉じたまつげの影が柔らかく揺れている。


……なんだ、この体勢は


体を起こそうとした瞬間、温もりを感じた。

彼の腕は自然とリュミナの腰を抱く形になっていた。

そして、リュミナの細い腕が自分の胸に回されている。

まるで互いに寒さをしのぐように無意識に寄り添っていたらしい。


彼女の小ぶりな胸が自分に押し当てられていることに気づいてアレンの心拍が一瞬で跳ね上がった。

戦場ではどんな敵を前にしても乱れない呼吸が今だけは制御できなかった。


「落ち着け。なんだ?そうだ、俺は毒を受けた。それでリュミナが。

 ……ただの看病の延長だ。そう、そうだ。で……なんでこの状況!?」


あまりの混乱に思考が全て言葉に出てきている。


「これはなんでもない!ただの看病」


そう自分に言い聞かせながらも、

身体全体に伝わる温もりが現実を突きつける。


リュミナが小さく寝返りを打った。

その拍子に彼女の髪がアレンの首筋に触れ、かすかに甘い香りが漂った。


「あがぁ!?」


その声でリュミナも目を覚ました。

目をパチパチと瞬きしてから、しばらく寝ぼけたまま、アレンを見つめている。


「……おはよう、アレン。」


声は夢と現の境のようにあやふやだった。

リュミナが半開きの目でぼんやりと彼を見つめる。

数秒後に現実を理解した瞬間、彼女の頬が一気に赤く染まった。


猫耳がバタンバタンと忙しなく動いたあと、ピンっと立った。


「っ!? ぎゃっぎゃああああ!!!」


慌ててアレンを突き放して離れた。野営布が落ちて上半身裸のアレンと下着姿の自分が露わになった。


「っ!? ぎゃっぎゃああああああああああ!!!」


慌ててアレンの首に巻き付けたローブを奪い取った。


「おぅぇ!?」


首が絞められて苦しそうな声を発したが、そのまま引っ張って奪い取った後、高速でローブを被って肌を隠した。


「ごほっごほっ。い、いや……助かった。リュミネ……ありがとう。

 命の恩人だ。」


「ど、ど、ど、ど、どういてませて(どういたしまして)」 


猫耳がピタッと倒れ顔を真っ赤にして返事をしたが、言葉になっていなかった。


互いに気まずく視線を逸らし、無理やり真面目な会話に持っていこうとする二人。

しかしどちらの頬にもまだ熱が残っていた。


洞窟の外では鳥の鳴き声が響き始め朝の風が入り込んだ。

新しい一日が始まるその瞬間、アレンは小さく息をついた。


「……行こう。街に戻らないとな。」


「う、うん……!」


リュミナは慌ててツールを片付け、髪を整えながら立ち上がる。

だが、その動作の合間に、何度もアレンの方をちらちら見ていた。


アレンもまた、視線を合わせまいとしながら、

胸の奥でどうしようもない“温かさ”を感じていた。


・ ・ ・


森を抜け、丘を越えるころには朝日が空を赤く染めていた。

鳥のさえずりが響き、風が葉を揺らした。

日常が戻ってきたかのような光景に、二人は無言で歩いていた。


「……あのさ、さっきの猪の魔物さ、

 えっと……何言おうとしたんだっけ?」


どうでもいい会話で間を繋ごうとするが、

昨夜のことを二人して意識しすぎているため、何もかもがぎこちない。


アレンは口を開いたものの、何を言えばいいのかすぐに詰まる。

視線は必死に地面へ。胸の奥がざわついて言葉が全部飛んでいく。


「……うん?」


リュミナも少し首をかしげ、目を瞬かせる。

彼女の声にアレンは一瞬ドキリとした。


「えっと……いや、あの……今朝の食事、どうだったかな、って……」


再び世間話を振ろうとして、ぎこちなさすぎて自分でも笑う。


「……え?」


(アレン、意識しまくってない??

 ちょっとこっちまで思い出して恥ずかしいんですけど……。)


「アレン」


二人は顔を見合わせた。


「もう心配させるような無理はしないでよ。」


「あ、あぁ。すまない。何かあったらちゃんと伝える。」


やはり顔を見つめているのが恥ずかしくなっていた。

アレンが視線を外そうとしてゆっくりとリュミナを見つめると、今朝の下着姿が重なって見えた。


「……悪かったわね。小っちゃくて。」


「え?」


「胸見てたのバレバレですけど。」


「いや、違う!見てない見てない!それに……」


「それに?」


「いや。なんでもない……勘弁してくれ。」


「……ムッツリっ!」


「違うわっ!あ……門が見えてきた。」


足並みは自然と合う。

リュミナがからかいながら先を進んだ。


「アレンはムッツリ!アレンはムッツリ!」


「やめろ!人が居るからやめてくれ!」


追いかけるアレン、そして二人同時に小さな笑いが起きた。

二人の心は確かに近づいていた。


・・・

・・


街の門が見えた瞬間、生活音と人々の声が混ざり日常の匂いが戻る。

その中に一人の見慣れた顔があった。


「おお、アレン!戻ってきたのか!」


バールが手を振りながら駆け寄ってくる。

親しい友人の顔を見てアレンは少しほっとした。


「……あれ、どうした?」


バールは眉をひそめる。表情や歩き方に違和感を感じた。

目の端でチラリとリュミナの姿も見え、すぐにピンときた。


「……何かあっただろ?二人とも」


「ぶっ!」


唐突な物言いにリュミナが噴き出した。


バールは笑いを堪えながら声をひそめた。

アレンの肩を軽く叩き、ささやいた。


「まぁ、よくあることだ。お前も一人前の男になったな。」


「おい!だから何もないって……」



アレンが必死に否定すればするほどバールがにやりと笑った。

リュミナもちらりと彼を見て顔を背けた。


「ふぅん……ま、いいけど。ギルド長がお前を探していたぞ?」


「わかった。ありがとう。このまま向かってみるよ。

 言っとくけど、何にもないからな!

 変な噂を流すなよ、バール!」


「おう!任せとけ!三日で町中に広めてやるぜ」


「やめてくれ……。」


「ははははは。お前の噂なんて1銅貨にもならねーから勘弁してやるよ。」


アレンは適当に手を振って、バールに別れを告げた。


二人はぎこちないまま冒険者ギルドに向かった。


視線を合わせることなく、でも互いの存在を確かめ合いながら歩く。

朝の光の中、二人の胸の奥には、昨夜の余韻と温もりがまだ残っていた。

朝の雑踏、人ごみのなか、アレンが自然とリュミナの手を握る。

リュミナはそれを受け入れて、はぐれないように寄り添った。


その温かみとは真逆に冷酷な眼差しで見つめるグレンの姿があった。


「馬鹿な。どういうことだ?メルナがあいつらを追ったはずだ。

 なぜ、無事に戻って来た。

 メルナはどうしたんだ?

 ……まさかな。」


グレンの瞳には憎悪、そして恐怖が同じくらい大きく映っていた。


「くそ……。奴に何が起きたってんだ。」


そういうと彼は再び路地裏に姿を消した。

ドキドキ回でした。 二人とも意識しまくりなの可愛いですよね?

気持ちは急接近したと思います!えぇ、思いますとも!


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