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銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました【猫恋】  作者: ひろの
第1章 星空の誓い

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第14話 逆転の剣

夜の魔族領は雷光に照らされ、影と光が交錯していた。


アレンはリュミナを下がらせて、メルナと向き合う。

レーザーブレードを握る手に力を込め、瞳は氷のように冷たい。


「……行くぞ」


まずアレンは正面から斬りかかる。

メルナは軽く身を捻るだけで、ブレードは空を切る。

一方でメルナの鋭い爪や蹴りの攻撃に対して、アレンは全てを避けきれず、

血しぶきが舞う。


「くっ……速い……!」


ヘッドセット越しにリュミナの声が聞こえる。


『アレン!?』


(アレン、なぜシールドを使わないの!?)


メルナは楽しそうに笑った。


「どうした?そんな攻撃じゃかすりもしないぞ?

 それとも何か?先にあのゴミ猫を殺せば本気を出してくれるのかい?」


「貴様ぁ!!!」


怒りに任せてもう一段スピードが跳ね上がったが、

ブレードを振るアレンの動きは読み切られ、メルナの体が風のように滑る。

岩陰を蹴り、宙に舞い、回転しながら攻撃をかわす。


「遅い遅い!」


援護しようとリュミナがレーザーガンの引き金に指を当てるが撃つことが出来なかった。


(ダメ……当てられる気がしない。場合によってはアレンを撃ち抜いちゃう!?)


彼女は兵士ではない。正式に訓練を受けたわけではない。

遠距離射撃の腕前はそれほどでもない。

牽制にはなるかもしれない。だがリスクが高すぎる。


(他に何かない?えっと……。えっとえっと。これだ!閃光弾!)


閃光パックをレーザーガンに装填しようとした時、アレンから落ち着いた声で通信が届いた。


『リュミナ、何もするな。今はお前が目立って狙われる方が俺にとって良くない。』


『でも!?』


『俺を信じろ!』


メルナと斬り結びながら、真面目な瞳でリュミナを見つめた。


(あー!!もう!!なんて目で見つめるのよ!!

 これじゃあ信じるしかないじゃない!!)


『……信じる。絶対に死なないで。』


『あぁ。必ず俺が勝つ。』


その間もアレンのブレードは、全て避けられた。


ブレードを振ると同時に足元の砂を蹴り上げた。

砂埃が舞うが、蹴り上げる直前にバック転して、メルナは遠ざかった。


「いいねぇ!目隠しか?

 アレン、卑怯なお前にお似合いな攻撃だ。

 だが、あたしには効かんぞ!」


鉄爪を擦り合わせて、不快な音を立てながらメルナがゆっくり近づいてきた。


アレンは腰を低くして、レーザーブレードを上段に構えた。


「ほぉ?捨て身でくるか。良いだろう。

 お前のその一撃があたしに届くのと、

 あたしの爪がお前を突き殺すのと、

 どちらが速いか勝負だ!」


(アレンっ!?)


リュミナは祈るようにして目を閉じた。もう見ていられない。


メルナが踏み込む。

アレンはメルナが間合いに入ると同時に高速にブレードを振り落とす。


だが、まさに紙一重でメルナは避けて、アレンの横に並んだ。

メルナの勝利を確信した不敵な笑み。


「終わりだ!」


メルナが叫び、アレンに向けて飛び掛かる。


その時、アレンは左手に力を込める。


同時にリュミナが装着してくれたパーソナルシールドが反応して、

エネルギーシールドが硬化して具現化した。


さすがに予備動作もなく現れたシールドにメルナも反応できない。


一瞬で硬化したシールドが飛び掛かったメルナの腹に下方から直撃し、

全ての息を吐き出させ、同時に2mほど上空に弾き飛ばされる。


「かはっ!?」


一瞬目を閉じたメルナだったが、再び見開いた時に、目の前にアレンのレーザーブレードが迫ってきていた。


凄まじい反射神経で、空中で体勢を立て直して、鉄爪を交差させてレーザーブレードを受け止めようとする。

だが、アレンのレーザーブレードが鉄爪を溶解させながら止まらず、

メルナの右肩から胸の辺りまで食い込む。


「がっ!!」


メルナの口から塊の血が吐き出され、彼女はそのまま地面に落ちて動かなくなった。

即死だった。


アレンは剣を下ろし、呼吸を整えた。

振り返ると、リュミナは岩陰から震えながらも興奮していた。


『……アレン……すごい……』


ヘッドセット越しに安堵の声が響いた。


『勝ったぞ、リュミナ!』


『えぇ……信じてた。傷は大丈夫?アレン……』


振り下ろしたブレードの先端には、静かに燃える光が残った。

リュミナが走り寄ってくる間に、悲しげな視線をメルナに向けた。


「お前やバルドにもう少し人としての心があれば、こんな死に方はしなかっただろう。」


駆け付けたリュミナは両手でアレンの肩を掴み、強く抱きしめた。


「無事で……本当に、よかった……」


アレンもゆっくりとリュミナの背中に手を回して抱き返した。


夜の魔族領は戦いの後に一瞬の静寂を取り戻した。

雷光が遠くの山脈を照らすだけで、冷たい風が岩肌を叩く音だけが響いた。


「リュミナ。君の幸運のキスのおかげで勝てた。」


抱き締めていたリュミナの両手の指がバラバラに開いた状態で固まった。

顔も真っ赤になって口元が引きつっている。


「あ……あれは……シールドを渡すための……カモフラージュで……す。」


(な、何思い出させるのよ!せっかく忘れてたのにぃ!!)


上目遣いでアレンの顔を見つめると、至極真面目な顔で見つめていた。


(なんであんたは平然とした顔してるのよ!!

 意識してるの、私だけみたいじゃない!!)


「……完璧だった……でしょ?メルナを騙せた。」


「あぁ、完璧だった。お前に驚かされたのは二度目だよ。」


(二度目?あーーーー!!!ああああああーーーーー!!!!

 思い出した。出会った時もキスしたわ。

 なんでここで思い出させるのよ!!!)


リュミナの顔がさらに赤くなる。


(し、しかも驚いただけ?

 一人で興奮してる私が、馬鹿みたいじゃない!)


リュミナがアレンの足を思いっきり踏んづけた。


「痛っ!?」


二人の胸には燃えるような緊張と達成感が残っていた。

そして今夜の勝利は、互いの信頼と絆の証として刻まれたのだった。


リュミナは近くで事切れたメルナに目を向けた。

小型衝撃弾をレーザーガンにセットし、その近くを狙う。


「リュミナ、おい、何を?」


放たれた衝撃弾がメルナの近くに2mほどの穴をあけた。


「いくら敵だからってこんな所に一人放置したら可哀想じゃない。

 お墓くらい作ってあげないと。」


少し驚いたアレンだったが、メルナを抱き上げ、穴に寝かせると掘り出した土を戻して埋めた。

その上に焼き溶けた爪を突きさして簡単な墓標にした。


「リュミナは優しいな。お前ってさ、本当は何者なんだ?」


「え?ど、ど、どういう意味?」


「いや、なんて言うか、倫理観だったり、

 態度だったりが、洗練されているというか、

 身だしなみもしっかりしているし……」


少し、顔を赤めて小さい声で


「とてもいい匂いがするし。」


(え?何それ、もしかして意識しちゃってたの?)


「いや、一言で言うと、とても育ちがいい感じがする。

 北方の隠里出身ってのは嘘だろ?」


(おっとそれどころじゃない!?バレたか!?

 どうする?どんな言い訳にする!?)


「お前、どこかの国の貴族、いや、下手したら王族、お姫様か?」


「は?え?あぁぁぁ、ばぁれたかぁ!!

 アレンだから言っちゃうけど、内緒にしてね。」


「え?やっぱり、マジか。」


「えっと……。私は祖国に狙われてるの。

 あのぉ、そのぉ、お姫様だから?

 あまり派手な行動はできなくて。」


「分かった……。お前も苦労してるんだな。あ、お前……じゃ失礼か?」


「いえ、いつも通りでいいわ。その方がカモフラージュになるし。

 それに……アレンからはよそよそしくしてほしくない。」


「わかった。いつも通りにさせてもらうよ。」


「えぇ。」


少しだけ微妙な雰囲気が流れた。

アレンがそれを振り払うかのように笑顔で尋ねた。


「そういえば、リュミナ、用事は済んだんだな?」


「えぇ、戻りましょう。——“私たちの街”に。」


彼女は母国と決別した。

第一章終幕です。


まだグレンは生きているっ!

ざまぁは終わらない!



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― 新着の感想 ―
面白かったです。 単に剣で斬り合って勝つ、ではなく、格上を知恵や戦闘センスで勝つと言うのは胸が熱くなりますね。 そういうストーリー性にひろの先生の良さが出てる気がします。応援してます。
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