また、会えるって思ってた
楽しい話じゃない。
だから、聞き流してくれてもいい。
……私は、大切な人を、失くした。
「たかが一人」って、言う人もいるだろう。
「また誰か見つかるよ」って、簡単に、言えるんだろう。
でも──
あの人だけは、違った。
誰にも見せたことのない感情を、
名前もない想いを、
声にならない衝動を──
初めて、怖がらずに見せられた。
あの人だけには。
短い時間だった。
ほんのわずかな日々の断片。
だけど、たくさん話して、笑って、
あたたかい言葉をもらった。
「もっと話したい」
「もっと、近づきたい」
ようやく、そう思えた。
──その矢先だった。
突然、いなくなった。
何の前触れもなく。
ぽっかりと空いた空間に、
置き去りにされたのは、
私の気持ちだけ。
今も私は、その場所を見てしまう。
そこに、誰もいないと知っているのに。
声が聞こえた気がして、
振り返ってしまう。
……バカみたいだよね。
でも、それでも私は、
あの人がいた温度を、忘れられない。
それでも、生きていくしかない。
まだ、好きなものがあるから。
まだ、描きたい感情があるから。
一歩ずつ、ゆっくりでも。
歩いていこうと思う。
……それでも、
ふとした瞬間に、
記憶が溢れて、涙が出ることもある。
だって、あの人との時間は、
「たかが一人」なんかじゃなかったから。
——これは、私だけの、
とても小さな喪失の話。




