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トケイソウの花束を

2人目のお話です。

 彼女はとても美しかった。

黒く艶やかな髪に、陶器のように白い肌。よく周りからは白雪姫だと言われていた程だ。とても大人びていて綺麗な彼女は、笑うときは幼子のように顔をくしゃりとさせて笑う、可愛らしい人だった。

 ただ高校生のとき、隣の席だった。それだけだったのに、あっという間に私の心は奪われた。少し短い鉛筆を走らせるその指の繊細な動き、体育の時間の度揺れる髪の1本1本が神聖なものに見えて、少し空いた時間ができるたびに盗み見た。正面から見る勇気なんて、なかったから。

その後も、彼女を只々見ていたくて、こっそり彼女の目指している大学や学科を調べたりもした。

 友人からは、

「それはもうストーカーなんじゃないか?」

なんて言われた。

だが、私はあくまで知りたいと思い調べているだけだ。見ているだけだ。待ち伏せや付き纏いはしていない、と思う。

 そもそも、私は彼女に対して恋愛感情を抱いている訳では無い。そんな感情を抱ける訳がない。

先にも言ったが、私は彼女の全てが神聖なものに見えている。君は神に劣情を抱くか?隣に立ちたい、自分だけを見て欲しいなどと思うのか?

そんな訳が無い!神とはそこに居るだけで敬われ、拝まれる存在だ。そんな神という存在に劣情を向けるなど、自分に酔った愚か者でもしない。

神に何かを頂こうなどというのは以ての外だ。神とはなんでも持っている。なんでも与えられる。だというのに私達に何も与えないのは、私達が神にとってどうでもよいものだからだ。神と私達には雲泥以上の差がある。そんな私達が何を求めるというのだ。

私が彼女に抱いているのは、そんな神に対する思いと同じ。何かを得たい訳でも、また何かを渡したいとも思わない。只々彼女を見ている。拝んでいる。信じている!それがどうして恋愛感情だと言えるのか甚だ理解し難い。

 彼女は存在するだけで皆を幸福にする。笑いかけられた者は皆天にも登る想いだろう!それに!

……それに、そもそも私と彼女は性別が一緒なのだ。例え好きだとしても、拒絶されるかもしれない。されなかったとしても両親はまだまだ昭和な考え方をしているから、きっと失望される。なんなら縁を切られるかもしれない。

だから私は、この感情を信仰と呼ぶのだ。

これまでも、この先も。

でもせめて、これだけは渡すことを許して欲しい。

この作品を見つけて下さり、その上ここまで読んでくださりありがとうございます。

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