ep2-4:いよいよ定年に向けての計画が始まる~可南子編完結~
可南子は鍋島の雰囲気から女の影を感じていた。
そして前妻の子供の影も見え隠れするようになり、いよいよ自分の老後について真剣に考え始めた。
実は、可南子は鍋島の前妻が今どうしてるか知っていた。
元々喋ったことはないが前妻は美人だったし可南子はうらやましく思える存在として意識していた。
その美人から旦那を取ったのだから、彼女が今どうしてるか気になっていたのだ。
鍋島の前妻圭子は離婚してからも独身で、結婚してるときから小遣い稼ぎ程度だった仕事を本格的に始め成功していた。
鍋島と圭子をどうこうしようというわけではないが、自分が圭子から鍋島を奪い、その子供たちは自分たちで独立した。
可南子の子供たちはすべて鍋島のサポートのおかげで立派な結婚式もできたし、今も幸せに暮らしている。
もういいんじゃないか?と思ってしまったのだ。
そんなとき女性の影がチラつき、鍋島が大きなお金を動かした。
生活に困ってるという、その取引先の女性の家庭を支援し始めたのだ。
女性から旦那を紹介され、旦那が病気でしばらく働けていないことを知ったためしばらくの間という約束での生活援助。まるで詐欺にでもあったかのような話。
驚いた可南子は鍋島を問いただしたが「俺の金をどう使おうがお前に関係ない」と言われ、何も言えなくなる。
でも、20年以上夫婦やってるんだから、それは共有資産じゃないの?と静かに怒りが湧いてきた。
私に黙って他の女にお金を渡すなんて・・
可南子は今まで鍋島からもらっていた生活費を全部使うわけではなく、自分の口座に貯金していた。
あと少しお金が貯まれば老後安心して暮らせる、あと10年は我慢しなければ。
そう思うと可南子は今までしていた料理や洗濯、掃除がすっかり雑になってしまい、鍋島との距離も遠くなっていった。
5年が過ぎた頃、可南子と鍋島は家庭内別居と言ってもいい関係になっている。
鍋島からしてみると、まともに働いたことがない可南子が出て行くとは思っていない。
「不満があったらいつでも出て行け」は鍋島の決まり文句。
冷え切った夫婦関係だったが、出て行くのも面倒だし何もしなくても生活費は入ってくる。
まだまだ出て行くきっかけには程遠い。
そんなことを考えながらまた数年が過ぎ、可南子60歳、鍋島70歳になっていた。
5年後鍋島の体に異変が起こる。
ゴルフ中に気分が悪くなり病院に駆け込んだ。
睡眠不足と疲れ、食事が脂っこかったので気持ち悪くなっただけだったのだが、その検査でわかったのは脳梗塞予備軍であること。
それから血液サラサラの薬や、血圧を管理する薬を処方され健康に気を使うようになったが、それを知った可南子は10歳年上の鍋島がもし倒れたら介護するのは私?と心配しだした。
絶対に嫌だ。
鍋島を介護するなんて・・・、この人は絶対に施設に入るとは言わないだろう。
今回病院から呼ばれただけでめちゃくちゃ嫌だったのに、もし本格的に倒れてしまったら・・・
可南子の計画は急ピッチで前倒しになる。
貯金したお金を確認し、お金になるような時計や宝石類を集め、子供たちに鍋島と離婚すると伝えた。
そして鍋島が仕事で帰ってこない日を狙って衣類や家具など必要なものを持って引っ越した。
もちろん協力したのは3人の子供たち。
可南子は結婚生活数十年の間に鍋島からもらったお金をコツコツ貯め、なんとその金額は3000万円にもなっていた。
まともに働いたことがない可南子にとってその金額は人生に成功したと言っても過言ではない。
結婚離婚(転職)を繰り返した可南子の人生は3000万という退職金を得て、何からも縛られない自由を手に入れた。
結婚離婚を繰り返してキャリアアップ出来た可南子の人生をどう思いますか?
一応3人の結婚相手に対して恋愛感情があったので、すべてが我慢の人生ではありません。
好きな会社に就職して嫌になったら転職、そして定年を迎え自由を得た。