ep2-3:3度目の転職(再々婚)は定年まで?
鍋島と再婚することになり、市営住宅住まいの可南子は念願のマイホームを手に入れた。
というのは新しく購入したわけではなく、鍋島の家族が住んでいた家に乗り込んだのだ。
近所の目など気にしてる場合じゃない。
子供たちを育て上げなくてはならない。鍋島の家では3人の子供たちに部屋を与えることが出来た。
元々広かった家を少しリフォームするだけで、家族5人が快適に暮らせるようになり子供たちは大喜び!
広い家にドタバタしても下の階に住人に気を使わなくていいし好きな音楽も自由に聴ける。
可南子は専業主婦として鍋島が帰宅するころには食事を用意し、お風呂も用意してある状態にしていた。
可南子はこの生活を手放さないための努力をするようになり、今まで苦手だった家事にも前向きに取り組組み、掃除もするようになった。
欲しいと言えば買ってくれる電化製品、子供の服、今までと比べられない贅沢な暮らし。
子供たちが独立するまでは絶対にこの生活を守る!
だから鍋島に他の女性の影がチラついても文句を言わないどころか、気付かないフリを続けた。
鍋島が生活費にと手渡してくれるお金は課長クラス級で、生活費としては余るぐらい。
自分の子供でもない3人を育て、広い家も与えてくれるのだから文句が言えるわけがない。
鍋島が営む自営業はすこぶる好調で、接待だ付き合いだとゴルフや旅行、飲み歩きという理由で帰りが遅くなることもしばしば。
でも、鍋島が家を空ければ子供たちにとって本当の家族団欒が過ごせるため、逆に鍋島がいない方が良かった。
傍から見れば不思議な家族だが、そうやって時間は流れ子供たちは成人し独立し始める。
長女の結婚、次女の結婚、とうとう末っ子の次男も結婚が決まった。
鍋島にとって、子供たちの結婚は何とも言えない感情があった。
可南子の子供たちを育てたのは自分だけど、どこか虚しさもある。
自分の血のつながった息子たちには何もしてやっていない。でも、彼らから連絡が来るまではこちらから何も言うまいと決めている。
頼られなければ自分から手を差し伸べることはしないし、連絡を取らなくなってから10年以上が経過していたため、どうしようもないと諦めていた。
そんなある日、鍋島の元に次男から連絡が来た。鍋島の実子である次男圭吾。
圭吾は既に結婚していて、子供が生まれたため鍋島に見せに来たのだ。
自分の父親が元気にしてるのかも気になっていたし孫を見せたかった。
鍋島にとっては血縁関係がある初孫。めちゃくちゃ嬉しくて顔が緩んだ。
それから1年に数回、圭吾は子供の写真を送ったり鍋島の会社に顔を出すようになる。
鍋島が65歳になったとき、可南子は55歳。
頼られ好きな鍋島は会社に出入りしていた取引先の女性と親しくなる、とは言っても男女の仲ではなく親子のような関係。
鍋島がそう思ってるだけで取引先の女性はそんな風には思っていない。親しみやすい馴れ馴れしいおっさんといったところだ。
鍋島はすぐに身の上相談に乗りたがる。
聞かなければよかったのに、聞いてしまったおかげで再び関係ない話に自ら入ってしまうことになる。。