ep1-4:タカシという男
裕子が結婚したタカシという男、性格が良くて友達が多い。
上司や部下、取引先、年齢関係なく誘われる。
タカシは穏やかな話口調で、聞き上手なうえ適度なところで相槌を打つなど相手からすると居心地の良さを持っている。
そんなタカシとの生活が始まって観察すると、彼が重きを置くのは遠方から来た新妻より両親。
誰も知る人がいない土地でタカシの帰りを待つ裕子。
結婚してすぐに子供が出来るが、話し相手がいるわけでもなく、ただ時間が過ぎるのを待つだけの虚しい毎日。
タカシからは必要な生活費をもらうだけで、貯金がいくらあるのか知らないし給料も教えてもらっていない。
子供が1歳になったとき、生活に不安を感じた裕子はパートで働きに出ることを決意。
1歳の子を預けて働くなんて、とありきたりの事を言われたが裕子には自由に使えるお金もなく、どこにも遊びにいけない。
そう、タカシの家は貧乏だったのだ。。
広い敷地の建物は借り物、実家も借り物の家。
タカシは貯金もないくせに、立派な結婚式を挙げたことになる。
30年ほど後にわかることになるが、結婚式から数年後彼らは数百万の借り入れをしていたことを裕子は知る。
裕子は結婚するにあたり、タカシの貯金額や給料を聞かなかった。
勝手に立派な人だと思い込んでいたからだ。
薄々タカシの家が貧乏だと感じ始め、タカシに転職を勧めたが優先順位が両親のタカシに聞く耳はなく、彼は両親を助けるために仕事を手伝っている。
こんな馬鹿げた考え方で仕事が上手くいくはずがない。
裕子の結婚は最初から間違っていた。
・付き合って初めての年末年始、裕子と過ごすより親と過ごすことを選んだタカシ
・勝手に立派な人だと思い込んでお金のことについて一切話し合わなかった裕子
・結婚式に裕子側の意見が反映されずタカシの親主導というありえない事態
・自分の意見を持たない男
裕子には結婚前に白紙に戻す要素があったのに、当時の裕子には全く気が付かなかった。
親優先で生きてきたタカシには自分の意見がない。あるとすれば親が喜ぶことを考えるぐらい。
おそらく勉強も進学も就職も結婚も親孝行なんだろう。
そんなタカシに自分で仕事を取ってくるなどということが出来るわけがなく、次第に家業もどん詰まりを迎える。
暇になっても営業に出ることはなく、ただ待つだけ。元々親に頼っての仕事だから営業スキルがないのだ。
子供が小学校に入るころ、裕子はしばらくタカシの家業を手伝ったが裕子に対して給料が支払われることはなかった。
そしてタカシの家業が上手くいかないと悟った裕子は再び外でパートに出ることになるが、裕子の給料日を待ち構えたようにお金を要求するようになる。
パートの給料を運転資金にしたところで焼け石に水だった。
結婚=永久就職というのは、奴隷以下の生活なのか?と疑問を持つようになっていく。
いつまでも「息子」の領域から出ることもなく、裕子との生活を優先することもなく時間は過ぎ、タカシの仕事は破綻。
裕子にとっては願ったり叶ったりになる。あのまま仕事を続けても借金が膨らむだけでどうしようもないのがわかる。
タカシは生活を守るために会社員になった。
自分の妻である裕子、自分の子供より親を優先するタカシ。
おまけに貧乏で裕子が働いたお金はすべて親と自営業の支払いに充てられる始末。
なぜ裕子は引き返さないのか、裕子はそのままタカシとの生活を続けてしまう。