終わりとはいつも突然にやってくるものだ。
その日、宮城県沿いの海にて何らかの異常事態が発生したとの報告があった。上空を飛ぶ飛行機が何らかの衝撃により海上に墜落。乗組員含む乗客は重軽傷を負ったものの、死亡者はいなかった。海上を航海中の船やタンカーは外部からの著しい衝撃を受け、活動を停止。また、付近の砂浜付近から、沖に向けて約2キロに渡り、一時的に海面が十数分にわたり蒸発する現象が観測された。その数分前には仙台市内の一部地域で、住民を含む大多数の人々が、体調不良を訴え、嘔吐や意識障害により、一時パニックになる事態が発生。海岸沿いの異常現象との関連も含め、政府が自衛隊を出動させる。問題の宮城県の海岸付近に近づこうとした警官隊、自衛隊の車両が壊滅的な被害を受け、一時撤退。近づけぬがゆえ、何が起きているのか誰にも分からなかった。
同時刻、福島県いわき市在住の阿部幸子(13)は海の上を歩く人影を目撃。すぐに家で家事をしていた母親に知らせに走る。不審に思った母親は娘と海岸沿いまで駆けつける。すると、確かにそれは海の上を歩く人だった。距離はかなりあったが、二人とも毎日海を見て育ってきた。毎日のように水平線の奥を観察する癖がついており、視力は確かだった。見間違えるはずもなく、ただただ驚いた。その人物は、ゆっくりとだか確実に歩みを進めていた。着物を身に着けていた。年は幸子と変わらないくらい。性別までは分からなかったが、長い髪を一つにまとめ風に揺れるその姿はきっと美しいのだろう。幸子はそれが男だろうが女だろうがきっと恋をしただろうと思った。
二人の母娘は一先ず警察に知らせた。
これが悲劇の始まりだった。
この日、この通報がきっかけで、船乗りの父親は死んだ。事態は幸子たちが考えるような甘い話ではなかったのだ。
美しいと思っていたものは、狂気と紙一重だった。
関わるべきではなかったのだ。
その日幸子の人生は一瞬で変わってしまった。




