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佐々木の冒険  作者: 芋猫
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猫と飛蝗の冒険―青葉城跡―

仙台までは1日で着いた。タマ曰く、修行も兼ねた移動らしく、過酷な旅である。

「お互いに感覚を取り戻すのが大事だ。俺にしても完全体になるかもしれないオロチと闘うとなると今のコンディションじゃ心配だ。高橋、お前も腕が生えてから感覚を取り戻さないと、いざ闘うときに使い物にならないからな。それに根本的な体力は必要だ。日本を一周するくらいの体力がないと、俺達がこれから相手にする奴らの足元にも及ばない」


しばらく仙台の街を散策した後、二人は青葉城跡の見える場所に腰掛け握り飯を食べていた。

「タマ、今のうちに少しオロチの事について聞きたいんだが、いいか?」

高橋の問いかけにタマは前方を見つめてしばらく考えてから、「ああ」とだけ答えた。

「オロチの八体の身体についてだが、お前と政さんが話していた『春彦』というのは一体どんなやつなんだ?」

タマは持っていた握り飯を一気に頬張った後お茶と一緒に流し込んで一息をついた。

「春彦は、あいつは子どもだ。歳は八つくらいだよ」

「少年じゃないか」

高橋は驚いてタマの顔を見た。

「ああ、だが、多分八体の中で最強だ。あいつだけ抜きん出て強い。尋常じゃないと言ってもいい。一戦やったことがあるが、七日間勝負が着かなかった。最後にはお互いにスタミナ切れで引き分けだよ」

信じられないような話がすらすらとタマの口から語られる。

「まあ、友だちでもあった。化物同士気があったんだろうな」

少し悲しそうに城の跡を見つめるタマの横顔は物憂げだった。

「そいで、春彦と一緒にいたのが桃姫(ももひめ)。歳は十三くらいか。そいで大和国(やまとのくに)と|陸奥国(むつのくに)紀伊国(きいのくに)出雲国(いずものくに)長門国(ながとのくに)大隅国(おおすみのくに)和泉国(いずみのくに)隠岐国(おきのくに)。それぞれが相棒というか、なんかいつも一緒にいるんだよ。こいつら単体ではなんとかなるが、ペアになると厄介だ。一人ひとりであれば俺もまとめて相手にできるが、二人一組になった途端強さが累乗で上がっていく。そんで完全体になったらもうダメ。相手にならん」

少し複雑そうな表情でタマが拗ねたような喋り方をした。

「まあ、スサノオはそれを一人で倒したんだけどな」

「スサノの尊というのは凄まじいのだな」

「俺が出会った中では最強だ。まあ、人間の中には強いのはたくさんいたさ。」

「話は逸れたが、こいつらの強さは本物だ。こいつらが武器を手に取ったら、一閃で一国がまず滅ぶ」

「一閃・・・?」

「ちなみに一国ってのは当時の日本の国の割り振りだから、何っつったっけ…ああ、『令制国』だ。この辺だと陸奥国。大まかに言うと、青森県から福島県辺りを指すな。これを一国とする。まあ、一国には差があるから一概には言えないんだけど。だからな、昔からこいつらと戦うときには得物を振らせちゃダメなんだ。振ったら最後、国が滅ぶ。まあ、こいつらもそれを知ってるから基本得物を手に取る機会は滅多にない。大抵が肉弾戦になる」

高橋は想像以上の手練を相手にすると思うと武者震いがした。そんな高橋の緊張を読み取ってか、タマは言った。

「大丈夫だ、今の高橋ならあいつら相手でも十分にやりあえるさ。だから俺はお前を相棒に選んだんだぜ、心配すんな」

高橋は不安だった。先刻の戦いでは腕を一本失ったのだ。そんな相手と互角に張り合える保証は正直どこにもなかった。

そういった心境の高橋に対して、タマはこう思っていた。目覚めてから出会った高橋の身体は以前と違うことに気づいていた。恐らくこれはと思い、高橋を相棒に選んだのだ。高橋なら自分の助けになると確信があった。

すると二人は妙な気配を感じ、青葉城跡に視線を向けた。

「どうやらおしゃべりはここまでのようだ」

全身の毛が逆立つのを感じた。

「へっ。殺気をバシバシ飛ばしてくる。奴さんやる気だぜ」

高橋も隣で戦闘態勢に入る。

「一般人はどうする?」

「いんや、たぶん俺達のスピードにゃ気づかない。けど、こんな街中で暴れたら流石にどっかに傷が残る。」

「どうする?」

タマは空を見上げた。

「上で仕留める」

「何だと?」

次の瞬間何か気配のようなものが飛んできた。タマは二本の指でその何かを止めた。瞬間、タマの周囲が物凄い風圧で揺れた。

「にゃははははは」

余裕そうなタマは飛んできた気配の先に目線を送った。

「高橋、合図したら上に飛べ。俺があいつを上まで連れて行く」

高橋は構えた。

「行くぞ」

次の瞬間タマはもういいなかった。

高橋は全力で上空に飛んだ。

次の瞬間、タマが何者かを捕らえて飛んできた。

「高橋、逃がすなよ」

タマは捕まえてきた相手を高橋に向かって放り投げた。高橋は相手の背後から受け止めガードに入った。タマは何か攻撃を打ち込んでくる。その間0.5秒。タマが攻撃を放った。


百鬼百式(ひゃっきひゃくしき)打拳(だっけん)


一撃だった。


高橋はあまりの衝撃に気を失いかけた。相手を挟んでの打撃だったが、凄まじい威力で自分の身体の中心を何かで突かれたようだった。全身から冷汗が噴き出るのを感じた。


タマが放った一撃は確実に相手を仕留めたようだ。相手の力が抜け、気を失っているのを感じた。気づくとかなり高いところまで飛ばされている。そのまま落下に身を任せた。落下の間に息を整えた。高橋は周囲の木を蹴りながら減速し無事に着地をした。後からタマも木を伝ってスルスルと降りてきた。

「生きてるか、高橋。悪いな、ちょっと加減が分からなかった」

飄々と聞いてくるタマに「勘弁してくれ」とだけ言って、改めて腕の中の刺客を見た。黒いスーツにカラスの面を着けている。面のせいで性別は分からないが、骨格的に女性だろうと思った。どうやらタマの一撃を刀の鞘で受けたらしく、鞘が粉砕されて刀身とかろうじて繋がっていた。

「俺の一撃でもとの形を残してるなんて、余っ程の業物だな」

「タマ、この面」

高橋は以前のタマと政の会話から予想は着いた。

「八咫烏か」

「しかし一体なぜ…?」

タマは手を顎の辺りに当て少し考えた。

「取り敢えずこいつから聞こう。高橋、結界内に一度引くぞ。さっきからこっちを伺っている奴らの視線も気になるしな」

タマは気配の先に視線を送り牽制してから結界内に退避した。


「逃げられましたね」

タマと高橋の様子を伺っていた人物は少し想定外といった様子でボヤいた。

「参りましたね、味方を奪われてしまいました。いったん報告ですね」

5キロは離れていたが、まさか気配を察知されているとは思わなかった。情報とはどうやら誤差があるようだ。本部に戻って報告をしなければ。

「邪魔はいけないな」

タマと高橋の様子を伺っていた人物はいつの間にか背後を取られていることに思考が停止した。

「やれやれ、情報に誤差がありすぎです」

両手を上に上げて降参のポーズを取る。

「あの二人の邪魔をしないでいただきたい」

声の主は女か。落ち着いていてまだ20代くらいだろうと推測した。

「私が来たのはあなた方への宣戦布告です。二人の邪魔をするなら容赦はしないでいいと、ボスから仰せつかっていますので」

「あなたのボスが誰かは知りませんが、誰を相手にしているかお分かりですか?」

「この国」

「ふふ、どうやら無知ではないようだ。ならもうこう言うことはやめた方がいい。」

次の瞬間、背中から撃ち抜かれた。冷汗が噴き出て咄嗟に後ろを振り返るともうすでに誰もいなかった。自分の身体を調べると特に傷はなかった。殺気だけで…?

「千年さん、情報を洗い直したほうがよさそうです」

空を見上げてため息をついた。

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