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佐々木の冒険  作者: 芋猫
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八体の神

「八岐の大蛇だって・・・?!」

苗子は息を呑んだ。その場にいたもの全員がぽかんとした表情をしている。

「古くは古事記、日本書紀に登場する伝説上の神。スサノオミコトに退治されたと言われている。」

「神様…」

こまちが呟いた。

「ああ。あいつはもともとは土地の守り神だった。そいつがある日を境におかしくなっていった。村から生贄を取るようになり、だんだんと力を増し、邪悪なものへと変わっていった。気づいた時にはもう手遅れだった。その時にはもうあいつを葬る選択肢しか残ってなかった。スサノオミコトはあいつを斬り刻んだ後に日本各地にその首を封印した」

「それは一か所じゃ駄目だったのか?」

高橋が当然の質問をした。

「場所がなかったんだよ。何せ退治したときには山を八つも越えるほどの大きさだ。まあ、運ぶのも大変だったがな」

「なるほど。」

「確か伝説だと尻尾から太刀が出てきたって話だけど、それって本当なの?」

そこで初めて祐未が口を開いた。

「詳しいな。その通りだ」

祐未は少し照れて笑った。

「へへ、ちょうど学校で古事記読んでる友だちがいてさ。教えてもらったんだ」

「まあ、そういうわけで俺はこれから奴が復活するのを阻止しに行く」

「阻止って、もうオロチが覚醒した時点でアウトなんじゃないのかい?」

苗子が質問した。

「恐らくまだ全員じゃない」

「全員じゃない?」

「ああ、さっき言ったろ?各地に封印されたって。恐らく今現在目覚めているのがこの山の神社に封印されてたやつだろうな。俺とばあさんたちが60年前に闘ったのも、佐々木の中に入り込んだのも恐らくこいつだ。封印が解ける前に実体が俺たちの前に現れたのは、恐らく…。そして復活って言ってたのは、あいつが佐々木に入り込んだのを見てそう判断したんだと思う。今まで封印されていた奴が久しぶりに目覚めたぐらいじゃ精霊の中に入るのは無理だからな。封印が解かれでもしない限りそれだけの力は使えない。でもそれには誰かが封印を解かないと無理な話なんだが・・・。」

そこで祐未が恐る恐る口を開いた。

「おばあちゃん、もしかしてそれって・・・」

「キキじゃないのかい、政!」

「キキ・・・?」

タマはその名前を聞いて一瞬言葉を失いかけたが、血相を変えて政に詰め寄った。

「おい、今キキって言ったか?!キキに会ったのか?」

あまりの剣幕にタマに直接問いただされたわけでもない祐未の方がタジタジしてしまった。

「キキと知り合いなのかい?」

「・・・っ、ずっと探してたんだよ・・・だって、あいつは俺が守ってやれなかった・・・」

タマはそこで俯いて黙ってしまった。

政はそんなタマを見て溜息を着いた。

「キキに会ったのは確かにあの神社がある辺り、そのときはひどい怪我で山の中で倒れていたよ。あたしが拾って家で手当をしたのさ。その時は記憶もなくなっていてね。恐らくあの怪我を負ったときに何らかの精神的ショックが与えられたんだろうね。だけどその3日後かね、オロチが襲撃してきた日さ。急に記憶が戻ったと言い始めてね。そしたら、あんたらが助けを呼ぶ合図が聞こえたもんでね。こっちも祐未が行方不明でえらく取り乱していたから、もう何が何やらさ」

政が説明をした。

「『タマは私が守る』、キキは確かにそう言ってたよ」

祐未がタマに向かって力強く言った。

「タマは私が守るって、傷ついたタマを本当に大事そうに抱えてた。きっとキキにとってタマさんはとっても大切な人だったんだね」

祐未の言葉にタマは気づくと涙をこぼしていた。

「何があったか知らないけどね、あの子に感謝しないとだね」

苗子が涙を流すタマを見てきまり悪そうに言った。

「キキがオロチに乗っ取られた佐々木くんの身体から何かを取り出して、君の身体に入れていたんだがあれは一体なんだ?」

高橋がタマへ尋ねた。

「ああ、なるほどな。この姿になれたわけだ」

タマが鼻をすすって答えた。

「妖玉だ。俺達の妖力の源さ。10年くらい前に鬼と闘った後に何者かに妖玉を奪われちまった。それ以来ずっと獣の姿から変われなくてよ。オロチのクソ野郎に持っていかれていたのか」

タマがホッとしたような息をついて言った。

「元気にしてたんだな、キキ」

タマはベッドから立ち上がった。

「高橋、そんなわけですまないがしばらく付き合ってくれ。ばあさん、こまちを頼めるかい?」

苗子はふうと息を吐いた。

「まかしときな。事態は深刻なんだろうからね。何が来ても追っ払ってやるよ」

「頼もしいな」

「あの、私もこまちちゃんと一緒にいていい?」

祐未が政に尋ねた。

「私もなにかの役に立ちたい」

政は苗子の顔を窺った。

「いいよ、どうせあんたも行かなきゃ行けないんだろ?」

苗子はなんてことのないように答えた。政も黙って頷いた。

「世話になる」

「よし、じゃあ決まりだな。早速支度だ」

「タマ、お前身体は大丈夫なのか?」

高橋が心配して尋ねた。

「ああ。時間もない。政のばあさん、確かあの神社に眠ってたのは・・・」

「春彦だね」

「厄介なのが一番に出てきたな。久しぶりに全力でブチかますぜ」

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