こまち
こまちは小さい時から周囲と馴染めなかった。みんなと違う―そんな違和感を抱えたまま生きてきた。高坂小学校 4年3組 出席番号2番秋山こまちといえば有名である。一番は見た目だ。髪は真っ白で、肌も透き通ったように白く、艶がある。そして何より顔立ちが整っており、とても目立つのだ。
学校は全然楽しくない。友だちもいない。クラスではまるで腫れ物でも触るかのような扱いをされる。いじめられているわけではない。みんな、なぜかこまちからは一歩距離を置いている。関わり方がわからないのだろう。ただ、こまちはみんなと一緒におしゃべりしたり、自由帳に絵を描いたり、放課後は一緒に遊んだり、学校が休みの日に約束をして、そんな普通の事がしたかった。
そんなこまちの唯一の友だちといえば野良猫のタマだ。こまちとちゃんと喋ってくれる家族以外のたった一人の理解者だ。
「俺が人間だったらな」
タマの口癖だ。
「タマが人間だったらな」
こまちはよくそう答えた。
そんなある日、いつも通り下校しているとタマの姿を見つけた。
「…だから置いていかないで!」
誰かが叫んでいる。
誰に向けて叫んでいるのか。声の主は子どもだった。半袖のTシャツに短パン、髪の毛は真っ白で、肌の色も透き通ったように白く艶がある。顔立ちもとっても綺麗だった。男の子だ。
その姿を見つけた時、こまちの胸の中で何かが動いた気がした。懐かしいような切ないような、うまく言葉で説明出来ないけれど、何かが、こまちの日常が変わるような予感のような感覚がした。
「タマ!」
こまちは叫んでいた。