第六十一話 作戦会議
イソギンチャクはオヤジや魚を食べるのか。
それなら私がもっと美味しい物を食べさせてあげよう。
集会場に、いつもの6人と私で集まった。
団長さんの指示で、街の方は退席して頂いた。
美味しい料理にみんなが舌鼓を打っているが、私は食欲がない。
さっき一緒に海辺でわん太が作ったカニ地獄を見たはずの団長さんとコージさんも、平気でお酒を飲みながら魚も貝も、そしてカニも食べている。
おそらく美味しいのだろうけど私は遠慮しておく。
お酒を飲みながら団長さんが力説している。
「わん太がさ、ちっこいカニはほとんど倒しちゃったんだけど、中ぐらいのもたくさんいてさ、大きいのも数匹。そんでもっとバカでっかいのが一匹いてさ、そいつは背中にイソギンチャク背負ってて、ハサミでコージのバットを挟んで折っちゃうし、オヤジはイソギンチャクの毒にやられちゃうし。強くて困ってるんだよ」
「………………」
ガツガツガツガツ!! グビグビグビグビ!!
団長さんが必死で喋っているのに誰一人聞いていない。
みんな魚とお酒に夢中だ。
「お前達ちゃんと聞いてくれよ!! あのゴリラみたいなオヤジまで死にかけてるんだよ。俺達がやっつける以外無いんだよ!!」
あぁ。団長さんもやっぱりゴリラに似ているって思っていたんだ。
「でも団長、具体的にどうするんですか? コージさんもわん太も勝てなかったらどっかで銃でも借りて来るしかないですよ?」
「アーボ!! お前が手品でパパっと消せばいいんだよ!! その位出来るだろ!!」
「わかりました!! 物を消す手品ですね。ちょっとやってみます」
あんな大きなカニをパパっと消せるのなら王都の騎士団長になれるかも知れない。
アーボさんがどこからか、大きなハンカチを取り出した。
出来るのかな?
「カニじゃないけど。この大きな大きなエビにハンカチをかぶせて、わん太の顔の前に持っていって。ワンタッターワンタッターと呪文を唱えると……ほら消えた!!」
「わん太が食っちゃっただけじゃないか!!」
バリバリと殻ごとわん太が食べてしまった。ヨッシーさんだけ一人でゲラゲラ大爆笑している。
他のみんなは見向きもしない。
あの手品は私でも出来る。
「ねぇわん太? もう一度あのカニと戦っても勝てそうにない?」
「たぶん無理だゾ。せめて花がいなければわかんないけど。あの花の毒はやっかいだゾ。飛ばしてくる毒だけじゃなく、あの花自体からも同じ毒の臭いがするから、触れると動けなくなると思うんだゾ」
ありゃ。一度花にやられちゃったから戦意喪失か。
犬のくせにだらしない。
爆笑しているヨッシーさんは基本素手だし、流石に分が悪いだろう。
イソギンチャクさえいなくなれば、カニだけだったらわん太がもう一度やる気だすかも知れない。
「団長さん、いい案とか思いついた?」
「うーん。どうしよう?」
今回は流石に困っているようだ。
「ねぇ。あのイソギンチャクはオヤジを食べようとしたんだよね?」
「うん。わん太がオヤジを助けなかったらたぶん食われてたと思うよ」
「えっとね。私いい物持っているんだ。わん太バッグ貸して」
わん太の首輪からバッグを受け取り、中からわん太を苦しめた唐辛子をお箸で取り出す。
「これ、素手で触ったらダメみたい。めちゃくちゃ辛い唐辛子」
わん太の抜け毛を埋めた畑で取れた激辛唐辛子。
「あぁ。前に言ってた透明な亀を吐き出した時の唐辛子だよね。なるほど!! これをアーボに食わせてからアーボをイソギンチャクに食わせれば!!」
「いやいや団長!! 俺が唐辛子食った時点で俺が死ぬし、死ななくてもイソギンチャクに食われたら俺死ぬでしょ!!」
「尊い犠牲だ。お前の事はみんな忘れないよ。えっと、えっと? 名前なんだったっけ?」
「既に忘れかけているじゃないですか!!」
団長さんも私の言いたい事がわかってくれたようだ。
普通に考えたら唐辛子食べた位で魔物が死ぬとは思えないけど、この唐辛子は食いしん坊のわん太を悶絶させてしまう程の激辛だ。下手な毒より強いだろう。
死ななくても、カニから離れてイソギンチャクだけ海に飛び込んでくれれば儲けものだ。
黙ってモクモクと食べ飲みしていたコージさんが口を開いた。




