第五十九話 イソギンチャク付き!!
団長さんが、コージさんと見に行くらしい。
一緒にオヤジも行くのか。
花ってどんなのだろ? わん太がめちゃくちゃ暴れていたみたいだし。
どんなことしていたのかも気になるなぁ。
「みんなが行くなら私も行きたい」
「え? オヤジはいいけど。アヤも来るの? 危ないよ?」
「わん太に乗って行くから大丈夫」
もうわん太の怪我も治っているし、血も洗った。見に行くだけだから大丈夫なはず。
漁師達は、カニの来ない所で待機しているようだ。
団長の武器はいつもの杖。刀の入った仕込み杖だと思う。
そしてコージさんはバットを持っている。
「コージさん、今回はバットで戦うの?」
「見に行くだけとは言え、一応ね。俺は昔から野球していたから、下手な武器より手になじんでいるんだ。ボールやナイフを投げたりバットを振るのは得意だよ」
確かにサーカスでもナイフ投げと、わん太のエサを投げるのはめちゃくちゃ上手い。
野球が関係あるのはわかるけど。
野球をやっていたから武器がバットなのか。そういう物なのかな。
オヤジはでっかい三つ又の槍みたいな変な武器を持っている。
「オヤジの武器は槍?」
「槍じゃない。銛って言うんだよ。小型の魔物なら一発なんだけどな。あのデカい奴に一発喰らわせようとした事があるが弾かれた。甲羅が硬すぎてこれでも倒せないんだ」
なるほど。海の武器なのかな。
見るからに太くて重くて痛そうだ。
でもこれで倒せないのならどうすればいいんだろ?
わん太に乗って海まで歩いてもらう。
朝の元気はもう無いけど、特に嫌がる様子も無い。
海に近づくと、異様な臭いがしてきた。
生臭いと言うか、なんか変な臭い。
「うわあぁあ!!! なんだこりゃ!!!」
オヤジが悲鳴をあげる。
海に着くと、一面のカニの死骸。数百匹はいる。
わん太が風の魔法で砂も巻き上げたからなのか、地面がえぐれたり盛り上がったり。
カニの魔物の上にカニの魔物が覆いかぶさって山になっている。
わん太も相当暴れたみたいだ。
私が背中に乗っていないから、思う存分暴れたんだと思う。
カニの魔物の死骸を食べる為に、普通のカニが群がっていて地獄絵図になっていた。
「な……なんだこりゃ!! オ……オオカミがやったのか?」
「わん太がやったんだと思う」
オヤジが顔面蒼白になっている。
わん太が倒したカニがショックだったらしい。
日焼けして真っ黒な顔が青白くなっている。白くなったり、黒くなったりと忙しい顔だ。
「な……なぁ。アヤ……さんがいればわん太さんは大丈夫だよな? 暴れたりしないよな?」
犬にさん付けになっている。私もさん付け。生まれて初めてアヤさんって呼ばれたかも知れない。
「わかんない」
オヤジは完全にビビって震えている。
わん太は疲れているのか眠そうにしている。
魔物を目の前にしたらまた暴走するかも知れないので、一応背中からは降りておく。
私を乗せたままでのカニとバトルは嫌すぎる。
「来たんだゾ」
わん太が風で魔物を察知し、小声で教えてくれた。
コージさん達も見つけたらしい。
「団長、酒の肴が来ましたよ」
「美味そうだな。カニ味噌で一杯やるか」
一匹の巨大なカニが出てきた。
かなり大きい。
巨大なカニは甲羅だけでもヨッシーさんよりも大きく、ハサミとか足を入れたらわん太よりも大きい。
「普通のカニと同じ構造ならバットでも殺せると思うんですけど。とりあえず行きますね」
コージさんが飛び出した。
カニも両手を振り回し威嚇してくる。
結構動きも素早くリーチも長い。
コージさんはハサミを搔い潜って間合いに入る。
バットを振り回し、的確にハサミの付け根をぶん殴る!!
バキッ!! ハサミがちぎれてカニの手が落ちてしまった。
簡単に二本共ハサミを叩き落した後、目と目の間を叩き潰す。
甲羅を割られたカニは泡を吹いてひっくり返ってしまった。
倒した後、すぐに戻ってくる。
「団長、あのサイズは行けます。もっとデカいのが来たらわかりません」
「もうちょっとデカいのが来ても大丈夫だと思うよ。どの位デカくなるのかわかんないけどさ」
オヤジは銛を持ったまま呆然としている。
「あんたらやっぱ半端ねーな。俺達が数人がかりで命をかけて倒している魔物を、初見であっさりと倒しやがる」
コージさんが倒したからなのか、海の中からカニがワラワラと出てきた。
ワラワラワラワラ……たくさん出て来る。
わん太が相当倒したはずだけどまだまだ100匹くらいいると思う
めちゃめちゃ気持ちが悪い。
全部大きいサイズだ。小型のカニはわん太が全部倒してしまったのかも知れない。
ウジャウジャと海から上がってきたカニ達は、ジャキンジャキンとハサミを打ち鳴らし威嚇してくる!!
ザバーン!!
海からひと際巨大なカニが姿を現した!!
オヤジが叫んだ!!
「団長!! あいつだ!! イソギンチャク付きだ!!」




