第五十二話 海産物を食べに行くらしい
まさか……… 本当に野盗が襲ってくるとは思わなかった。
そして、象を放して暴れさせて野盗を蹴散らすとも思わなかった。
リーダー格の男を団長さんが捕まえて、全てを白状させた事で、仲間達も全員捕まったらしい。
周辺の街の貴族や商人からサーカスにお礼の食べ物や金銭等がたくさん届いている。
「アヤちゃんが俺とヨッシーさんに教えてくれたから素早く動けたよ。向こうに先手を取られていたらヤバかったかも知れない」
コージさんが褒めてくれる。
わん太が気づいたから伝えただけなんだけど。褒められたのは嬉しいので喜んでおく。
「近隣の街からお礼にお金と食べ物がいっぱい届いているよ。こんなに食べられないし荷物になるから。みんなで荷物減らすために頑張って食べるんだよ」
団長さんの言う通り、いろいろな食べ物を山ほど頂いた。
わん太が食べ物を減らそうと片っ端から頑張って食べている。
私は美味しそうな物だけ選んで食べる。
「またまた団長の悪名が高まりましたね」
「だからなんで悪名なんだよ。名声じゃないか!! 俺達は正義の味方だよ!!」
コージさんと団長がふざけ合っている。
「はぁ……うちの団長達は困っている人とか見たら放っておかないからなぁ。結構こう言う事も多いんだよ」
ため息をつくアーボさん。
「こう言う事って、今回みたいに襲われなくてもこっちから助けに行くの?」
「行く行く。団長とコージさんヨッシーさんは腕も立つし根性も座っているからいいけど。俺みたいな普通の人間だと怖くてしょうがないよ」
「みんな喜んでいるし、美味しい食べ物たくさんもらえたから嬉しいよ」
「どこの街でもうちを歓迎してくれるのは、歴代の団員がみんなあちこちで頑張って人助けして、信用を築いてきたからなんだって」
確かにどこの街でも、うちのサーカスを歓迎してくれるけど。サーカスが楽しいだけじゃなくてそういう歴史があったんだ。
団長さん達の前の人達の話かな。ずーっと強くて親切な人達がやってきたサーカス。
私とわん太の時も、私が助けてって言わなくても団長さんから魔物を確認してくれたなぁ。みんな本当に優しい人なのだろう。
その後もいくつかの街を回りながらサーカスを続ける。
とある街での公演が終わり、いつものように反省会と言う名の飲み会が始まる。
「次はナオの大好きなバンブーの街だよ」
「そうですよ!! 楽しみですね!! 団長、早く行きましょう!!」
ナオさんが喜んでいる。
「ナオさん、バンブーの街って何があるの?」
「海辺にある街で、海産物がめちゃくちゃ美味しいの!! 新鮮な魚介類のお刺身や焼き物煮物揚げ物を食べながらのお酒がたまらない!! 生まれてきて良かったって思える美味しさよ!!」
「ナオは海産物とお酒が大好物だから。バンブー海岸に住みたいとか言っている位だからね」
「強い日差しと海の匂い!! サザエのつぼ焼きとか、思い出すだけで幸せになれますよ。旅の中で一番楽しみな街ですからね!!」
「海って広い池みたいなの?」
「全然違うよ!! 一面に広がるエメラルドグリーンの海!! 見ているだけでも絶景なの!!」
ナオさんは目を輝かせて喜んでいる。
日差しが強いのかな? 海の匂いってどんなのだろう? エメラルドグリーン?
行ったことないし、海の魚も食べた事も無い。川の魚と違うのかな。
「エメラルドグリーンって?」
「私がいつも着けている緑色のブローチあるでしょ? あの宝石がエメラルドって言うの。エメラルドの宝石の様に美しい海なの!!」
あの緑の宝石はエメラルドって言うんだ。
エメラルドグリーンの海か。池も藻とかでグリーンと言えばグリーンだけど違うのかな?
「わん太海行ったことある?」
「無いんだゾ。ジーちゃんから話は聞いた事あるんだゾ。塩辛い水があるんだゾ!!」
「私も行った事無い。見た事も無い」
「俺も早く行きたいんだゾ!! そして海の中を泳ぎまくってみるんだゾ!!」
あら。興味は食べ物じゃないのかな?
わん太は泳げるし、水の上も走れるから、なんなら海の上も走っちゃったりするのかも知れない。
絵や絵本でしか海を見た事がないけど、私は泳ぐのは怖いので美味しい物だけ食べたらそれでいいかな。
「食べ物が美味しいからね。魚以外もエビとかカニとかタコとか貝とかたくさんあるんだよ。俺が料理するからアヤちゃん達もたくさん食べるんだよ」
団長さんは料理が上手なので、美味しい物を作ってくれるはず。楽しみだ。
「俺は獲物は自分で捕まえて来るゾ!! 泳ぎまくるんだゾ!!」
わん太が張り切っている。元々自分で狩りをして食べていたのに、ここではご飯がどんどん出てくるので。最近はめっきり狩りとかしてないから運動不足なのかも知れない。
ニコニコ笑顔のナオさんが話しかけて来る。
「わん太は泳げるの? でも海の中でクジラとかいたらわん太が食べられちゃうかも知れないよ?」
クジラ。絵本の中では見た事がある。大きな魚。
「わん太めっちゃ泳ぐよ。潜って魚捕まえてきた事あるし。水の上も走るよ。ナオさんはクジラ見た事あるの?」
「私も見た事は無いけど、海にはほんとにいるんだよ。象より何倍も大きいらしいの」
「象よりデカいのは怖いんだゾ!! ちゃんと仲良くなるんだゾ!!」
象より大きな魚か。仲良くなれるのかな? 戦ったらたぶんわん太でも勝てないだろう。
しかし本当にそんな生き物がいるのだろうか?
象でもとんでもなく大きいのに、しかもそんな大きい魚が泳ぐなんて信じられない。
たぶん絵本の中に出てきたドラゴンとかと同じような生き物だと思う。
ドラゴンも地球のどこかに本当にいたって本には書いていたけど、実際に見た人なんかいないんだから。今でもいるって言う話もあるけど、どこにいるかなんてわからない。
化石があるからいるにはいたんだろうけど。
昔々の。ただのおとぎ話の世界の話。




