第四十九話 次の街へ向かう
ラークスパーでの公演を終え、次の街へと旅立つ事になった。
ケイトさん達に見送られ、いつかまた来ることを約束した。
子爵様も見送りに来てくれた。サーカスに入った経緯も私のおじいさんの事も、誰にも一切詮索されなかった。
後でわかった事だが、団長さんが裏で手を回してくれたらしい。
街で起こした暴風騒ぎで、わん太と私自身も少し神格化されているのもある。
そして、KKKの団長さん達は子爵様達にもそれなりに発言できるような立場だと言う事を後々知る事になるが、それはまた後の話だ。
私とわん太もサーカスに入れてもらい、一緒に旅をさせてもらっている。
ずっと孤児院で過ごしていた私に取って、新鮮で、楽しい日々が待っていた。
大きな村や街へ移動し、数日間の公演を行う。サーカスは大人気で、どこへ行っても歓迎される。
私自身の事もあっと言う間に名前が広まり、「オオカミ使いだ!!」と握手を求めにみんなが来てくれる。異常に大きいけれど、愛くるしい子犬のような姿のわん太も大人気だ。
街中で買い物をしたり散歩している時、わん太に乗っていなくても、顔のアザでバレてしまい「オオカミ使いだ!!」等と声をかけられる。
私の事を「呪われたガキ」等と呼ぶ者がいなくなった。
だけど、「オオカミ使い」と呼ばれるのも微妙な気持ちだ。
ヨッシーさんの怪我もすっかり治って、パワフルな筋肉サーカスを見せてくれている。
女性を担いだままでの綱渡りはもちろん、象にお腹を踏まれたり、肩にライオンを担いで走り回ったりと大変だ。
アユさんは、サーカスの合間に無料で占いを行っているらしい。
ただの趣味で占いをやっているだけらしいが、ひっきりなしにお客さんが入ってくる。
男性のお客さんが多いのが気になる。アユさん美人だからなぁ。
無料って言ってるのにチップがどんどん入っていく。
占いは当たるのだろうか?
街から街へ旅する中、行く先々で、団長さん達がいろいろと探ってくれてはいるけど、有力な情報は無い。
体内から出てくる黒い魔物と、死なない魔物の情報。
黒い魔物の実物を見せるわけにもいかないので、具体的な説明の出来ない事の情報を探るのはやはり難しいのだろう。
ただ、石の亀の事は少しわかった。
そういう魔物がいるらしい。捕まえたりした人はいないけど、透明で強固な甲羅ととてつもない生命力を持ち、水を操る亀の魔物がいると言う。ただ、わん太の黒い魔物との関係はわからない。
バッグの中に入れてある亀はもう死んじゃっているので、水を操れたのかはわからないけど、たぶんその亀なのだろうと思う。
呪われた森に関しては、団長さん達も多少は知っていた。
世界の半分以上を覆っている、世界の8割、9割を覆っていると言う説もある。
正確な事は誰にもわからない。
呪われた森に入った動物は病んでしまい、まともな姿ではいられない。
植物は生命力が強いのか、異形の植物になり、腐敗したまま成長するらしい。
当然人間も中には入れないので、何故そんな森が生まれたのか、中がどうなっているのか全くわからない。
わん太は呪われた森を通り抜けてきたんだし、その中で果物か何かを食べたって言っていた。
普通の犬が入ったら死んじゃうんだろうけどわん太は生き延びた。
わん太は犬の魔物なのかな? 悪い魔物じゃ無いと思うけど。
そもそも魔物って何だろう? 動物と魔物の違いって何なのかな?
よくわからないけど、わん太は魔物だから耐えられたのかも知れない。
森の中の事、そこで何を食べたのか等を知りたいのなら、わん太自身が中に入って探れば何かわかるのかも知れないが。森の中でトラブルがあって閉じ込められた場合、わん太から黒い魔物が出てきてしまう。
私が一緒に入るとたぶん私は病気になったり死んでしまったりする。
八方ふさがりだ。別のルートから森の中を知る方法を探すしかない。
サーカスはわん太にとって適職だったようだ。わん太が簡単にこなしてしまう事でも、お客さんは大喜びだった。私は背中の上に乗っているだけで指示とかも何もしないんだけど、団長さんが「オオカミ使いの少女が手足のようにオオカミを操る」ってアピールしてくれるので、お客さんも私がオオカミを操っていると思ってくれている。
わん太も頑張ってはいるし、みんなに言われたことを聞く努力はしてくれているんだけど。
どうしても「危ない!!」 と思われる事をしてしまう事が多々ある。
しかし逆に私達が過激な演技に慣れてしまい、綱から飛び降りようが、燃えている火の輪の上に乗っかろうが、だんだんどうでも良くなってきた。
わん太にとって、大した事のない普通の事なのだろう。
火の輪の上でわん太の身体が炙られても、火傷どころかわん太の毛すら燃えないって言う事もみんなに伝わったと思う。




