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第四十六話 グルメな犬

 ご飯を食べながら、わん太とアユさんが会話している。


「今から買いに行きますけど。演技の時にわん太が食べたい物ってなんですか?」

「美味しいのがいいんだゾ。リンゴは丸ごとでいいけど、みかんだったら皮は剥いて欲しいゾ。果物じゃなくても餅とか饅頭とかせんべいとかケーキとかの山や森で獲れない物が食べたいんだゾ!!」


 サーカスの趣旨を理解せず、自分が食べたい物をあげているだけだ。

 みかんの皮は剥いてほしいとか、犬なのにちょっとだけグルメだ。


「お餅とお饅頭は大丈夫ですけど、おせんべいとかケーキは軽いし崩れるからたぶん投げられませんよ」

「あんたが食べたい物じゃ無くて、コージさんが投げられてあんたが取れる物よ。私はリンゴって言ったけど別にアーボさんが使っているお手玉みたいなボールやリングでもいいんだから」

「魚は骨があるから飲み込むのに時間がかかるゾ。柔らかい物がいいゾ!!」


 ダメだ。聞いてない。魚なんて投げるのはコージさんも嫌がるだろう。

「とりあえず今日は無難にリンゴにしましょうか。美味しそうなのを買ってきますね」

「たくさん食べるんだゾ!!」

「わかりました。いっぱい買ってきますからね」

 急いで食べ終わったアユさんがリンゴを買いに行ってくれた。


 わん太は私達と同じご飯も食べながらライオンのエサも象のエサも食べている。

 人間のご飯も生肉も生野菜も。好き嫌いの無い健康的な犬だ。

「今食べすぎたらサーカスで食べるのが苦しくなっちゃうよ。大丈夫?」

「ちょっと少なめにしておくゾ。リンゴ100個は食べたいゾ」

「5個位じゃない?そんな何回も投げないよ」

 コージさんも100回も投げたくないだろう。


 ご飯を食べ終わると、ヨッシーさんが近づいてきた。

 黙ったままわん太の頭や首を触ったり、足や腰をグリグリと押したり引っ張ったり。

 口の中をのぞき込んで、最後に頭を撫でてどこかへ歩いて行った。


「ヨッシー怖いんだゾ」

「なんだったんだろうね?」

「ピエロも来たゾ」

 アーボさんも来てくれた。

「わん太の身体に異常がないか見てくれたんじゃないかな。ヨッシーさん動物担当だから病気とか怪我とか見てくれるんだよ。異常はなかったみたいだね」

「大丈夫だゾ」

「ヨッシーさんは自分の怪我は大丈夫なの?」

「あぁ。大丈夫だよ。元々柔道で鍛えているから、筋肉がある割に身体も柔らかいし。怪我も病気もアルコールで身体の中から消毒するから」

「アル中だゾ!!」

「わん太はなかなか難しい言葉を知っているんだね。団長もコージさんも俺もアル中かも知れないね。ナオさんもお酒大好きだよ」


 わん太もお酒飲まされていたなぁ。

 私は飲みたくないな。お茶でいい。


「ヨッシーさんって全然しゃべらないけど、どんな人?」

「お酒飲まないと喋らないけど、優しいし頼りになるよ。団歴で言えば、団長、ヨッシーさん、コージさん、ナオさん、俺、アユさんの順番で二番目に古いよ」


「コージさんより偉いの?」

「役割が違うと言うか、ヨッシーさんはお酒飲まないと喋らないからなぁ。華があって話が上手いコージさんが副団長しているんだ。あんまうちの団は偉いとかの上下関係は無いよ」


「アーボ!! コージもヨッシーも偉くないけど俺は偉いんだよ!!」

 団長さんが来た。魔物の首を一発で切りおとした時は凄かったけど、発言が微妙に残念だ。


「なんだかまぶしいと思ったら団長いたんですか!!」

「本当にお前は失礼な奴だな。お前のせいで苦労してハゲちゃったんだからな!! ハゲを馬鹿にするんじゃないよ!!」


 アーボさんもなかなか毒舌だ。

 あんまりハゲハゲ言うと私も笑いそうになるので言わないで欲しい。

「午後の演目だけど、みんなは午前と同じ。アヤとわん太だけ火の輪じゃなくて綱渡りだよ。ライオン達が火の輪くぐった後、玉乗りで登場して、その後綱渡りだよ。またわん太が暴走した時の為に、アーボは空中ブランコの準備しておくんだよ」

「団長、俺はピエロしか出来ません」

「お前は本当にいつもながら役に立たない奴だな!! みんなご飯はもう食べ終わったのかな? コージが今テントの中で、立ち位置とか投げる場所とかを確認しているから、午後の部が始まる前に練習してから本番だよ」


 テントに移動する。

 テントの中にリンゴが……文字通り山のようにある。


「たくさん買ってきましたよ。頑張ってくださいね」

 アユさんはニコニコしている。荷車満載になるまで買ってきたらしい。

 アユさんはこのサーカスではまともな人に見えたけど、案外そうでもない様だ。


 コージさんがリンゴを片手にウロウロしている。立ち位置や投げるタイミングを考えているのだろう。



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