第四十四話 大ジャーンプ!!
「団長さん!! 本当に大根が切れているけど。大丈夫なの!?」
「晩御飯になるから大丈夫だよ」
違うの!! そんな事を言いたいんじゃないの!!
目隠しをされたナオさんがクルクルと回転させられている。
ドラムの音が鳴り響く。
ドンドンドンドンドンドンドン……
シャーン!! シャーン!! シャーン!! シャーン!! シャーン!!!!!
シンバルの音に合わせて5本のナイフが投げられた!!
刺さったらどうするの?
思わず顔を手で覆ってしまう。
大歓声に目を開けると、ナオさんの顔の両側、両手の下、足の間に5つの赤い布が垂れ下がっている。
きっちり5本、狙った場所に刺さっていて、ナオさんに怪我はないようだ。
「昨日も魔物にだけブスブス刺さっていたんだゾ!!」
「確かにそうだけど、もしもナオさんに刺さっていたらと思うと怖いよ」
「百発百中だゾ!!」
みんなの演技が凄すぎる。
わん太が玉乗りして火の輪くぐっただけで大丈夫かな。
私なんか乗っているだけだし。
でも今から練習するわけにもいかない。
所詮、子供と犬の芸だし許してもらえるかな?
ドンドコドンドコドンドコドンドコ!!
勇ましい音楽に変わり、ライオン達の登場だ!!
ヨッシーさんも出てきた。本人は怪我で演技出来ないけど、ライオンへの指示くらいは出来るのだろう。
火の輪が用意され、ライオン達が次々とくぐり抜けて行く!!
飛ぶライオンも凄いが、戻ってきたライオンを素手で撫でているヨッシーさんも凄いと思う。みんな拍手喝采だ!!
「アヤちゃん出番だよ」
コージさんがボールを押さえてくれる。
「アヤ、行くんだゾ!!」
わん太が器用にボールに乗ったので頭の上に立ち上がって両手を組んで胸を張る!!
「え?? アヤちゃん頭の上に立つの!?」
「大丈夫。わん太なら落とさないよ」
頭の上に立って、みんなをびっくりさせて見せる!!
顔のアザなんて誰も気にしない位凄い演技を見せつける!!
呪われたガキなんて言わせない!!
「わん太。頼んだわよ!!」
「まかせるんだゾ!! みんなをめちゃくちゃびっくりさせるんだゾ!!」
コミカルな音楽に変わり、私達の出番だ。
4本の足で玉乗りしながら舞台へ進むわん太。
玉乗りしながら私達が顔を見せた瞬間大歓声が上がる!!
「すげぇ!! 玉乗りしてるオオカミの頭の上に立っている!!」
「今日はこのオオカミを見に来たのよ!!」
「可愛い!! 本当にオオカミ?」
「女の子が乗ったまま本当に火の輪をくぐれるのか?? 怪我するんじゃないか?」
みんなが私達に注目してくれている!!
コロコロとボールを転がし進むわん太。
いきなり二本足でボールの上に立ち上がった!!
「うわあああ!!! 玉乗りしながらオオカミが二本足で立ち上がったぞ!!」
「頭の上の女の子は腕組んだままだ!! 全くふらつきもしない!!」
「どうなっているんだ? 手品なのか? さっきの象の玉乗りよりもっと凄いぞ!!」
「本当に人間なのか? 人形じゃないのか?」
客席からいろいろな声が上がっている。
流石わん太!! まさか二本足で玉乗りするなんて!!
頭の上に立ってサーカスの人もびっくりさせるつもりだったけど、私もびっくりさせられるとは思わなかった。
小声で囁く。
「わん太、ありがとう」
「もっともっとみんなをびっくりさせるんだゾ!!」
うん。犬まで二本足で立つとか誰も思わなかったはずだよ。
作戦大成功だ!!
わん太が中央の団長さんのところに近づき、横に並んだ。
「さぁ!! 皆さんお待ちかね!! 北極から来たオオカミ使いの少女と巨大な子供のオオカミの登場です!! 誰もが驚く二本足での玉乗り!! そして更に驚くことに少女は頭の上に立っての登場です!!」
わん太が軽やかに玉から飛び降りる。
私はどうすればいいのかよくわからないので、とりあえず頭の上から背中に移り、首輪にしがみつく。
あとは……火の輪をくぐるだけ。
わん太なら簡単にくぐれる。ぴょんって飛ぶだけ。
火の輪なんて別に怖くもなんともない。
大丈夫。絶対大丈夫。
「さぁ!!少女を乗せたままの状態で、オオカミは火の輪をくぐれるのか!?」
ドン!! ドルルルルルルルルルルル……
ドラムロールが始まった。
「キャアアアアアア!!!!」
まただ!! またわん太が暴走しだした!!
象の背中に飛び乗って、そこから綱渡りの綱へ!!
「落ち着けわん太!! アヤちゃん大丈夫か?」
コージさんの声が聞こえるがわん太は止まらない!!
客席から悲鳴が上がる!!
どうするの? 何をするの?? 今日も綱渡りするの?
わん太が私を乗せたまま、綱の上でピョンピョン飛び跳ねてアピールしている!!
「アヤ!! 火の輪をくぐってみんなをびっくりさせるんだゾ!!」
えっ……?
まさか……?
噓でしょ…………?
もうこれ以上は無理!! 絶対に無理!!
「イヤアアアアアアアアアアア!!!!!!」
綱の上から火の輪へ向けて大ジャンプ!!
世界が止まったように感じた。
スローモーションのようにゆっくりと……火の輪を通り抜けた。
その後は……もう何も覚えていない。




