第三十六話 サーカス団との出会い
ヤバい。どう考えてもヤバい。わん太の毛を思い切り引っ張るが、全く気にしていない。
どうしよう?
わん太は客席から巻き起こる大歓声でご満悦だ。
「ここでみなさまにご報告です!! 我がサーカス団に新しい家族が増えました!!」
唐突に禿げたおじさんが話し出した。
「北極からはるばるやって来ました!! 巨大な子供のオオカミとオオカミ使いの少女!!」
「ウオオオオオオ!!! ワアアアアアア!!!」
更に盛り上がる観客達!!
「わん太。本当に早く戻って」
「俺にもサーカス出来るんだゾ!! 頑張ったんだゾ!!」
「いいから早く!!!!!」
どうしよう。とりあえず謝らないと。
ピョンピョンっとコージさんが軽やかに象に飛び乗ってきた。
「アヤちゃん、怪我は無い?」
「ごめんなさい。大丈夫。わん太が興奮して勝手に飛び出しちゃったの」
「そうなんだ。大丈夫だったらちょっとだけこっちに来て挨拶してもらっていいかな?」
わん太が象から降りた。ステージの真ん中にいる団長さんの元へ誘導される。
「ちょっと興奮してフライングしてしまいましたが!! 我がKKKの切り札!! 北極からはるばる来てくれた、子供のオオカミと、オオカミ使いの少女です!! みなさん拍手を!!」
わん太の背中の上で大歓声に包まれる。
もう頭の中が真っ白で何も考えられない。
「アヤちゃん、わん太の上でお辞儀できる?」
なんとかこの場を収める為に、わん太の背中に立ち、お辞儀する。
パチパチパチ!! みんなで大拍手してくれている。
「いやいやいや。危ないから立たなくていいよ!!」
コージさんが焦っている。座ったままで良かったらしい。
もう何も考えられない。身体が動かない。
背中に立ったまま、わん太が裏に戻っていく。
その後もサーカスは続いたが、もう何も覚えていない。
サーカスが終わり、どこかに連れ出された。
わん太もおとなしくついてきた。
気が付いたら倉庫みたいな所にいた。わん太も一緒だ。
わん太は寝ている。反省はしていないらしい。
私もわん太から降りて椅子に座らせてもらう。
コージさんと団長、他にもサーカスの人達がいる。
いい匂いがする。みんなでご飯の準備?
何故ご飯の準備……??
禿げたおじさん、コージさん、空中ブランコのお姉さん、筋肉の人、知らない男性、チケットを購入した受付のお姉さん。6人いる。
近くで見ると全員美男美女揃い。自分の顔のアザが恥ずかしくなる。
ご飯の準備が終わるとみんなが集まってきた。
「ごめんなさい」
開口一番、とりあえず謝罪した。
「わん太がちょっと暴走しちゃっただけだよね。誰も怒ってないから大丈夫だよ」
コージさんは優しく話しかけてくれる。
禿げたおじさんもこっちを見ている。
「そうだな。とりあえず自己紹介だ。私はKKKの団長のシン。団長って呼んでくれ」
禿げたおじさんはやっぱり偉いさん。団長さんらしい。腰の赤いベルトと持っている杖がカッコいい。
しかし謝ったはいいが、もう声が出ない。何を言えばいいのかわからない。
キリンに乗っていたお姉さんはニコニコしている。受付のお姉さんは心配そうな顔をしている。
「アヤちゃん大丈夫だよ。お客様も大喜びだったし、逆にお礼を言いたいくらいだ」
コージさんが優しく話しかけてくれる。
「緊張しているのかな。アヤちゃんだったね。無事に今日の公演も終わったし、問題ないよ。次も出て欲しい位だ」
知らない男性が話しかけてきた。
6人の中でこの人はわからない。この人は誰だろ?
「アーボ、お前が連れてきたんだからな!! 責任取るならお前だ!!」
「そうだそうだ!! なにもかも全部アーボが悪いんだ!!」
みんなから口々に攻め立てられている。
「ちょっちょっと……そうです。俺が悪いんです。アヤちゃん俺が全部悪いんだよ」
みんなに怒られているけど、私達を連れてきたって事は……
「最初に話してくれたピエロの人?」
「そうそう。そうだよ。ピエロの化粧していないからわかんなかったかな?俺はアーボ。サーカス団でピエロやっているんだ。化粧していてもしてなくても、みんなからの扱いはピエロだよ」
「うっせーアーボ。アヤちゃんが困っているだろ。お前が全部悪いんだ」
「とほほ……アヤちゃんヨロシクね」
よくわからないが、私の代わりに怒られてくれている。
「私はナオ。サーカス団員よ。今日は空中ブランコしていたけど、綱渡りも玉乗りもするよ」
キリンに乗ってたお姉さん。凄い美人だ。運動神経抜群だ。
胸元に大きな緑色のブローチが輝いている。
「アユです。チケットの販売とか、事務的な事やっています。趣味で占いもします」
優しそうな受付のお姉さん。ノホホンとしている。
「あそこのムキムキマンはヨッシーだ。基本的には喋らないから放置でいい」
団長さんが紹介してくれた。筋肉の人はヨッシーさん。女性を2人担いで綱渡りしていた人だ。挨拶はしてくれないらしい。
「ヨッシーさんは寡黙だけど悪い人でも怖い人でもないから大丈夫。気にしないで」
一応顔を見てぺこりと頭を下げておく。ヨッシーさんも会釈してくれた。
怒っているわけじゃないらしい。
「この6人がKKK主要メンバーだ。あと楽団と見習いとかで雑用してくれる人が何人かいるけど、今は動物の世話と片付けと明日の準備をしている。アヤちゃんもみんなに自己紹介してくれるかい?」
「私はアヤ。寝ている犬はわん太って言うの」
「凄い犬だよね。北極から来たって団長が嘘ついていたけど、北極どころか地球上どこを探してもこんな犬いないよ」
アーボさんが褒めてくれる。
「団長、公演も終わったし早く飯にしましょう!!」
「そうだな!! 明日に備えて力を蓄えるんだ!! アヤも一緒に食べて行くよね?」
「えっと。食べてもいいの?」
「もちろん!! 今日のMVPだよ!! わん太が食べられるものあるのかな?ライオンのエサならあるけど。それでいいかな?」
「わん太は何でも食べるから。人の食べ物でも生肉でも野菜でも果物でも。ほっといてもどこか山とかでなんか捕まえて食べてくる」
「そうなの?じゃあとりあえずライオンや象のエサだけど。肉も野菜もあるから、それでも食べていてくれるかな?」
私の前にもご飯が並んだ。美味しそうだ。
しかしご飯頂いていいのだろうか?
怒られると思っていたんだけど。私とわん太の代わりにアーボさんだけ怒られた。
自分の置かれた状況がよくわからない。
団長のシンさん、コージさん、アーボさん、ナオさん、アユさん、ヨッシーさんか。
寝ているわん太を起こしてご飯を頂こう。




