第三十五話 わん太暴走
次はどこに行こうかな?
何をすればいいのかな?
買い物をしながら考える。
わん太に出来る事は畑仕事とか力仕事だけだ。
他にもたくさんあるんだろうけど思いつかない。
衛兵さんとか、戦争みたいな危ない事には使ってほしくないしなぁ。
そして私はそもそも何も出来ないし。
顔にアザがあろうがなかろうがこんな子供はどこも雇ってはくれない。
うーん。よく考えたら別に私は働きたいわけじゃないし。
おじいさん達以外に相談できる人もいないし。
どうしようか考えながら歩いていると、広場が賑わっている。
KKKと書かれた旗がたくさん上がっている。
サーカスだ。
下に小さくKid Kicky Keyと書いてある。
意味はわからない。
まだ始まっていないらしい。檻に入れられたままの動物達が外で待機している。
「なんだか見た事の無い動物がいるんだゾ!! 鼻が長いんだゾ!!」
「ゾウだと思うよ。私も本でしか見た事ないよ」
「俺より1000倍デカいんだゾ!! 強そうなんだゾ!!」
「そんなに大きくないでしょ。首の長いのはキリンかな?」
「高いところの果物食べ放題だゾ!! 足も長いゾ!! 強そうなんだゾ!!」
「ライオンもいるわね。わん太食べられちゃうよ」
「怖いんだゾ!! 強そうなんだゾ!!」
強いかどうかと言えば強そうだ。
でも銃で撃たれても平気なわん太の方が強そうだ。
本で読んだ事しかない。初めて見る珍しい動物達。
「サーカスやってるんだって。面白そう」
「サーカスなんだゾ!!」
「あんたサーカスとか興味あるの?」
「あるんだゾ!! 俺も見たいんだゾ!!」
尻尾をフリフリ興奮している。
実際私も見たい。見たいけど。わん太は入れるのかな?
「ねぇ。テントの中では風止めてよ。テント飛んじゃうから」
「大丈夫だゾ!! 飛ばないようにそよそよ風にするんだゾ!!」
大丈夫かな。まぁ風くらい普通でも吹くし、そんな簡単に飛ばないとは思うけど。
チケットを売っている所に行くと、犬を抱えてチケットを購入している人がいる。
午前の部、午後の部の二回公演で、次の公演が午後の部か。
犬も入っていいみたいだし、お金を持って列に並んでみる。可愛らしいお姉さんがチケットを売っている。
「すみません、チケットって子供だけでも買えますか?」
「子供だけでもいいんですけど。その大きな犬は……」
やっぱダメか。まぁそりゃそうだ。わん太は大きすぎる。
ん?そう言えば子爵様から貰ったペンダントがあればどこでも行けるって言っていたし、なんか優遇してくれないかな?
「えっと。このペンダントでなんとかならないかな?」
「え? そのペンダントの紋章は? ちょっと待って下さいね」
慌ててどこかに走って行くお姉さん。
しばらくすると…… ピエロが来た~!!
しかも話しかけてきた。顔に色を塗っているのでどんな顔なのかよくわからない。
「あ。この大きな犬は!! こないだ竜巻の日に子爵様とかと一緒にいた犬だよね? そのペンダントどうしたの?」
「子爵様が私とわん太にってプレゼントしてくれたの」
「あぁ。そうなんだ。子爵様がくれたって事はジャーブル子爵のお客様かな? 普通の客席に犬が入れない訳じゃないんだけど。単純に狭いんだよ。あと大きい犬だと暴れたら他のお客さんに迷惑かかっちゃうからね。子爵様のお客様だったら、犬も一緒に特別に裏側の僕達の待機場所から見せてあげるよ」
おお。子爵様有難う。一応感謝しておく。
「わん太。入れてもらえるって。行こう!!」
テントの裏側に案内してもらう。
頭が禿げていて、杖をついたおじさんとピエロが会話している。
禿げている人はたぶん偉い人だろう。
「大丈夫だって。ここから見られるよ。ライオンとかゾウとかキリンに近づいちゃダメだよ。鎖に繋がっているけど暴れるかも知れないからね。」
外にいた動物たちがいつの間にか中に入れられていた。
しかし人も動物も、みんなでわん太を見ている。わん太の方が珍しいのかも知れない。
派手な服装をした男の人が話しかけてきた。
「子爵様の客人だって? 俺はコージ。KKKの副団長だ。楽しんで行ってくれ!!」
わわわ!! めちゃくちゃ男前!! 子供の私が見てもドキドキする!!
「有難う。私はアヤ。犬はわん太って言うの。KKKって何?」
「Kid Kicky Keyだよ。子供の心の扉を開いてわくわくさせる為の鍵って言う思いを込めて初代の団長がつけたんだ。俺達のサーカスで心の扉を開いて見せるよ!!」
「コージ。出番だよ」
「じゃあアヤちゃん後でね」
あーあ。もっと話したかったのに。禿げたおじさんに呼ばれて行ってしまった。
サーカスが始まるようだ。
裏は狭いので邪魔にならないようにわん太の背中に乗ったままサーカスを見る事にする。
ドラムの音から始まり、音楽が流れる。オーケストラと言うのだろうか? 楽団かな?
数名の人が楽器を弾いている。
颯爽とコージさんがゾウの背中に乗って登場!!
象を引いているのは筋骨隆々だった人だ。
続いてライオンと虎やピエロが続き、最後にキリンに乗った女性が現れた。
キリンに乗った女性の胸元には緑色に輝く宝石が着いている。
禿げたおじさんが挨拶をする。
「レディース&ジェントルメーン!! KKKサーカスへようこそ!! わくわくドキドキの大サーカスを思う存分楽しんで行って下さい!!」
観客からの拍手が起こる。
そして、おじさんが杖を振り上げると、ピタッと音楽が鳴りやんだ。
「レディー!! ゴー!!」
掛け声と共に音楽がかき鳴らされ、サーカスが始まった!!
象の鼻に乗ったコージさんとキリンに乗った女性がそのまま空中ブランコに飛び移った!!
凄い!! 凄い!! コージさんと女性が空中ブランコ!!
二人で手を繋ぎ、ブランコからブランコへ踊るように飛び回る!!
象とキリンは大人しく左右で待機している。
筋骨隆々の人は左右の肩に女性を一人ずつ乗せたまま綱渡り!!
力もバランス感覚も半端じゃない!!
何も無い場所に布が広げられた。と思ったらいきなり布が持ち上がった!!
布を取るとピエロが玉乗りしている!!
玉乗りしながらボールをポンポンお手玉!!
ボールがどんどん増えていく。もういくつ持っているのかわからない。
「凄いんだゾ!! 凄いんだゾ!!」
わん太も大喜びだ!! 私も目が離せない!!
ライオンが出てきた!!
火のついた輪っかをくぐるらしい。
油をかけて燃えている火の輪をライオンが次々と飛んでくぐり抜けていく!!
「凄い!! 凄い!! えっ…… イヤァアアアアアアア!!!!!!」
わん太が私を乗せたまま裏から飛び出した!!
「キャァアアアアアアアア!!!!」
そのままキリンの背中に飛び乗った!!
「わ……わん太ああああぁぁぁ!!!!」
キリンの背中から空中ブランコを足場に綱に飛び移って綱渡り!!
綱からポンッポンッっと壁を蹴って足場にし、地面に飛び降りた!!
そのまま燃えている火の輪に突っ込んでいく!!
「うおおおおおおお!!行くんだゾ~~~!!!」
「イヤァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
火の輪に向けて物凄い距離を大ジャンプ!!
火の輪を潜り抜け、象の背中に飛び乗った!!
一瞬にして静まり返るテント内……
しかし数秒後!!
「うおおおおおお!!!!! すげえええええ!!!!」
パチパチパチパチ!! 物凄い拍手!!
物凄い大歓声が一気に巻き起こった!!




