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第三十一話 荒地しかない

「わん太。そこの荒地を全力で耕してちょうだい!!」


 小さく区切られた荒地だからわん太だったらそれほどかからない間に耕してしまうだろう。

 ノソノソと動き出すわん太。


「ははは。耕してくれるのかい? まずは雑草刈るところから始めなきゃダメだよ」


 ふっふっふ。わん太の力をお見せしよう!!

「ケイトさん、離れた方がいいかも。土かかったらゴメンね」

「大丈夫。もう既に土でドロドロだよ」


 ザクッザクッ……

 ザクザクザクザクバリバリバリバリ!!!!!


 わん太が土を耕しだした。

 深く深く土を掘り、根っこまで雑草を切り刻みながら土の下に埋め込んでいく。下の土と上の土をひっくり返すように耕していく。


「おおおおおっ!!!!」


 ザクザクザクザク!!!!

 雑草に埋もれていた土が表面にどんどん出てきた。

 耕した後はフカフカの空気を含んだ綺麗な土になっていく。

 あれだけあった雑草はものの見事に消えている。


 ケイトさんはあんぐりと口を開けたまま言葉も出ない。

 数十分で荒地は綺麗に耕された。

 畑の知識など何もない私でも、なんとなくいい土になった気がする。

 ケイトさんが勢いよく立ち上がり、土を確認しに行く。


「すごくいい土になっている、空気を含んでフカフカで水はけも良さそうだ!!」


 そうなのですよ。よくわかんないけど巨大な野菜が育つのですよ。


 ケイトさんが隣の荒地を指さす。

「わん太、ついでにこっちもお願い出来るのかな?」


 わん太は動かない。

「あれ? 言葉がわからないのかな?」

「うぅん。わかるよ。でも私の言う事しか聞かないの」

「ありゃ。賢い犬だな。アヤちゃんお願いしてもらっていいかな?」

「いいよ。わん太そっちも耕してちょうだい」


 ノソノソと動き出し、畑に着いたとたん機敏に動き出した!!


 ザクザクバリバリッ!!!!!!

 うんうん。私の言った通り私の指示以外は聞かない。

 これならわん太だけ連れて行かれる心配は無いだろう。

 耕し終わってケイトさんが確認に行く。


「こっちも素晴らしい土だ」

「そのまま畑に種撒いたらほっといても野菜出来るよ。雨とか水とかはわかんないけど。うちの村だとみんなそうしてる」

「まさか? いや。私も長い間畑仕事している。この土なら本当に種を撒くだけでもいい野菜が出来てもおかしくは無い」


 土を見ながら何かを考え込んでいる。

「アヤちゃんとわん太はおじいさんと一緒に来たんだよね。明日は用事あるのかな?」

「特に無いよ」

「明日も来てもらう事は可能かな?」

「おじいさんに言っておけば大丈夫だよ」


 申し訳なさそうにケイトさんが話し出す。

「正直に言うと、この辺はもう畑としてあまり機能しない土地なんだ。土は痩せているし水はけも悪い。当然作物の育ちも悪い。いい作物が取れないから作物が売れない。肥料を買うお金も無い」


 まぁそんな気はしていた。


「子供に話す事じゃないんだが、お金が無いからいい作物を作ることが出来ないし、いい土地も手に入らないって言う悪循環だ。作業道具もボロボロだ。だけどこの奇跡的な力を見てしまった。死んだと思っていた荒地が瞬く間に息を吹き返した」


「わん太農作業得意だよ。村でも農業の神様とか言われていたんだよ」


「本当に神の使いと言っても過言じゃない。もし可能なら、明日も手伝ってほしい。少ないがお礼は出来る限りさせてもらう。この畑なら絶対にいい作物が出来る。長年土を見てきた私にはわかる。そして作物が売れたら必ず恩返しさせてもらう」


「いいよ。たくさん耕さなきゃね。ケイトさんはどこに住んでるの?」

「すぐそこに家がある。よかったらご飯でも食べに来るといい」

 古いけど大きな家がある。隣に納屋もある!!


「泊めてくれるの?」

「んー? ワシは別にいいけど。おじいさん達が心配するんじゃないのかな?」

「おじいさんがいいって言ったらいい?その方が朝から作業できるし」

「ワシは構わないけど。大丈夫なのかい?」


 ちょっと聞いてくる。って言って聞きに行くふりをする。

 わん太に乗り、思い切り遠くに走ってもらう。また作戦会議だ。

 後ろでケイトさんがわん太の走る勢いにびっくりして目を丸くしている。


 森で寝てもいいけど、なるべくなら屋根とか壁とかがあった方がいい。

 ご飯も温かいのを食べたい。


「わん太。明日も作業してくれる?」

「大丈夫だゾ。俺は喋らないし、アヤの言う事だけ聞くんだゾ」

「出来れば泊めてもらいたいし、納屋で寝かせてもらいたい。ここに住むわけじゃないけど、ここで誰かと仲良くなれれば、先生とか賢い人とつながりが出来るかも」

「俺は畑仕事しか出来ないゾ。アヤに任せるんだゾ」


 よし。わん太もやってくれるし、泊めてもらっちゃおう。

 わん太にダッシュで戻ってもらう。


「おじいさんがいいよって。農業してる人に悪い人はいないんだって」

「いや。そんな事はないよ。悪い人もいるけど、まぁワシらは大丈夫だから安心してくれ」

「もしも悪い人がいても、わん太が一緒だったら大丈夫なの。私がいれば大人しいけど変な人が来たらやっつけてくれるから」

「ははは。そうだろうね。わん太はアヤちゃんの言う事しか聞かないし、アヤちゃんの事が大好きみたいだからね。泊まってくれるのなら、ご飯と寝る所を準備しよう」


「あ。ケイトさん。一つお願いがあるの」

「なんだい?出来る事なら何でもするよ」

「人には言わないで欲しいんだけど、わん太は私がいる間は大人しいけど、寝ぼけてたまに暴れ出すことがあるの。私がいれば絶対に大丈夫だからいつも一緒に寝てるんだ。わん太は家には入れないから、納屋にわん太と泊まってもいい?」


 お願い。これが通らないとここには泊まれないの。

 下手な言い訳だけど通してほしい。


「いや。別に私は構わないけど、納屋は綺麗じゃないけどいいのかい?」

「お願い。納屋に寝かせてくれたらわん太に頑張って畑仕事してもらうから」

「わかった。いい物じゃ無いけど布団を敷けばいいのかな? わん太の布団は無いけど大丈夫かな?」

「布団はいらないよ。わん太に乗って寝れば寒くないから。いつもそうしてるんだ」


 上手くいきそうだ。

 古いけど、家も納屋も大きい。

 わん太も充分に入れる。


「ここでいいかな? 大した物は用意できないけど、ゆっくりして行くといい。お風呂も沸いている」

「ありがとう。わん太、一人でご飯食べてここに戻ってきて。人に見つかると怖がられるからあんまり見つからないようにね」


 わん太がどこかへ歩いていく。

「わん太は大丈夫なのかい? 迷子になったり捕まえられたりしないかな?」

「大丈夫。わん太は強いし賢いよ」


 お風呂をもらい、ケイトさんがご飯を用意してくれる。

 パンとスープだけだ。どちらも正直美味しくは無い。

 孤児院で食べてた物と同じような物だ。ナンテン村の巨大な野菜が美味しすぎた。


「ラークスパーの街は大きいから、食料もたくさん必要になる。ここを治めるジャーブル子爵も農業や畜産等に力を入れてくれてはいるんだけどね。ワシらのような末端までは目が届かないんだろう」

「わん太が耕したら大きい野菜が取れるし、美味しいからすぐ売れるよ」

「そうなのか。本当に楽しみにしている」


 ご飯を食べ、魔物の事や石で出来た亀の事、不老不死等ちょっとだけ聞いてみたがケイトさんは知らないらしい。まぁそりゃそうだ。


 野菜の事は詳しい。

 ナンテン村で見たカボチャとトマトの接ぎ木の事も詳しく説明してくれたが、農業知識の無い私にはチンプンカンプンだった。


 動物同士だと、犬と猫などはもちろん、犬同士でもお互いの手足を交換する事は出来ないが、植物同士だと別の種類の植物でも拒絶反応を起こさず合体してより強い植物になるらしい。


 わん太が食べた怪我が治る果物の事も聞きたいが、呪われた森の中の話だし、誰から聞いたの? と言われてしまうとわん太が喋る事を話す事になるので、これ以上聞けなかった。

 ただ、動物よりも植物の方が生命力や、変化する力が強いと言う事がわかった。

 呪われた森の中は、森と言うくらいだから植物は生き残っている。

 普通の動物だと死んでしまうのは植物の方が生命力が強いからだろうと想像する。


 しばらくするとわん太も帰ってきた。

 何かを食べてきたらしい。その辺の野菜を盗んでいないかちょっと心配だ。

 納屋を借りて寝る事にする。

 明日からは畑仕事だ。


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