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第二十九話 街をウロウロ

 一人と一匹の旅を再開し、わん太に乗って数日。


 とりあえず西に進むとは言って村を出たものの……

 当てが無い!!無さすぎる!!


 ただ、旅にも多少は慣れ、道でも村でも街でも話しかけられたら、おじいさんとおばあさんが向こうにいると嘘をつけばどうにでもなった。

「おじいさんとおばあさんが向こうにいるよ。みんなで旅行しているの」

「おじいさんは用事があるから私だけ先に帰るように言われたの」


 買い物したい時も簡単だ。

「向こうにおじいさんがいるよ。好きな物買っておいでってお小遣い貰ったの」

「おばあさんにお使い頼まれたの」

 等と適当な事を言っておけば普通に売ってくれる。

 顔のアザを見て嫌な顔をする人もいるけど、そんなのは慣れっこだ。

 一回だけの買い物だし何とも思わない。


 それと、前みたいに大金貨を出せばややこしい事になりそうだけど、銀貨や銅貨だと普通に買い物させてくれる。おばあさんが着せてくれた綺麗な服と靴を着ているし、変に思われなくなったのかも知れない。


 ムスカリ街みたいな場所には近寄らない。

 また蝙蝠とか魔物出てきたら嫌だし。

 危ない場所に近寄らなくても食料は何とかなるし。

 なんか怪しいなと思うところには行かない。


 ただ、肝心の情報を手に入れる為の会話が全く思いつかない。

 買い物している店員さんに「黒い魔物見た事ありますか?」とか「不老不死の生き物知っていますか?」とか聞いたら変に思われるだろう。


 学者さんや先生やお医者さん獣医さん等と知り合いになりたいけど、仮になれたところでどう説明すればいいのかもわからない。

 このままではひたすら西に向かっているだけだ。西に何かがあるわけじゃないのでなんの意味も無い。


 何かをしなきゃ!! 

 話を聞いた限り、近くに大きな街があるらしい。

 そこで何かをして、なんとか情報を手に入れよう。


 街まで辿り着いた。入り口に大きな看板がある。


【ラークスパー】


 ラークスパーと言う街らしい。ラークスパー街でいいのかな?

 隣に簡単な地図がある。


 大きな街だ。入り口で守衛さんに一度止められたが、おじいさんにお使い頼まれたと言って、わん太が尻尾を振って愛想を振りまいたら入ることが出来た。大きいけど子犬の様な容姿だし実際に可愛い。私の顔のアザは特に何も言われない。


 地図を見ると、街の北側は貴族様やお金持ちの住む所、真ん中に大きな広場があって、その周りにはお店や役場。広場から離れた東西に住宅街。南側は農業地帯。田んぼや畑や牧場とかがあるらしい。

 まずは市場にでも行ってみようかな。


 お決まりの台詞

「おじいさんに言われてお使いに来たの」

 これで食料を手に入れる。ご飯もお菓子も食べ放題だ。

 銀貨や銅貨の細かいお金もあるし何も言われない。

 わん太はお店に入れないので少し離れた場所で待っていてもらう。


 美味しそうなおやつはわん太の分も買ってあげる。

 雑食と言っていたけど本当にシュークリームでもお饅頭でも食べてしまう。

 虫歯にならないかしら?


 ケーキ屋さんの店員さんが話しかけてきた。

「ねぇねぇ。外で待っている大きい犬って貴女の犬?」

 よく聞かれる質問だ。みんな気になるみたい。


「わん太だよ。大きいけど大人しいから大丈夫。うちの村の牧場で牛と一緒にいるよ」

「牧羊犬みたいに働く犬かな?」

「いろいろ村でお手伝いしているよ。畑耕したり荷物運んだり。おじいさんにお願いして背中に乗せてもらっているんだ」

「畑を耕してくれるの? ほんとに?」

「うん。めちゃくちゃ掘り返すし、野菜も大きく育つよ」


「じゃあ、村の南の方に行ったら大人気かもね!! 街の人口が増えて食材がどんどん値上がりしているから、畑を増やしたい人は多いんだけどなかなか進まないみたい」


 力のいる畑仕事ならわん太以上の存在はいないかも知れない。

 しかもわん太の場合、作業と言うより趣味に近い。

 人間が好きだからなのか、人間の手伝いをしたがる。

 ナンテン村でも嬉々として畑を掘り返していた。


「あとで見に行くね。真ん中の広場って何があるの?」

「時期によって変わるかな。お祭りしたり、珍しい品物の市場が並んだり、楽団が来てくれたり、野球やサッカーみたいなスポーツする事もあるし。そうそう!! サーカスが来ているよ。今テントとか搬入しているはず。毎年来てくれるんだけど、珍しい動物や空中ブランコ。絶対に見た方がいいよ」


 サーカスか!!噂では聞いた事があるけど、いろんな動物が芸をしたりピエロとかがいるんだよね。どんなのだろ? 子供だけでも見せてくれるかな?


「あと、街の北の方はどんなとこ?」

「あそこはぐるりと壁で仕切られているから入れない。悪い人が来ないように貴族や大きな商人以外は入れない。私たちが入ったら捕まっちゃうし。下手に近づかない方がいいよ」


 やっぱりそうなのか。

「この街のリンゴは美味しいよ。リンゴのお菓子がお勧めだよ」


 ふむふむ。リンゴのケーキやクッキーやアップルパイをたくさん購入。人に見られないところでマジックバッグに入れてしまう。

 もう危ない場所には近づかないと決めているので貴族様の所へ行く事はないだろう。

 ご飯やお菓子を食べたりしながら市場をウロウロする。

 いろいろな商店があるけど、私がこれ以上情報を手に入れるのは難しそうだ。


 食料も買ったし、意味があるかはわかんないけど、明日から畑仕事をしてみることにする。

 一旦街の外へ出て、わん太と作戦を練ろう。


 街の外に出て、人目につかない場所で寝場所を確保。

 夜になり、夕飯を食べる。焼きおにぎりもお漬物も美味しい。

 わん太は何かを食べてきたらしい。口の周りに血がついているけどいつもの事なので気にならなくなった。

 お菓子を欲しがるのでケーキをあげよう。


「美味いんだゾ!!リンゴが入ってるんだゾ!!」

 私も食べる。美味しいケーキだ。

 わん太は一口で食べてしまう。この街にいれば買い物はいくらでも出来るからたくさんあげておく。大喜びしている。


「ねぇ。この街も畑仕事している人多いらしいんだけど。わん太手伝ってくれる?」

「大丈夫だゾ!!」


 まぁ畑仕事は大丈夫だろう。


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