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第二十七話 新たな旅の始まり

「旅に出るんだゾ」



 そっか……わん太は自分で決めたんだ。

 早い方がいい。善は急げって言うし。

 もちろん私もついて行く。


「昨日の夜、わん太と話してたんだ。二人で魔物を消す方法を探しに行きたいの」


 早い方がいい一番の理由。

 タイムリミットがある。

 リミットは私の命が尽きるまで。

 私が死んでしまった時点で……その先は考えるのもおぞましい。

 再生し続けるわん太の身体と再生し続ける黒い魔物。

 どちらも致命傷を負っても再生し続ける。

 終わらない戦いと終わらない苦しみ。

 私が死んだら、他の誰かが助けてくれる事は無いだろう。


「そうか。ワシは薄々感づいておった。最初に聞いたわん太の話が真実だったとすれば、アヤに万が一の事があった時に地獄が始まる事を。現実に黒い魔物と、アヤの力を見るまでは信じられんかったが、もう疑う余地は無い」


「アヤよりわん太の寿命が先に尽きるって事は無いのかね?」


 おばあさんは出て行って欲しくなさそうだ。


「私が今8歳。めっちゃ長生きして、あと100年生きるとして。わん太がそれまでに寿命が尽きればいいのね。犬ってどのくらい生きるものなの?」

「10~20年だとは思うが、そもそもわん太は既に村に来て10年。しかし未だに子犬の姿じゃ。普通の犬では無い、あとどのくらい生きるのかを普通の犬と同じに考えるわけにはいかんじゃろ」


 わん太の寿命か。犬っぽいけど。どうなんだろ?


「あんたなんで子犬のままなの? それが大人の姿なの?」

「たぶんこれが大人の姿なんだゾ!!」

「お前が村に来た時から全く変わっておらんぞ。」


 ダメだ。わん太の言う事はあてにならないし、死ぬ日なんかわかるわけもない。

 なんなら自殺しても死ななさそうな身体だし、再生し続けて寿命とか無い可能性もある。


「おじいさん、おばあさん。わん太の身体の魔物を退治する方法を探しに行きたいの。もしも私が死んだら打つ手が無くなっちゃう。私の代わりに魔物を消す道具とか、魔物を退治する方法があるかも知れない。私が死んでしまったり、私の力が無くなったら、何も悪い事していないわん太が悪者になっちゃう!!」


 考え込む二人。

 他の方法は無いのか?

 国や貴族を頼るわけにはいかない。

 間違いなくわん太自身が魔物と呼ばれて討伐対象となる。

 わん太を一人で行かせると、黒い魔物で旅どころでは無くなる。

 黒い魔物を消せるのはアヤしかいない。

 二人揃って探す以外の方法が無い。



「ワシらは、もう年を取りすぎておる。野菜のおかげで元気だとは言え、一緒に旅をする程の力はもう残っておらん。行っても足手まといになるだけじゃろう」

「私は二人ともここにいて欲しいけど。探しに行くしかないんだね。せっかく孫が出来たと思ったのに」


「やっつけたらここに帰ってくるんだゾ!!」

「そうよ!! 私だってここに帰ってくるんだから!!」


 嘘でも何でもない。絶対にこの村に帰る!!

 わん太が治るまでの間、ちょっと旅するだけだ。


「わかった。ワシらの蓄えも少ししかないが持っていくがいい。村にある物は何でも持っていけばいいが、旅の役に立つ物があるかはわからん」

「お弁当、山ほど作るからね。服も洗濯するから。途中で何かあったらいつでも戻ってくればいいからね」


「ありがとう」

「ありがとうだゾ。すぐに戻ってくるんだゾ」


 二人も納得してくれた。

 誰のわがままでもない。

 また、一人と一匹の旅を再開するだけだ。

 わん太と一緒なら何があっても大丈夫!!

 そう自分に言い聞かせる。



 まぁ急ぐとは言え、今すぐに出るわけではない。

 そもそもどこに行けばいいのか、何をすればいいのかわからない。

 今のところ、何一つとして当てが無い。

 旅の準備と言っても適当だ。着替えとタオル位だ。

 お弁当とかは、おばあさんにたくさん作ってもらおう。

 あとは行く先々にあるお店で買えばいい。

 綺麗な服も貰ったし、孤児とは思われないだろう。

 フーゴさんに細かいお金も貰ったし。大丈夫!!

 お店では、おばあさんに言われてお使いに来たとでも言えば普通に売ってくれるはず。

 わん太から離れるわけにはいかないのでどうせ宿には泊まれない。

 ベッドはわん太の背中だ。寝心地も抜群だ!!


「どこに行けばいいんだろ? わん太の身体を治す方法かー」

「わん太にしても黒い魔物にしても不老不死なんじゃろうか?」


 不老不死。年を取らなくて死なない身体。

「あんた不老不死なの?」

「そんなのわかるわけないゾ」


 おじいさんとおばあさんなら長く生きているし何か知っているかも。

「どこに向かえばいいのかわからないの。旅の行先のヒントとかない?」

「行先とは言えないけど。不老不死と言えば、まぁ人魚とかの話があるけどね」

「どんな話?」

「人魚の肉を食べたら不老不死になるって。伝説だけどね。しいて言えば海関連になると思う」


 不老不死かー。

 どう考えてもおとぎ話だけど、おとぎ話しか当てが無い。

 一応参考にしておこう。

「あんた海行ったことある?」

「無いんだゾ。俺も行ってみたいんだゾ」

「わしらも行ったことが無い。海の魚は美味しいと聞いた事がある」

「美味しい魚食べたいんだゾ!! 捕まえて食べるんだゾ!!」


 遊びに行くんじゃないんだけど、私も美味しい魚なら食べたいかな。


「あとは……鶴は千年亀は万年って言うんじゃが。不死鳥も不老不死かの?」


 鶴は見た事ないけど鳥だよね。石の亀はこないだわん太が吐き出したなぁ。

 あの亀は関係あるのかな?

 不死鳥ってなんだろ。死なない鳥?


「不死鳥は燃える火の鳥の事だね。自ら火の中に飛び込んで、燃えて灰になって灰の中から復活するって聞いた事がありますよ」


「わん太、よく鳥食べているけど、火の鳥食べた事ない?」

「たぶん無いんだゾ。捕まえて食ってみたいんだゾ」


 いや。食べちゃダメでしょ。余計にややこしい事になっちゃう。

 お腹の中で燃えていたらわん太が丸焼きになっちゃう。

 ヒントは人魚、鶴、亀、不死鳥か。

 何も当てが無いよりはマシかな。


「とりあえず。準備じゃな。今日はゆっくり寝るといい。ワシとバーさんは必要な物を準備しておく。食べ物と着替えと、あと何かあるか?」

「わん太が外でご飯貰った時、洗面器で食べてたから。違う入れ物ある?」

「陶器だと割れるから。鍋でいいならあるよ」

「でっかいのがいいんだゾ」

「バッグに入る大きさがいいな」

「ハイハイ。準備しとくからね。うちにある物で必要な物があったら持って行っていいからね」

「ありがとう」


「俺は最後に畑仕事してくるんだゾ」

 わん太は出て行ってしまった。


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