第二十四話 検証
「タヌキだゾ。こんなでっかいのはなかなかいないんだゾ!! 急いで帰るんだゾ!!」
タヌキはもう動かない。死んでいるようだ。ダラーンと伸びてしまってて私と同じくらい大きい。
残酷だけど、村で食べる牛も馬も豚も鳥も同じ事だ。
わん太が急かすので背中に乗ると、タヌキを咥えたまま一直線に村へと飛ぶように走り出した。
日はまだ高い。2時ごろかな?
「ただいま~。わん太が大きなタヌキ取ってくれたよ~」
おじいさんとおばあさんが出てくる。
「おお!! 大きなタヌキじゃな!! 村のみんなを呼んでくる。わん太、川まで運ぶんじゃ!!」
村の人達で解体するらしい。私は見たくないので家にいる。
「おばあさん、タヌキどうするの? 晩御飯何?」
「タヌキ鍋だね。ごちそうだよ!!」
大きなお鍋が用意され、大根、人参、かぼちゃ、ごぼう等の根菜が下準備されている。
どの野菜も元は巨大だったはずだが、切ってくれたら普通の野菜だ。
「頑張ったんだゾ!! 楽しみだゾ!!」
わん太もウキウキしている。
私も疲れたのでわん太と納屋に入り、ウトウトしていると。
「出来たよ~」
わざわざ納屋に持ってきてくれた。
「わん太が頑張ってくれたから飛び切り美味しいのが出来たよ。みんなで食べましょう」
納屋の中で、タヌキ鍋パーティ!!
村のみんなも大喜びで、今日は村中の家がタヌキ鍋だろうって言う事だった。
美味しいタヌキ鍋と白いご飯、頑張ってくれたわん太には焼いた豚肉の塊も用意してある。みんなで美味しく頂く。根菜たっぷりのタヌキ鍋は本当に美味しい。
「家もあるし、首輪もあるし、エサも貰えるし、飼い犬になった気分だゾ!!」
飼い犬になった気分で何故か喜んでいる?
「あんた飼い犬になりたいの?」
「もちろんそうだゾ!! 村の飼い犬達は羨ましいんだゾ!!」
飼い犬になりたい!?
犬の考える事はよくわからない。
「お前みたいな大きい犬を飼えるのは王様や貴族様位じゃな。普通は小屋も用意出来んし、エサも散歩も無理じゃからな」
「ここだったら、村のみんながエサもくれるし、わん太は一人でどこでも散歩行けるから飼い犬みたいな物だと思うけど」
「うーん。でもやっぱり羨ましいんだゾ。俺も飼い犬になるのが夢だゾ。アヤが飼ってくれるといいんだゾ」
「私が?そもそも私がおじいさんの家に住ませてもらっているしご飯も食べさせてもらっているんだから無理よ」
「そうか。残念だゾ。アヤは夢はないのか? 大きくなったら何かしたい事とか行きたい場所とかは?」
夢か。たくさん勉強したし、大きくなったらいっぱい仕事してお金持ちになって一人で生きて行けるようにはなりたかったけど。顔のアザのせいで全部諦めてしまったかな。
「私もなんとかしてお金稼いで、小さくてもいいから自分の家を建てて、料理も掃除も自分でして、一人で生きて行けるようになりたいな」
「そうですね。アヤだったら大丈夫ですよ。料理や掃除は私も教えられるから頑張ってね」
そうだ。ここでおばあさんに料理を教わっておかないと。
「ダメだゾ!!」
「わん太。何がダメなんじゃ?」
「小さい家はダメだゾ。俺を飼うには大きい家じゃないとダメなんだゾ」
「私が飼うの?無理じゃないかな?」
「でも。飼ってもらわないと、俺は生きていけないかも知れないんだゾ」
まぁそりゃそうだ。って言うか。この先どうすればいいんだろう?
私がナンテン村に住ませてもらえるのは嬉しいけど。このままずっと生きていけるのかな?
「うむ。薄々感づいてはおったが。わん太、お前どうするんじゃ?アヤがいつまでも一緒にいてくれるのならいいが。そういう訳にはいかん」
「一緒にいるんだゾ」
「アヤが了承したとしても、もしもアヤの身に何かあった時点で終わりじゃ」
「大丈夫。俺が守るんだゾ!!」
「しかし、お前はここに来て10年程経つが、未だに子犬のままの姿じゃ。いつになれば大人になるのかわからん。お前は自分の怪我が治ると言っていたな? それが本当なら、変な話、自殺ですら出来るかも不明じゃぞ。もしもお前の寿命がアヤより長かったらどうする?」
黙ってしまうわん太。
そう。私が死んだ時点でわん太はもう為す術が無くなってしまう。
病気なのか? 魔物に取りつかれたのか? それとも他の原因なのか?
私が死んだ時点で原因を探したり魔物をなんとかして退治する方法を探す事さえ出来なくなる。
「ワシらはお前が言う黒い魔物を見たわけじゃない。そもそもお前が怪我をしたのを見た事がないから怪我が治ると言うのも半信半疑じゃ。だけどお前がそんな変な嘘をつくとは思わん。本当に今でも魔物は出るのか?」
本当に出るのかな?もう出なくなっていたりしないかな?
「わん太。ちょっと試してみよう。もしかしたらもう治っているかも知れないし。まだ黒い魔物が出てくるのか、もう出て来なくなっていればそれが一番だけど、まだ出てくるのならおじいさんの言った通りこのままだと時間の問題かも知れない。」
「どうすればいいんだゾ?」
「簡単よ。離れて一晩過ごすの。うぅん。一晩じゃなくて何日でも何か月でも。魔物が本当に出てくるのか、出て来なければいいけど。出てくるのなら何か考えないと」
「わかったゾ。今日から俺は森で暮らすんだゾ。しばらくはアヤに会わない方がいいんだゾ」
「私は基本的にこの家にいるから。もしも魔物が出てきたらここに来て」
「わかったんだゾ」
どうなるんだろ? いつまでわん太と離れていればいいんだろ?
出てこない方がいいに決まっているんだけど、どれだけ離れていればいいんだろ?
一年後に出てくる可能性もある。十年後だったらどうしよう? なんだか先の見えにくい話だけど何もしない訳にはいかない。
でも、この間、最初に会った時は私に触れて魔物が消えてから、その夜中には魔物が出てきた。こないだと状況が同じなのかはわからないけど、案外早く結果が出るような気がする。
「村のみんなにはワシから説明しておく。もしも黒い魔物が出てきてもお前が人に危害を加える事はないのはわかっておるが、みんなにも一応びっくりせんように知らせておくから」
可哀そうだけどしょうがない。
「タヌキ美味しかったんだゾ。ジーちゃん、バーちゃんありがとう。アヤ、お願いだから助けてほしいんだゾ」
「大丈夫。わん太が来たら風の音でわかるし、すぐに家を出るから安心して」
わん太は自分で納屋の扉を開け、少し悲しそうに出て行った。




