第二十二話 透明な石の亀?
「アヤ、とりあえず今日からはここで寝るといい。納屋だけど、一応壁も屋根もある。おじいさんも私も家にいるから何かあったら大きな声を出せば聞こえるよ」
納屋の中を整理して掃除してくれた!!
納屋の扉は大きいのでわん太も入れる。牛小屋は屋根はあるけど壁じゃなく柵だった。
「俺もここで寝るんだゾ!! 家みたいで嬉しいんだゾ!! 野菜食べ放題だゾ!!」
わん太も喜んでいる。壁際に野菜なんかが積み上げられている。
「わん太が手伝ってくれたから出来た作物じゃ。食いたければいくらでも食っていいぞ」
食べてもいいんだ。まぁご飯いっぱい食べるから私は食べないけど。
積み上げられた中に小さくて真っ赤な植物がある。何かの実?野菜なのかな?
ただ、見ただけでなんか嫌な気配がする。なんか毒々しい。
「おじいさん、あの赤い実は何?」
「あーっ!! アヤ、あれは触っちゃいかんぞ!!」
バクッ!!
触っちゃいかんと言われた瞬間!! わん太が食いついてしまった!!
「あああ~!!!! こらっ!! わん太!!」
モグモグ……ゴクン。
……………………
飲み込んだ? わん太が固まって動かなくなった!?
どうしたのかな? 声をかけようとした次の瞬間!!
「ぐおぉああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ドカーン!!!!
いきなり入り口のドアをぶち抜いて物凄い勢いで、どこかへ走り去ってしまった!?
「いかん!! おそらく川に行ったはずじゃ!!」
おじいさんと二人で追いかけると、おじいさんの予想通り、わん太は川にいた。
顔を川につけたまま水をがぶ飲みしていた。
「川でお水飲んでるわ。おじいさん、あの赤い実は一体何なの?」
「昼間見た畑があったじゃろ? 馬小屋の横にあるわん太の毛を埋めた、巨大な野菜の出来る畑じゃが。こないだあそこに鷹の爪って言う唐辛子を植えたんじゃ。大きな唐辛子になるかと思ったが、大きさは普通の物しか出来んかった。しかし、収穫する為に触っただけで肌が腫れてしもうてな。皮の手袋をして肌に触れないように収穫したんじゃ」
「唐辛子? 辛い奴だよね。誰も食べてないの?」
「触っただけで腫れるから、食ったら死ぬ気がしたので誰も口には入れてはおらん。しかしせっかく出来たのに捨てるのももったいない気がして、とりあえず納屋に突っ込んでおいたんじゃが。村の人間が食わなくてよかったわい」
わん太がダメージを負うくらいだから、人間が食べたら本当に死んでいたかも知れない。
わん太は川に顔を突っ込んだままだ。
よく見るとぶるぶる震えている。よっぽど辛かったらしい。
数分水をひたすら飲み続け、顔を上げたが意識が朦朧としているのかフラフラしている。
「わん太!! こっちに来い!! 川に落ちるぞ!!」
おじいさんの声に何とか反応して身体をこっちに向けて戻ってきて、そのままバタリと倒れてしまった。
ゴボッゴボゴボゴボ!!!!
わん太が大量の水を吐き出した!!
吐き出した……でもおかしい!!
わん太は大きいけど、その大きいわん太でもおかしい量の水を吐き出した!!
私の足元が水浸しになっている。
ゴボゴボゴボゴボッ!! ゴロン!!
何かを口の中から吐き出した!?
「な……なに? わん太がなんか吐き出したよ?」
わん太が、透明な大きい氷のような物を吐き出した!?
何これ!? 氷じゃない。石だ。
こんなのいつ食べたの!?
「がらいんだゾ~~~!!いだいんだゾ~~~!! あづいんだゾ~~~!!」
わん太が叫んでいる。
辛くて痛くて熱いらしい。口の周りが腫れていてもの凄く不細工な顔になっている。
唐辛子の謎はなんとなく解けたし、わん太も生きていたから良かったけど。わん太の中から謎の石が出てきてしまった。
わん太が吐き出した石をよく見てみる。
六角形の模様が入っている?
わん太は叫びながらまた川に顔を入れてしまったので話が出来そうにない。
「今わん太が吐き出した物じゃな。亀の形をしておるように見えるが?」
私もなんとなく思った。透明な亀の形の石?
「この石持って帰ってもいい?わん太から出てくる黒い魔物と関係あるのかな?」
「うむ。調べてみてもいいかも知れん」
ギャーギャーと呻いているわん太の横で石を綺麗に洗う。
綺麗に洗うと、やっぱり亀の甲羅みたいな形だ。
大きくて物凄く綺麗。宝石の様だ。
ガブガブガブガブ!! わん太は水を飲んでいる。
銃で撃たれても平気だし、大蛇に噛まれた傷もすぐに治るし、たき火を踏み消しても平気なわん太がここまで苦しむ唐辛子。
私が食べたら間違いなく死ぬだろうなぁ。
わん太が水から顔を離した。
腫れはだいぶマシになっていると思う。毛が生えているのでよくわからない。
「あ゛~~~~死ぬかと思ったゾ」
「大丈夫?お砂糖でも舐める?」
「砂糖ならうちにあるから欲しかったら出すぞ。しかし辛い物を食べた後、甘いのを食べたらからと言って辛いのが治るのかの?」
「砂糖舐めたいゾ。家に行くんだゾ」
わん太の顔は涙と鼻水とヨダレでベトベトで汚い。
とりあえず家に帰って、みんなで納屋に戻る。
おばあさんにお砂糖出してもらうとわん太がジャリジャリと舐めている。太りそうだ。
「ねぇわん太。さっきこれをお水と一緒に吐き出したんだけど。これ何かわかる?」
「ん? なんだそれ?」
「あんたの口から出てきたんだよ。お水吐いてる時に一緒に吐き出したみたいだけど」
わん太がジロジロと透明な石を見ている。
何かを思い出そうとしているようだ。
「ああ~~~っ!! それは亀だぞ!!」
「亀? 亀の形の置物ではないのか?」
「違うんだゾ!! 昔、お腹が空いてエサを探してウロウロしていた時、森の中の池に透明な亀がいたんだゾ」
「透明な亀? 透明な石にしか見えないけど。これ動いていたの?」
「見つけた時は生きている亀だったゾ。お腹が空いていた俺は、食おうと思って捕まえて、噛みついたんだけどあまりの硬さに歯が折れそうになったんだゾ」
これはどう見ても石だ。触っても石だ。
「これ生き物なの?生き物だったとしても食べられないよ」
「噛みついても割れないので、悔しいからそのまま飲み込んでやったんだゾ!! そしたらめちゃくちゃにお腹が痛くなって、なんとかこの村の入り口まで辿り着いて倒れてしまったんだゾ」
「お前が来た時の話か?」
「そうだゾ。倒れる前に最後に食ったのがこの亀だゾ!!」
ん~? どう言う事?
おじいさんは村にわん太が来たのは10年ほど前って言ってたはず。
10年前に食べた亀が、消化されずにお腹の中にずっとあったって事?
「お前が倒れてしまったのはこの亀を食べたからじゃったか。確かにこんな物を飲み込んだら腹も壊すじゃろうが。ただ昨日飲み込んで今日出てきたわけでもないし。どうなっとるんじゃろうな」
「俺にもわかんないゾ。食ってお腹が痛くなったから覚えてるだけだゾ」
「わん太から出てくる黒い魔物とは関係ないの?」
「わかんないゾ。あの魔物はついこないだ、蛇を食った後に出てきたけど、これはもっともっと昔の話だから関係ない気はするんだゾ」
色々ややこしい犬だ。
蛇とか亀とか唐辛子とか変な物を口に入れるのをやめさせないと。
「この石の亀、綺麗だし何かに使えるかも知れないからマジックバッグに入れておくわね」
「食わない方がいいんだゾ」
「食べないわよ!! バッグに入れるって言ってるでしょ!!」
魔物とは関係ないらしいが、バッグに入れておく。
詳しい人に見てもらえば何かわかるかも。




