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第十四話 魔蝙蝠

 警備員に大金貨を渡して通行証を貰った。

 恐る恐る街の中に入ってみる。


 立札がある。


 【 魔蝙蝠に注意 】


 魔蝙蝠? 洞窟にいた大きな蝙蝠が魔蝙蝠かも知れない。

 注意と言う看板が立っているくらいだから、魔蝙蝠は人を襲うのだろう。

 私の回りはワンタが風を吹かせてくれているから大丈夫だとは思う。


 街の中は……ゴミがあちこちに散乱していて嫌な臭いがする。

 私でも臭いが鼻のいいワンタは辛いかも知れない。

 道行く人たちもなんとなくチャラチャラしてガラが悪いし品が無い。


 道端にたむろしている人達は、何やら紫色の煙を口から吐いている。

 虚ろな目つきでただひたすら紫色の煙を吸ったり吐いたり。

 孤児院に出入りする人にタバコを吸う人がたまにいたけど、紫色の煙は見た事が無い。

 新しいタバコなのだろうか。



「この街は治安悪いらしいから、絡まれたりしそうだけど。こないだみたいに木に突進したりしないでね。私のアザは一度見たら忘れないから、余計なトラブル起こして騒ぎになると、私を売ろうとしていた人達や貴族様とかの耳に入ると捕まえられちゃう」


「まかせるんだゾ!!俺からは手は出さないゾ!!」


 大丈夫かな。出来る事なら絡まれたくない。

 ササっと食料買ってこの街は出たいなぁ。


 きょろきょろしていると、知らない男が寄ってきて、いきなりワンタのカバンを奪おうとした?

 ワンタがさっと避けると私の顔を見ている。


「急に近づくと噛むかも知れないよ!!」

 一応警告だけしておくと、言い返された。


「なんだお前の顔は!! 呪われてるのか? 気色の悪い!!」


 私に取っては聞き慣れた……そして聞き飽きた暴言。

 ワンタが無視してお店のありそうな方へ歩き出す。

 いきなり突風が吹く!!


「石が飛んできたゾ。突風で巻き上げたゾ。投げた奴もわかるぞ。捕まえるか?」

 誰かがこっちに向かって石を投げたらしい。

 さっきの人の仲間かも知れない。

「いや。捕まえなくていい。早く買い物して街を出よう」


 さっきの警備員は大金貨が通用したが、お店で大金貨を出すと、また盗んだだろって疑われたり拉致されそうになったりするかも知れない。


 疑われずに両替出来る場所とかあればいいんだけど。

 ウロウロするがいい案が思い浮かばない。

 大通りを外れ路地裏の様な所を進む。建物の上から誰かがジロジロ見ている。

 路地裏を歩いている間に人気の少ない場所に来てしまった。


 この街はどこもかしこもゴミが散乱していて汚いが、ここは特に酷い。

 ゴミ捨て場だろうか?野良犬がいるが、ワンタを怖がっているのか近寄ってこない。

 たむろしている人はみんな紫色の煙に包まれている。

 みんながジロジロと私とわん太を見ている気がする。

 あの煙はなんなんだろう?


 そのまま進み続けると。行き止まりだ。戻るしかない。

 両替も、食料を購入するいい案も思い浮かばない。


 しょうがない。戻ろうと振り返ると。

 後ろに5人程のガラの悪い連中が集まっていた。

 つけられていたのかも知れない。


「お嬢ちゃんと可愛いワンちゃんが、な~んかいい物持ってるって聞いたんだけど?」

「俺達に分けて欲しいな~!!」

「俺達、煙が切れちゃったからさ、煙か、煙を買うお金が欲しいんだよ。元気になれる煙なんだ~」


「何も持ってない」

 煙って何?さっきからみんなが吸ってる紫の煙?

 元気になれるって、タバコじゃないの?


「あれっ? おかしいなぁ?? 化け物みたいに顔面が呪われている子が、何かいい物持ってるって、あの人が教えてくれたんだけどなぁ!!」


 男がヘラヘラしながら酷い事を言う。

 指差す方向を見ると、最初に袖の下を渡した警備員!!

 なに?警備員とこの人たちはグルなの?村の安全を守るのがどうとか言っていたくせに!!

 警備員がグルだったら、この村の治安は悪いに決まっている。

 私をこの村で助けてくれる人はいなさそうだ。


 私はワンタの強さがわかっている。生えている木を簡単にへし折ったり建物を粉砕出来るんだから、本気になればこんな人達なんか相手にもならないだろう。

 だけど、怪我をさせたり、万が一殺しちゃったら大騒ぎになってしまう。

 誰の耳に入るかわからないし、おじいさんの村に行ってからなんらかの迷惑をかけてしまうかも知れない。


「ワンタ、あの人たちに怪我させずに逃げられる?」


 ワンタは返事も無く、私を乗せたまま、屋根の上に飛び乗ってそのまま大通りの方へ走り出した。

 屋根の上を越えて走るので、当然誰も追ってこれない。


 後ろを見ると、男たちはあんぐりと口を開けたまま突っ立っていた。


 大通りに戻る。もう夕方だ。子供だと、お金があっても買い物すらまともに出来ない。


「キャアアアアアア!!!!」


 唐突に悲鳴が上がった!!

 見れば、子供が鳥に襲われている? 父親らしき人が必死に子供を守ろうとカバンを振り回している!!



 鳥じゃない!! 蝙蝠だ!!

 おそらく昨日、洞窟の中にいた大きな蝙蝠だ。ワンタが食べたがっていた奴だ。


 瞬時にワンタが走り、前足で蝙蝠を叩き落す。

 蝙蝠は地面に叩きつけられて動かなくなった。

 襲われていた親子は震えている。


 村の入り口に魔蝙蝠に注意って書いていたのはこの事かな?

 ワンタが食べたいって言いそうだ。どうしよう? って思っていたら、


「いただきっ!!」

 大きなスコップを持った知らない男が魔蝙蝠を持って行ってしまった。

 あの人も食べるのだろうか?


「助かりました。有難う御座います」


 襲われていた親子がお礼を言ってくれた。

 ついでに今、魔蝙蝠を持って行ってしまった男は魔蝙蝠を食べるのか、話を聞いてみる。


「蝙蝠持って行っちゃったけど、あの人蝙蝠食べちゃうの?


「いえいえ、食べませんよ。魔蝙蝠が人や家畜を襲うので、街が賞金かけているんです。役場に持っていけば魔蝙蝠一匹につき、銅貨10枚で買い取ってくれます」

 教えてくれた親子は、危ないので帰りますってダッシュで帰って行った。

 上を見ると、数匹の魔蝙蝠が飛んでいる。

 ワンタが風で近寄れなくしているらしく、私たちの近くには寄ってこない。


 下ではスコップや、金属の棒などの武器を持った男達が降りてくるのを待っているが、魔蝙蝠もバカでは無いらしく、武器を持った者には近づかない。


 ガシャーン!!

 魔蝙蝠がお店のガラスを割った!!


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