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第十一話 突風

「親は近くにいないの?」

「いない。孤児なの。おじいさんの住んでいる村に行く予定」

「孤児!? そうなんだ~!!」

 女たちがニヤリと笑った。


 ワンタに乗ったまま女性について行く。

 何も言わなくてもワンタは勝手に歩いていく。

 村の人がいる所から外れ、どんどん静かな所へ。

 ここはもう村を出てしまっているのではないだろうか?

 周りに人が見えなくなった。こんな所に靴屋があるのかな?


 ワンタから小さな声が聞こえる。

「アヤ。黙って聞くんだゾ。誰かがつけてきているゾ。それとこっちに店は無い。人の気配はあるゾ」


 風魔法で何かを察知している。

 誰かがつけていると言われても私にはどうにも出来ないし、とりあえず黙って乗っているしかない。


 もう完全に森の中だ。


「いらっしゃーい。ご苦労さん」

「お嬢ちゃんゴメンね。間違えちゃった。靴屋こっちじゃなかったみたい」


 男二人が待ち構えていた。

 男も女もニヤニヤ笑っている。


「このガキどこから大金貨なんか盗んできたんだ? ポケットの中の大金貨、全部頂くぜ!!」


 どうすればいいのかわからない。

 大金貨なんかバッグに山ほど入っている。いらないので渡してもいいんだけど。


「でもこの犬は村で目立っちまってるし、誰かに話されたら俺達に足がついちまうぞ?」

「そうだな。殺すか? もしくはこんな呪いのアザのある顔でも娼館なら買ってくれるかも知れない」

「その子、孤児らしいよ。どこかの村のおじいさんのとこに行くんだって」


「じゃあ決まりだな!! お前みたいなガキを好む変人がたまにいるんだ!! 孤児なら都合もいい。消えても誰にもわからないからな!! 売り飛ばしてやるよ!!」


 娼館って何? 売り飛ばす?

 貴族様みたいな人だろうか?

 もしくは奴隷として扱われるのだろうか?

 どうすればいいのかわからない。


「おい!! お前ら!!」


 後ろから突然怒鳴り声が響く!!

 見ればさっきの店主だ。ワンタが私たちの跡をつけている人がいると言っていたけど、この人だったのか。


「なんだ? さっきの店主か!! 何をこんなとこまでクビ突っ込んでんだ!!」

「誘拐なんかしてただで済むと思っているのか!! その子を返せ!!」


 男達と店主さんがにらみ合う。


「おっさん、いい加減にしとけよ。こんな所まで警備員は来てくれないんだ。やりたくはないが、お前もついでに殺すしか無くなったぞ?」


 二人の男がニヤニヤしながらナイフを出した。


 店主さんは私を心配して来てくれたんだ。

 どうしよう。この人まで巻き添えになってしまう。


 男がナイフを持ち、店主さんににじり寄っていく。


 その時!! 私を乗せたまま、ワンタが近くにあった木にいきなり体当たりした!!


 バキッ!!


 木は簡単にへし折れた。男も女も店主も私も突然の事に声も出ない。

「ここには警備員はこないんだゾ」

 ワンタが喋り出した。


「ま……魔物か!? 喋る魔物?」

 素早い動きで簡単に木をへし折ってしまったのを見て、誰一人動けなくなった。

「ちょっと待ってくれ!! 俺達は……」



「黙るんだゾ!!」



 ビュオオオオオ……


 風が強く吹き出した。

 そのままゆっくりと歩き出す。腰を抜かしてしゃがみこんでいる店主を咥えた。

 噛む気は無いらしい。悪者の四人を残して店主を咥えて村に向けて走り出した。



 犬が消えた後、残された四人。



「なんだったんだありゃ? 魔物に違いないが。喋る魔物なんて初めて見たぞ」

「わからん、帰って行ったけど。もう関わるのは嫌だぜ」

「私達だって嫌よ。ってなんか……風が強くなってない?」


 ワンタ達が遠く離れてお互いが見えなくなった後、いきなり突風が起こった!!


「うわああああああ!!!!!!」

「キャアアアアアア!!!!!!」


 物凄い突風に吹き飛ばされ、四人とも周りの木々に打ち付けられた。

 全身の骨がバラバラに折れて全員即死だった。



 村の近くに来て、ワンタが咥えた店主さんを離した。

「店主さん、ゴメンね。ありがとう」


 助けに来てくれた店主さんに素直に感謝する。

「俺も謝るゾ。悪かったんだゾ。俺が喋る事は内緒だゾ」


 何か良くわからないけどワンタも謝っている。

 もう喋る犬って事がバレてしまったのでいいのかな?


「いや。こちらこそ村で怖い思いをさせてすまなかった。あの男達の事はすぐに警備員に報告する。私も証人になる」

「いや。もういいゾ。俺達もすぐに村を出るし、警備員に色々聞かれても俺達も面倒なんだゾ」


 私も正直面倒くさい。喋る犬の事を説明出来ないし、何より大金貨を持っている理由の説明が出来ない。


 どう考えても私は正義じゃない。騒ぎになって貴族様とか怖い村の人が追いかけてきても困る。


「揉め事は避けたいから何も言わず、村から出してほしい」


「そうか。わかった。そうする。犬が助けてくれなければ私も殺される所だった。買い物中だったね。私の店にある物ならどれでも持って行ってくれ。店になければ近くで売っている物を購入させてもらう」


「ありがとう。出来るのなら、日持ちのするような食べられる物と靴を分けてもらえたら助かる」

「わかった」


 店主の店まで歩くと、隣の店のおばさんが座っていた。

 店のお金や物が盗まれないように見張っていてくれたらしい。


 おばさんと店主が何かを話した後、おばさんがどこかへ行ってしまった。

 店主はアヤが選んだ靴のサイズを調整してくれている。


「ぴったりだわ。ありがとう」

「どういたしまして」


 おばさんが袋に詰めた食料を持ってきてくれた。


「これでいいのかい?日持ちしそうな物を買ってきたよ」


 見れば、パンとチーズ、ジャム、お菓子と……梅干し?

 色々揃えてくれている。マジックバッグを見られたくないので、ワンタの首輪にそのままひっかけてもらう。


「お金足りるかな?」


 靴代と食料代に大金貨を一枚渡すと


「いやいや。俺も悪かった。助けてもらったようなものだし。受け取るわけにはいかないよ」

 店主さんの手が震えている。ワンタが怖いのかも知れない。

 アヤとしても、無理に押し付けるわけにも行かず、そのままポケットに戻す。

 出発しようとワンタに乗ろうとすると、何故か店主さんに近づいて行った。なんだろう?

 店主だけに聞こえるようにワンタが話す。



「もう大丈夫だけど、あそこには近寄らない方がいいんだゾ」


 店主は目を見開き、冷や汗びっしょりになっている。


「いろいろありがとう。おじいさんの所行くね」

「あ……危ない人には気を付けるんだよ」


 優しい店主さん。なんか顔が最後引きつっていたけど。

 ご飯も靴も貰ったし、おじいさんの村に向かう事にする。





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