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9 大総統との会談

 9 大総統との会談



 武村は大総統と定期的に連絡を取り合っている。武村が育てている翼の事でだ。

 翼の身を案じている大総統は武村から翼の様子などを逐一報告してもらいたいらしい。

 武村は偽の娘、翼の事を快く思っていないことを大総統も把握している。

 帝都の鷹匠邸に足を運び、屋敷の中へと足を踏み入れる。

 贅を凝らした調度品や絵画などが所狭しと並んでいる。大総統は相当な財を溜め込んでいると武村は睨んだ。

 応接間に通された武村は大総統と久方ぶりに対面した。

 見れば大総統の隣には大総統が溺愛する御息女、鷹匠麗花が控えていた。

 宝石が散りばめられた壮麗な衣装に身を包み、とても美しい娘であった。


「大総統閣下。御息女であられる麗花様まで……麗花様におかれましては翼と仲良くさせておいでのようで」


 武村はガイア帝国軍全体の第二将として恥じない礼をして、改めてご挨拶した。


「翼は元気か? 今日は私の自慢の娘である麗花も一緒だ」


「お初にお目にかかります。鷹匠麗花と言います。翼とは最早、固い友情で結ばれていますの」


 鷹匠麗花はクスッと冷たく輝く微笑を浮かべた。

 この時、武村は一瞬、鷹匠麗花に何か違和感を覚えた。

 彼女の身に纏う雰囲気が何か人間でないような感じが一瞬したのだ。

 だが、気のせいだと武村は断じた。究極生命体であろうはずがあるまいし。

 それを他所に大総統は御自慢の愛娘にデレデレである。


「はい。翼は相変わらずです。早く大総統閣下の御息女麗花様と同じ将軍に成りたいと言っています」


 武村は本当の事を包み隠さず話した。翼が、将軍の座を目指していることは本当だった。

 この時、麗花お嬢様はピリッとした空気を纏わせた。


 ――何かに焦っておいでか? それにやはり麗花様の纏い持つ雰囲気は……?


 武村は違和感を感じ取りながら、確証が無いので気に留める事は止めにした。


「武村……翼を育ててくれて本当に感謝している。

 お主の事故で無くした娘……翡翠ひすいを失った悲しみが和らぐと良いのだがな」


 大総統はここで武村の事故で亡くした本物の娘、翡翠の名を口にした。

 武村は快く思わなかった。翡翠の名を安易に口にしてほしくないのだ。

 所詮、娘を失った悲しみは大総統には分からない。大総統には目に入れても痛くない愛娘が健在だからだ。


「大総統閣下……翼は将来有望です。新島彰敏と同格に成長するかもしれません」


 それは確かな事だった。翼の成長は日々目覚ましい。

 新島彰敏の域に達する予感はしている。帝王の血があの娘にも流れているからだ。


「武村、お前なら究極生命体を滅ぼすことが出来る。私はそう信じている」


 大総統は武村にそう言い、間をおいて、コホンと咳払いし、言葉を続ける。


「そこでだ。我が自慢の娘、麗花が何と新島彰敏を見初めてしまったのだ。

 娘はまだ若いし、まだ早いとは思うが、どう思う?」


 大総統はサラっととんでもないことを口走った。あの新島彰敏を麗花様が見初めてしまった。

 武村は衝撃を受けた。麗花お嬢様は顔を赤らめている。本当の様だ。


「ですが、新島彰敏と麗花様では身分が違います。麗花様は大総統閣下御息女であられるのですぞ」


 武村は身分が違うと主張した。

 それに年齢も一回りぐらい離れている。新島は二十代に見える容姿だが、実際は三十代なのだ。


「私はあの男ならば問題ないと思っている。それに麗花にはやはり好きな者と結ばれて欲しい」


 大総統は麗花お嬢様の相手に新島彰敏で構わないと言っている。


「分かりました。お好きになさってください。新島には伝えておきます」


「武村、私は娘の為ならば何としてでもどんなことをしてでも新島を与えてやる。

 娘には欲しいものは何でも与えてきた。それは常に変わらない」


 大総統の眼は本物だった。途端に武村は新島が羨ましくなった。

 あんな美しい娘を新島は手に入れる事になるのだ。武村は溜息を付いた。

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