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8 嫉妬と焦り(鷹匠麗花)

投稿します。

 8 嫉妬と焦り(鷹匠麗花)



 鷹匠麗花は座学の講義を終え、笑顔で手を振って翼と分かれた後、訓練所の裏手で人知れず焦りと嫉妬を覚えていた。

 まさか、あのガイア帝国全体の第二将、大将軍である戦士団の武村戦士長の娘と知り合うとは思いもよらなかった。

 噂には聞いていたが、本当にあの鬼瓦訓練教官を下して、イケメンで人間最強と称される新島彰敏の副官になったとは……。


 ――あんな子が、イケメンの新島様の……。


 いつしか麗花は知り合ったばかりの翼に嫉妬を覚えていた。初めて覚える激情だった。

 皇帝の外戚であり、容姿にも恵まれ、大総統の末の愛娘として我儘放題で溺愛されてちやほやされて育った麗花。

 父の鷹匠翼徳は溺愛するあまり、麗花を将軍にする為に大金を払って将軍の座に就かせてくれた。

 地位も家柄も名誉も絶世の容姿も何もかも恵まれた選ばれし存在だと思っていた。

 しかし、決定的に足りないものがあった。それは才覚のきらめきである。

 千弓の使い手という肩書も大金を払って手に入れた物である。

 自分には才覚が無い。それ故に麗花は焦った。

 あの子が、自分の権力の座を上回り、イケメンで最強の新島を手に入れてしまうのを。


 ――どうすれば良いの? 私が将来、新島様と結ばれる最高の計画が台無しだわ。


 麗花は焦りを募らせる。自分に本物の力があれば……。

 どうすることも出来ない。いずれ、あの子も将軍の座に就くであろう。

 追いつかれるのは火を見るより明らか。その上、新島を奪われたら、絶望しか残らない。


「思いの他、焦っているようだね? 力を貸そうか?」


 ドキッとして後ろを振り返ると、フード付きのコートを着た小柄な女が立っていた。


「貴方は誰?」


 恐る恐る不気味な女に尋ねた。


「初めまして、私の名は平城御言へいじょうみこと五つの究極生命体の一人、生命道」


 可愛い見た目とは裏腹に正体はとんでもなかった。

 究極生命体がこんな所に……それに五つの究極生命体、勝てる道理はない。

 でも、この可愛い容姿の女に縋るしか道はなかった。あの子に新島を取られるぐらいならば……。


「お願い! 私を助けて! あの子に新島様を取られたくない!」


 気付けば、自分は仮にもガイア帝国の将軍なのに究極生命体に縋りついていた。

 そんな哀れな麗花をよしよしと、優しく抱えて頭を撫でてくれた。

 見ず知らずの究極生命体が神の使いに見えた。

 大総統に溺愛されて育った麗花だが、麗花の奥底に眠る嫉妬深い性格を理解して慰めてくれる存在は初めてだった。


「良いよ。助けてあげよう。私は縋りつく者の手を振り払う事は決してしないよ。でも、人間を捨てる覚悟はあるかい?」


 御言はコートのポケットから、一つのカプセルを取り出した。

 先程、守谷の講義を受けていた麗花はそれが何なのか、容易に察しがついた。


「只の究極生命体のカプセルじゃないよ。このカプセルの中身には五つの究極生命体の力が宿っている」


 御言が差し出したのは麗花が求めた力だった。

 五つの究極生命体の力を得れば、あの子に勝てる。

 だが、それは人間ではなくなると言う事。究極生命体と言う人間を食べる存在になるのだ。


「五つの究極生命体を継承したら私はどうなるの……?」


 震える声で麗花は言葉が続かなかった。どうなってしまうのだろう。

 もし、自分が究極生命体となった事を父が知れば、今までのように溺愛してくれるだろうか。


「姿は今の恵まれた容姿のままだから安心して良いよ。

 それに力と共に永遠の命と若さを保つことが出来る。

 でも、人間を定期的に食べないといけない。

 食べ方は人間の額に手を触れれば人間は消え去り、自分の栄養に還元される仕組みさ」


 御言は笑顔で人間の食べ方まで説明してくれた。


 ――姿は取りあえず人間のままだから、何とかいけるかもしれないわ。


 麗花は意外にもあっさりと五つの究極生命体となる決心を固めた。

 これも全て、あの子を超える力を手にし、新島と結ばれる為なのだ。


「分かったわ。私は五つの究極生命体を継承し、あの子を超える力を手にし、新島様と結ばれる」


「良く決心したね。良い子だ……」


 御言にそういい、渡されたカプセルを飲み込んだ。

 カプセルを飲み込んだ瞬間、身体が熱くなるのを感じた。

 そして凄まじい力を手に入れたことを実感し、麗花は人間の肉体を捨て、五つの究極生命体として生きる事となった。

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