31 決戦
31 決戦
武村は遂に神博士一派を根絶やしにする為に軍を起こした。
機は熟した。新島彰敏。鳳凰院紅葉……そして娘である鷹匠翼。
総兵力二十万。この三軍で打って出て、究極生命体を一掃し、神博士一派との戦いに終止符を打つ。
武村自身も軍を率いて、彼らの後衛で指揮を取る。
この一戦に掛けていた。ガイア帝国は王侯将軍を失い。鷹匠麗花の兄である鷹匠銀翼も再起不能。
しかし、台頭してきた新島や鳳凰院、そして鷹匠翼は傑物。傑物ぞろいの三軍で持って一気に叩き潰す。
神博士もこの間に、新島に追い詰められたことで痺れを切らしたのか、武村の宣戦布告を真正面から受けた。
古来より、戦場とされてきた血塗られたガイア平原……広大な山々を見上げることが出来るガイア帝国の外れにある。
ここを戦場にすることを武村は決めた。
大元帥の天幕で三人の大将軍を招集した。真っ先に現れたのは盟友である新島彰敏。
「新島……俺達はこの一戦で全ての戦いに終止符を打つ。俺には見える。今までの戦いで散っていった仲間たちが」
武村はこれまで多くの戦いで散っていった仲間達がハッキリと見えた。
今、本当の仲間で生き抜いているのは人間最強である新島や帝都の守護神鳳凰院紅葉ぐらいである。
弟のように面倒を見ていた後輩の鷹匠銀翼は新島部隊を全て失い再起不能。
同期で恋仲であった平城御言は五つの究極生命体、生命道を継承し、敵となった。
「武村……俺に任せろ。神博士の首は俺が持ってきてやる」
新島は怖い顔をして、武村の意を汲み取る。
「有難う。我が盟友よ」
それは本音であった。戦場で幾度も新島に助けられてきたのだ。
武村の新島への信頼は絶対であった。全ての不安が嘘のように軽くなる。
程なくして翼を始め、他の大将軍も集まって来た。武村は天幕の忠臣で皆を見渡し個々の戦力を把握する。
第一軍、大将軍新島彰敏……言わずと知れた人間最強であり、全ての難解な物事を可能にする実現力を持つ。
ガイア帝国軍の中で唯一、博士と戦い帰還した。
「鳳凰院紅葉です。只今参りました」
物静かな彼は第二軍、大将軍鳳凰院紅葉。武村や新島の同期であり、帝都の守護神として六万の兵力を持つ。
だが、本来帝都の守りの要である鳳凰院軍が帝都を離れるのは些か危険であった。
もしも、帝都に何かが起こったら取り返しがつかない。
新島も鳳凰院軍を動かすのは反対だった。帝都の要である鳳凰院軍を動かすのは愚の骨頂だと。
武村は新島の忠告に従おうとしたら、最上級大臣王土日向が、鳳凰院軍を動かすことを促していた。
これに武村は訝しんだが、少しでも兵力を稼ぎたい為に鳳凰院軍も今回の決戦に参加させた。
「父上! 第三軍、鷹匠翼です」
覇気の籠った声音をした少女。大将軍鷹匠翼。新島に憧れた彼女は遂に大将軍の位に到達した。
翼は武村の養女である。だが、疎ましくもあり、家督を実の娘である翡翠に継がせたい。
しかし、武官の極みである大将軍となり、更に皇族の血筋である為、自分の子を優先させることが出来ない。
何とももどかしかった。翼を愛しているが、何処か疎ましく感じてしまうのだ。
今はそんな事より、決戦に集中するべきだと、武村は雑念を振り払った。
「ついに我々は神博士との決戦を迎える事となった!
新島彰敏、鳳凰院紅葉、鷹匠翼。この三軍で打って出る!」
武村はその場にいる将兵全員に檄を飛ばした。その場にいた者達は奮い立ち声を上げる。
武村はそのカリスマで、周囲の者を魅了するものが生来備わっていた。
「父上! 私に先鋒をお任せください」
真っ先に先鋒に名乗りを挙げたのは娘、鷹匠翼。
武村はこの時、幼かった娘が成長した事を実感した。自信に満ち溢れた大将軍の気迫を感じる。
天下の大将軍を目指していた少女。その少女は度重なる戦功により見事大将軍の座を射止めた。
「良いだろう。お前は第三軍だったが、布陣の配置を変え、前線に躍り出て貰う」
武村は即答で許可した。今の勢いのある娘は多大な戦果を齎すだろう。
ガイア平原正面に先鋒隊鷹匠軍。右翼に新島軍。左翼に鳳凰院軍を配置した。
自らは後衛に位置し、兵站の確保と増援部隊の派遣などの采配を振るうことにした。