30 論功行賞
30 論功行賞
帝都では先の戦いの論功行賞が行われた。
武村は大元帥という位人臣を極めているために主に新島彰敏が王侯を破ったことによる恩賞だろうと思った。
王侯軍に成す術も無かった鷹匠銀翼は謹慎と言う沙汰が下った。
宮殿にて、王土日向は権勢を誇り、論功行賞も彼女の想いのままであった。
「これより、論功行賞を始める。第一功、新島彰敏将軍。
貴殿は博士のアジトを叩き、王侯将軍を討ち取った。
その功は大きい。将軍には爵位を二階級昇進。侯爵位を与える」
新島は片膝ついて礼を取り、恩賞を受け取った。
新島は王土日向から宝剣を受け取る時、一瞬彼らの目線があった。
何かあったのだと武村は思い、後で彼に聞いてみる事とした。
武村は自らが大元帥となり、新島も侯爵位を手に入れたガイアの上級貴族。
悪い気はしなかった。新島……苦楽を共にした彼には十分な恩賞をあげたい。
素直にそう思った。新島に命を救われたこともある真の盟友。
人間最強として、ガイア帝国の武威を一手に引き受ける立場にある。
王侯将軍が死に、そして鷹匠銀翼が大将軍の任を解かれた。
代わりに新島彰敏が第一の大将軍。その次に副官である我が偽の娘、鷹匠翼。
ガイア帝国軍の軍事も代替わりが起きつつある。
「第二功! 近衛兵団長鳳凰院紅葉大将軍。鳳凰院将軍は帝都の守護神の異名通り。
逆賊王侯を退けた功績により、大元帥補佐の称号を与える事とする」
歓声に包まれ、それが引くと同時に鳳凰院紅葉が前に躍り出た。
スラっとした武村や新島を超えた研ぎ澄まされた長身。
確か、武村と同期である彼は軍の身体測定の時、一緒に身長を測った。
鳳凰院紅葉は何時いかなる時でも静かなる佇まい。
静かなること林の如く
古の武将の概念の一つにある。鳳凰院紅葉、帝都の守護神。
彼がガイア帝国を守護している限り、帝都は安泰だろう。
彼に野心はなく、それ故に六万の兵を有しているのは絶大な信頼の証と言えよう。
「最後に鷹匠翼殿、前に出よ!」
論功行賞が佳境に傾いた時に、不意に翼の名前が呼ばれた。
翼は地味な功績であるが、帝都に蔓延る皇帝陛下を害そうとする不穏分子の討伐を任務としていた。
名のある工作員や手練れもすぐに翼が、サクッと始末する手際が評価されたのだろう。
「鷹匠翼殿は皇帝陛下を害そうとする手練れを始末した功績により、大将軍の地位を与える!」
これには宮殿内は騒然となった。将軍の座を飛び越えての異例の昇進。
しかし、武村は知っている。翼が元々、皇族であり、桜華様の双子の妹であることを。
それを考えると不思議ではない。玉座で欠伸をしている桜華様も気付いているのか、と武村は訝しる。
「謹んでお受けいたします。栄えあるガイア帝国の大将軍として陛下に忠誠を」
翼は気色満面の笑みで気分を高揚させながら、片膝附礼をする。
まだまだ未熟だと侮っていた娘が大将軍となってしまった事に武村は困惑する。
翼は武村の養女であるが、血は繋がってはいない。そんな娘が後々に武村家を相続するとしたら。
武村は口元を手で押さえながら激しく動揺を覚えた。